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インターネット経由で不特定多数から出資を募り、映画・商品開発・店舗の出店など個人でもさまざまなプロジェクトを実現可能にする「クラウドファンディング」。画期的なプラットフォームとして、国内においても認知度は飛躍的に上がりつつある。中でもモノ作りにおいて、アイデアの実現度の高さ、開発決定までのスピード感は、多くの作り手を刺激している。
巨額の開発費用を出資によって賄える可能性のあるクラウドファンディングは、いわゆるガレージカンパニーなど、小規模でアイデアを武器にするクリエイターたちの希望の光ともいえる。CCCグループが運営する「GREEN FUNDING」も、そんなクラウドファンディングサイトのひとつだ。
コミュニケーションを変える新たなデバイス
ここから生まれたウェアラブルトランシーバー「BONX」は、目標金額100万円を大きく超え、支援人数1344人、最終支援額2551万2130円を集める大成功を収めた。
「BONX」とは、どんな距離でも、どんな環境でも、自由に会話できる新型コミュニケーションデバイス。アプリとBluetoothで接続し、話しているときだけ通信する独自のグループ同時通話システムを搭載(10人同時通話可能)。不安定な電波状態でも接続を維持でき、自動で再接続したり、ボタンを押す必要がなく話すだけで通話を開始したりできる。
スノーボード、サイクリング、釣り、ドライブ、クライミング、カヌーといったアクティビティ全般で使えるだけでなく、ビジネス上でもボイスチャットなど用途は考え方次第で無限に広がる。ただのトランシーバーでも、イヤホンでもない新ジャンルのサウンドデバイスを開発したのは、株式会社BONXのCEO・宮坂貴大氏。20代の若さで起業、開発に取り組んだが、そのきっかけは「GoPro」創業者、ニック・ウッドマンに自分を重ねていたことだと言う。
自身の必要だと思うモノを作る。アイデアを形にする力
大学時代、スノーボードに没頭していた宮坂氏は、所属していたNPOでキッズクラスに指導することもあり、はぐれたりプレイをダイレクトに共感できなかったりと、常にコミュニケーションに難を感じていた。
起業意欲の強かった宮坂氏は、ウッドマンが自身の趣味であるサーフィンを基にした“自分のニーズ”からGoProを創りだしたことを考え、スノーボードをしているときに、自身の経験からもっと優れたコミュニケーションツールが必要だと決意する。
着想は2014年の3月末で、本格的な開発開始は2015年の1月。そして2015年10月20日、クラウドファンディング開始から48時間で600万円を調達し、日本国内のIoTハードウェア分野におけるクラウドファンディングにおいては最速のペースを記録した。
自身を文系だと語る宮坂氏だが、開発にはプロダクトデザインだけでなく、スマホアプリのプログラミングも必要。さまざまな人に協力してもらいながら、アイデアを形にしていく。
日本のモノ作りが世界のアクティビティを変える
結果的に、出来上がった製品は好評を博し、2016年にはグッドデザイン賞を受賞。グッドデザイン・ベスト100、特別賞「ものづくり」にも選出された。現在は新たに出資を募り、グローバル展開を計画。2017年7月には北米での一般販売をスタートさせた。
日本のモノ作りが世界に広がっていくさまは、まさにメイド・イン・ジャパンの強みを再確認させられるが、あらゆるビジネスにおいてチャンスをつかめるクラウドファンディング利用による可能性を感じられるケースだ。
宮坂氏は今後も「BONX」の開発にさらなる力を入れていく。
「理想とする体験の追求に終わりはないが、ようやく皆さんに使ってもらえるところにまで来た。プロダクトも、ブランドも、ディストリビューションも、近道はないことがよくわかった。今後も一つ一つ着実に進めて、世界で愛されるプロダクトに育てていきたい」
“The World Is Our Playground!” (世界は僕らの遊び場)。彼らの掲げるスローガンが世界のアクティビティを変える日は近い。