国立大学法人香川大学と富士通は2018年11月19日、香川県教育委員会・小豆島町教育委員会・土庄町教育委員会の協力のもと、障がいの有無にかかわらず、誰もがともに学べるインクルーシブ教育の実現に向けて、障がい理解の促進や特別支援教育の専門性向上に向け、VRや(※)テレプレゼンスなどを活用する実証研究を開始すると発表した。
(※)テレプレゼンス
遠隔でもユーザーが対面しているかのような臨場感を実現する技術。
この実験では、通級指導を行う教員が障がいへの理解を深め、専門性を高めるために、VRで障がいがある子どもたちの困難を疑似体験し学ぶ「障がいVR体験」や、360度撮影可能な全天球カメラによる「遠隔授業指導」、離島の教員と指導者をテレビ会議で結ぶ「遠隔教育相談」の3つの実証を行う。
また、その効果を検証するとともに、インクルーシブ教育の実現に有効なICT利活用モデルを検討していく。
2018年11月20日から2019年3月31日まで行われ、対象となる教員、支援員は小豆島地域などの小・中学校ならびに高校の以下5校と香川県教育センターを加えた約50人となる。
- 香川県教育センター
- 香川県立小豆島中央高校
- 小豆島町立苗羽小学校
- 小豆島町立小豆島中学校
- 土庄町立土庄中学校
- 香川大学教育学部附属坂出小学校
VRで疑似体験し障がいを学ぶVR環境の構築を目指す
実証研究内容は3つある。
- VRで障がいがある子どもたちの困難を疑似体験し障がいへの理解を深め学ぶ「障がいVR体験」
香川大学教育学部 坂井研究室・宮崎研究室と富士通は共同で、障がいがある子どもたちの困難をVRで疑似体験し障がいを学ぶVR環境を構築し、教員と支援員が自閉症者の感覚過敏を体験できるイギリス国立自閉症協会制作の全天球映像を、VRヘッドマウントディスプレイをとおして疑似体験しその有効性を検証する。 - 360度撮影可能な全天球カメラによる「遠隔授業指導」
教室に設置した全天球カメラで、特別な支援を必要とする子どもたちの授業の様子を撮影し、専門家はヘッドマウントディスプレイなどを装着し臨場感ある状態でビデオを確認。教員や支援員に教え方や子どもたちへの接し方などについて的確なアドバイスを行う。 - 離島の教員と指導者をテレビ会議で結ぶ「遠隔教育相談」
香川大学教育学部 坂井研究室・宮崎研究室と富士通は共同で、富士通がシスコのビデオ会議システム「Cisco TelePresence Video」とWeb会議サービス「Cisco Webex Meetings」をネットワークサービス「FUJITSU Managed Infrastructure Service FENICSⅡ ユニバーサルコネクト」でつなぎ、離島・僻地にある学校の教員・支援員が適切なアドバイスを受けられる遠隔支援システムを構築する。このシステムにより画面越しの対面での遠隔教育相談の有効性を確認することができる。
今後、香川大学と富士通は、全国の教育機関などに対して、今回の遠隔教育相談・遠隔指導の実証研究の成果を広く公開する予定だという。
また、富士通はその成果を反映したICTサービスを開発し、あらゆる人々の活躍の推進などを目標として掲げるSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)の「目標4.すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する」ことの達成を目指す方針だ。
img:Fujitsu Japan