ロッテは「噛むこと」の健康機能に着目し、様々な研究に取り組んでいる。今回、ガム咀嚼と毛髪に関する研究を実施し「ガム咀嚼により前頭部、頭頂部ともに頭皮血流が増加すること」を確認したと発表した。

薄毛治療のスペシャリストであるDクリニック小山太郎院長によると、ストレスの多い現代社会において、睡眠時間、生活習慣が乱れ、抜け毛や薄毛を気にしている人が増加している。頭髪に関する悩みとして、加齢に伴う薄毛・抜け毛に加えて、若年世代の薄毛トラブルや女性の産後の抜け毛などが挙げられるという。

全国の20~50代の男女に対して実施した「頭髪に関する意識調査」では、「現在、薄毛・抜け毛が気になりますか」の設問に対して「とても気にしている」「気にしている」「すこし気にしている」と少しでも薄毛を気にしている人が多かった性年代は「20~29歳男性」で37.4%と1番多く、次いで「20~29歳女性」が33.6%、「50~59歳女性」が31.7%とわかった<図1>。

20代男女が気にしている層としては最多であり、若年世代の薄毛の悩み、将来的な心配などの可能性がある事が分かったという。

高齢者だけでなく、若者にも薄毛の悩みが広がる中、普段から薄毛や抜け毛の予防・対策を行っている人は過半数を切り、「全く行っていない」と回答した人が52.0%もいることがわかった<図2>。

予防・対策に関して、経済的・時間的にハードルが高い、薄毛治療への抵抗感がある等、薄毛や抜け毛に悩んでいても、様々な理由からなかなか一歩を踏み出せない人も多いことがうかがえる。

ロッテが以前実施した研究において、ガム咀嚼習慣が多い群について頭頂部毛髪径が優位に太いという結果が得られたが、因果関係についてはまだ証明がされていないという。

ガム咀嚼習慣と毛髪の太さに関する調査研究結果
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001576.000002360.html

そこでガム咀嚼が毛髪に与える可能性の評価の一つとして、ガム咀嚼を行うことによる、頭皮血流への影響を検証。ガム咀嚼と頭皮血流の研究では、25~53歳の健常な男女20名に対し、ガム咀嚼時と無咀嚼時の頭皮血流(前頭部、頭頂部)を測定。

結果、ガム咀嚼により前頭部、頭頂部ともに頭皮血流が増加することが確認されたとのことだ。

意外と知らない、薄毛と頭皮血流の関係性について薄毛予防・対策には、“頭皮血流”を上げることが重要

薄毛・抜け毛の種類や原因は様々ですが、予防・対策も多種多様。予防・対策をしていると回答した人のうち、年間1万円以上の費用をかける人は、51.9%を占めることが調査で判明したとのことだ<図3>。

例えば、医療治療や薄毛対策用のシャンプー・トリートメント、育毛剤・発毛剤の使用等、出費を伴う予防・対策ばかりで、負担になっている人や対策へ踏み込めない人も多いという。そこで、薄毛悩みのスペシャリストでもある、Dクリニック小山院長が、誰でもできる簡便且つ低コストの薄毛の予防・対策を紹介。

進行した薄毛には薬による治療が必要となる。そうなる前に可能な薄毛対策としては、シャンプーや育毛剤による頭皮環境のケア、頭皮マッサージなどが挙げられるという。コストが発生しない対策である頭皮マッサージには、リラックス効果に加えて、血行を良くし、頭皮血流を上げる効果があるとのことだ。

薄毛の初期段階では頭皮血流が低下している事が報告されています。頭皮血流の改善は、毛髪の健やかな成長に繋がるとともに薄毛予防の一つとなる可能性がある。しかし、薄毛と頭皮血流の関連性について知っている人が、たったの23.1%と認知は十分に広がっていないのが現状であるという<図4>。

頭皮血流の低下は、薄毛・抜け毛だけでなく、肩こりや疲れ目等の様々な悪影響をもたらす可能性も。日常の対策として頭皮マッサージ等、頭皮血流を上げる対策を継続して行うことが重要となる。

【研究結果 概要】

【掲載紙】
薬理と治療(2022年50巻9号、1605-1609)
タイトル:ガム咀嚼による頭皮血流への影響―オープンランダム化クロスオーバー比較試験―
著者:松井美咲、菅野範、大澤謙二、岡林一登、小池田崇史

【研究背景・目的】
薄毛(脱毛症)に悩む人は年々増加傾向にあるとされ、脱毛の症状が進行すると心理的苦痛や社会機能の低下を経験する可能性があるという報告もあり、薄毛の予防・改善は人々の生活の質や心の健康に大きな影響を与える可能性がある。
一方、地肌マッサージによって頭皮における血流量が上昇すること1)、頭皮マッサージを24週間行うことで毛髪径が増加すること2)が報告されている。また、ガム咀嚼により、脳血流や総頚動脈の血流が増加する3)4)ことが報告されており、私たちの過去の調査研究で、1日30分以上ガムを噛む習慣を持つ人の頭頂部の毛髪径が有意に太かったという知見5)も得ているとのことだ。
以上より、ガム咀嚼は頭皮血流に影響をあたえると仮説をたて、ガム咀嚼による頭皮血流への影響を検証。

【研究方法】
【対象】25~53歳の健常な男女20名(平均年齢35.3±9.1歳、男性10人女性10人)
【方法】対象者全員がガム咀嚼時と無咀嚼時の頭皮血流(前頭部、頭頂部)を測定し、安静時からの変化を比較

【結果・考察】
無摂取時と比較し、ガム咀嚼時の頭頂部および前頭部の頭皮血流が有意に増加する結果を示した。
顔には円筒状で横紋を持つ筋線維から構成され、随意に動かすことが出来る咀嚼筋があり咀嚼により収縮する。また外頚動脈の主要な二本の枝の一つに顎動脈があり、上顎・下顎・鼻腔・口蓋に分布しているという。咀嚼による咀嚼筋の収縮や口腔周りへの刺激により顎動脈の血流が増加した結果、頭皮血流の増加につながった可能性が考えられたとのことだ。