世界で毎年9,200万トンの廃棄が発生しているファッション業界(※1)。私たちは、多くの服を売ったり買ったりする習慣を見直さないといけないのではないだろうか。

「ファッションブランドは、多くの服を売るために、ストリートウェアやフォーマルウェアといった区分を設けるのをやめるべき」と考えたのが、かつてアウトドア用品大手のパタゴニアでマーケティングを担当したジョイ・ハワード氏だ。

同氏は2022年4月、”脱成長“の原則を掲げるファッションブランドこと「Early Majority」を立ち上げた。

Early Majorityによると、多くの企業は、私たちに最初の商品を売るときには損を出している。そして、私たちがまた買うことを期待して、過剰生産をすることで利益を生んでいるという。その真のコストを支払っているのは地球だ。

そこで、Early Majorityは、用途の広い外出着を必要な数だけ作ることをモットーに掲げる。同ブランドが4月に発表した服はわずか7種類で、秋に新しく2種類を発表する。

服はすべて、自転車に乗るときにも会議をするときにも、あるいはバーでも農村でも着られる、機能性とデザイン性を兼ね備えているという。服の系統を細分化することで引き起こされる、大量生産・大量消費を防ぐアイデアだ。

Early Majorityは、生産するべき服の数をどのように判断するのだろうか。同ブランドは会員制を基本としており、何がどれだけ必要かは会員の需要に応じて決まる。最初のうちは非会員にも服を販売するが、会員に対するよりも高い価格で販売し、ゆくゆくは非会員向けの販売をやめることを目指している。

同ブランドは「私たちは、会員が望む以上のものを作らない」と明言し、会員が所属するコミュニティが成長すれば、事業も成長するとしている。2022年5月時点では終身会費が358ドル(約4万6千円)で、ハワード氏は2022年末までに会員数を800人にすることを目指している。

Early Majorityが挑戦する課題は、脱成長の原則のもとで利益を生むことだ。ハワード氏はヴォーグのインタビューに対して、「事業に携わる人のことを考えれば、成長しない事業を手掛けることはできない。私たちが考えるべきことは、どのように成長し、成長を非物質化し、自然資本の枯渇を防ぐかだ」と語っている。

この難問への答えとしてEarly Majorityが提案しているのが、会員制だと言えるだろう。同ブランドは、脱成長というミッションを達成できるのは、会費から得られる利益が商品の販売から得られる利益を上回ったときだと考えている。

ハワード氏は2021年の初め頃からニュースレターの購読者を集めており、この取り組みが会員を集めるのに役立っているという。

会員制コミュニティの成長に合わせて事業を成長させるEarly Majorityの方針は、ファッションビジネスのあり方を大きく変える考え方のように感じる。会費を一度支払うことで、残りの人生で不要な服を買わずに済むのであれば、案外お得な選択だと言えるのかもしれない。

※1 Why fast fashion needs to slow down
【参照サイト】Early Majority
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(元記事はこちら)IDEAS FOR GOOD:商品は7つだけ。「脱成長」を原則とするファッションブランド