数カ月前まで非常に大きな盛り上がりを見せていたNFTだが、暗号通貨市場の低迷とともに、現在下火となっている。

この状況に拍車をかけるように7月20日には、人気ゲーム「マインクラフト」の開発企業Mojangが同ゲームでNFT利用を許可しない/サポートしないことを発表した。

同社は、マインクラフトではすべての人が平等にプレイすることを基本ルールとしており、NFTのような「希少性」をベースとする経済モデルとは相容れないと指摘。またゲームが排他的になってしまうリスクがあるとも述べている。

NFTなどブロックチェーンを活用したクリプトゲームプロジェクトを縮小するゲーム会社が増えているとの報道もある。

NFTを取り巻く環境は、この数カ月でどのように変化しているのか、その現状を探ってみたい。

マインクラフト、NFT許可しない方針

ブロックチェーン技術を活用し、デジタルアセットを唯一無二にするNFTは、メタバースにおける価値交換手段などとして注目を集めている。

数カ月前まで、NFTマーケットプレイスでは、JPEGデジタルアートが数百万〜数億円で取り引きされるなど、資金流入もあり非常に盛り上がっていたところだ。

こうした中で、ゲームにNFTの仕組みを取り入れようとする試みも多数登場し、どのような展開となるかに関心が注がれていた。

特に、月間アクティブユーザー数が1億3000万とも1億4000万ともいわれる世界的な人気ゲーム「マインクラフト」で、NFTがどのような扱いとなるかに、NFT界隈から非常に強い関心が向けられていた。

マインクラフトの開発企業Mojangは2022年7月20日、コミュニティからNFTに関する多くのフィードバックがあったとし、その回答としてNFTに対する公式見解を発表した。

その発表の強調部分を抜粋すると、このように記載されている。

「integrations of NFTs with Minecraft are generally not something we will support or allow」。

マインクラフトにおけるNFT統合をサポート、または許可しないという姿勢を明確に打ち出しているのだ。

マインクラフト、NFTを許可しない理由

その主な理由は、NFTをゲームに統合してしまうと、マインクラフトが標榜する安全でインクルーシブな体験の提供ができなくなってしまうというものだ。

マインクラフトゲーム内では、サードパーティ企業によるNFT関連の取り組みが一部で実施されてきた。1つは、マインクラフトのワールドファイルやスキンパックNFTのローンチだ。また、マインクラフトゲーム内外でのアクティビティを通じて、マインクラフトNFTを獲得できる仕組みも試験されていたという。

同社は、NFTのデジタルオーナーシップが希少性と排他性を基にしたものであり、この状況が続くとゲーム内で「持つ者と持たない者(the havs and the have-nots)」を生み出してしまい、インクルーシブかつ誰でもプレイできるというマインクラフトの理念に反すると指摘。また、NFTの投機的なプライシングや投資メンタリティによって利益追求行動が推進されてしまうリスクもあると指摘している。

さらに、サードパーティNFTは100%信頼できるものではなく、NFTを購入したユーザーに被害が出てしまうことも懸念材料であると述べられている。一部のサードパーティNFTは、ブロックチェーン技術に完全依拠しておりアセットマネージャーを要するもので、そのアセットマネージャーが突如として姿をくらますこともあるという。

マインクラフトのNFT禁止発表による影響

マインクラフトがNFTをサポート/許可しないと発表したことで、いくつかのNFT関連企業に影響が出たようだ。

その中でも、NFT Worldsへの影響は非常に大きかったといわれている。

NFT Worldsは、マインクラフトのカスタムサーバー上で利用できる仮想の土地NFTを販売していたほか、独自の暗号通貨WRLDを30分ごとに獲得できるクリプトゲームを展開していた。

TechCrunchによると、マインクラフトのNFT禁止発表をうけて、NFT WorldsのNFT最低価格(price floor)は66%下落した。

nftpricefloor.comのデータでは、NFT WorldsのNFT最低価格は、マインクラフトの発表まで3.5イーサリアムほどで推移していたが、マインクラフトによる発表後には、1イーサリアムまで下落したことが示されている。

NFT Worldsは、マインクラフトのNFT禁止発表を受け、Discordとツイッターで、NFT禁止の動きはイノベーションの後退であるとの批判を展開。マインクラフトに対して再度説明を求め、もし決定が覆らない場合は、別の手段でNFTプロジェクトを継続する旨を明らかにした。1つは、マインクラフトのようなゲームエンジン上でNFTプロジェクトを継続させるというもの。もう1つは「platfrom as a service」モデルに転換し、他のデベロッパーもプラットフォームを利用できるようにするというものだ。

NFT市場の現状、販売額は10分の1以下に

NFT市場は、2021年夏ごろから急速に盛り上がり、その勢いは2022年4月頃まで継続した。

しかし、世界的なインフレ/利上げ、それに伴うリセッションに対する懸念から、リスク資産からの資金流出が発生。株式だけでなく、暗号通貨からも資金が大量に流出、NFT市場にもその影響が波及している。

英ガーディアンが7月2日に伝えたChainanalysisのデータによると、1カ月あたりのNFT販売額は、2021年7月に20億ドルほどだったが、翌8月には100億ドル近くまで跳ね上がった。その後70億ドル前後で推移し、2022年1月に126億ドルに達した。しかしこれがピークとなり、下落を続け、2022年6月には、ピーク時の10分の1以下となる10億ドルまで下がった。

ピーク時には、ツイッター共同創業者のジャック・ドーシー氏の初ツイートNFTが290万ドルで落札されたが、2022年4月の報道では、このNFTの所有者が販売に出したところ、最高額が1万4000ドルしかつかず、販売は中止された。

一方、「ブルーチップ」と呼ばれるNFTコレクションの価格は安定している。

DappRaderのデータによると、the Bored Ape Yatch ClubのNFT価格は、他のNFT価格が大幅に下落している中でも、下落率が1%にとどまり、最低価格は9万ドルを維持しているという。

ゲームとNFTの関連では、2021年10月にPCゲーム販売プラットフォーム大手のSteamでNFT/暗号通貨などの利用が禁止となった一方で、ゲーム開発大手UbisoftEpic Gamesは肯定的な姿勢を示しており、ゲーム業界全体がNFT禁止に動いている訳ではない。NFTに対して、ゲーム業界ではどのようなコンセンサスが生まれるのか、今後の動きからも目が離せない。

文:細谷元(Livit