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温暖化対策が待ったなしの今、EV(電気自動車)生産も加速している。アメリカ政府は「2030年までに全車両販売の半数をゼロ・エミッション※にする」ことを公約に掲げ、EVシフトに力を入れている。それに呼応するようにEV市場も急成長。市場規模は年々拡大しており、2020年から2028年の年平均成長率は37.2%が予測されている。
2021年のEV市場はテスラが制覇
モデル別の売り上げ(2021年)では、1位2位をテスラが独占。トップの「モデルY」は販売台数17万2,700台、2位の「モデル3」は12万8,600台であった。以下、3位はフォードの「Mustang Mach-E」、4位はGMの「Chevrolet Bolt EV and EUV」、5位はフォルクスワーゲンの「ID.4」と続く。
2020年のランキングではトップ5中4件がテスラ車であったことを考えると、少しずつではあるがテスラの独占率は下がってきている。メーカー各社は来たるEV時代に向けて、ここ1〜2年でEV生産を本格化させている。今後は各社がしのぎを削る「EV戦国時代」が到来するだろう。
アップルカーは2025年、レクサスEVは年内発売予定
気になる存在のひとつが、アップルカーである。アップルは公言こそしていないが、同社が目論む自動走行EVの製造は「公然の秘密」としてまかり通っている。
アップルがEVプロジェクト「タイタン」に乗り出したのは12年前。自動車メーカー各社から技術者を集め、秘密裏に進められてきた。途中、責任者の交代など紆余曲折もありながら、着々と進められているようだ。
アップルカーが目指すのは電動の完全自動走行車であり、ブルームバーグによると2025年に発売を予定しているようだ。運転席のペダルやハンドルがなく、座席は前と後ろが向かい合い、テーブルを囲むように座れるという。これが実現化されれば自動車の常識が大きく変わり、自動車業界に旋風を巻き起こす可能性もある。
日系では、先のランキングで日産「Leaf」が6位と健闘。トヨタはランク外であったが、2022年中にレクサスの新型EV「RZ」の販売予定をしており、巻き返しを図っている。人気の高いレクサスのEVということで、どこまでシェアが伸びるかが期待される。
高級EV「リンカーンスター」で攻勢をかけるフォード
国内自動車メーカーの活躍が目立つアメリカだが、フォードは高級車リンカーンのEVを発表。リンカーンのブランド力を生かしつつ、近未来的で斬新なラグジュアリーEVが誕生した。
フォードは2026年までに4種の新型EVをリリースすると宣言している。
中でもコンセプトEV「リンカーンスター」は、高級感とステータスを兼ね備えた贅沢なモデルだ。キャリッジドア、引き出し式のトランク、180度回転できる運転席。そして、デジタルグラフィック、照明、多彩なフレグランスを組み合わせることで気分に合わせたムード設定ができるなど、居心地の良さを最大限に追求。車の枠を超えた装備や機能は「まるで車輪のついたラウンジ」との声もあり、至極の乗車体験を約束している。
アマゾンも注目するEVスタートアップ、リヴィアン
EV戦線で気を吐いているのは大手ばかりではない。2009年に創業し、39歳の若き創業者ロバート・J・スカリンジが率いるリヴィアン(RIvian)は、昨年(2021年)上場を果たした新進気鋭のEVスタートアップだ。
イリノイ州ノーマルにある製造工場では、R1Tピックアップトラック、R1S SUV、アマゾン専用デリバリーバンの生産をしている。完全電動ピックアップトラックの量産は世界初であり、R1Tの発売後にGMやテスラなどが続いた形だ。価格は70万ドル前後と高めに設定。それでも予約は堅調で、2022年3月時点の新車予約台数は83,000台にのぼるという。
2024年には低価格モデルのEV発売を計画しており、これから生産を始めるという。また、イーロン・マスクが「ロボタクシーをつくる」と言って話題になったが、スカリンジCEOも「将来的には“異なるもの”を製造し、提供していく」と、幅広い分野のモノづくりに意欲を示している。
アメリカの注目EVスタートアップ3社
リヴィアン以外でも、数々のEVスタートアップが躍進している。資金面、技術面での困難を抱えながらも、個性的なEVが続々と開発されている。ここからは、アメリカの注目EVスタートアップを3社紹介する。
アプテラ(Aptera):充電不要、世界初のソーラー三輪EV
サンディエゴに拠点を置くアプテラは、ソーラーパワー走行の三輪EVを製造している。見た目はまるでアニメに登場する「未来の乗り物」のようであり、ユニークさは抜きん出ている。同社は2011年に資金繰りの悪化から一旦事業を停止したが、2019年に再開した。
アプテラEVは1日最大40マイル(約64km)走行できる180枚のソーラーパネルを搭載し、フル充電時の航続距離は最長1,000マイル(約1,600km)。この数字は現段階で最長を誇るテスラ「モデルS」の2倍以上でありながら、「充電は不要」という。
2020年12月に行われた特別仕様車の先行予約では、330台がわずか24時間で売り切れた。価格は25,900ドル〜となっており、リーズナブルさも魅力。3Dプリンタで製造しているため、スピーディーな生産が可能だという。
カヌー(Canoo):スタイリッシュなデザインと斬新な機能を搭載
前衛的なデザインのEVを発表しているカヌー。家庭向けバン(Lifestyle Vehicle)や配達用バン(MPDV)といったラインナップに、ピックアップトラックが加わるという。
2023年に生産開始を予定しているピックアップトラックには、フロントの折りたたみ式ワークテーブルや内蔵式の荷台拡張装置などが搭載。キャンピングカーになるシェルなど、魅力的なオプションも用意されている。
フィスカー(Fisker):サステナブルなEV「オーシャン」を発表
自動車デザイナーのヘンリック・フィスカーが立ち上げたEVスタートアップ。2022年後半に生産開始予定のEV「オーシャン(Ocean)」は、ソーラーパネルの搭載やリサイクル素材を使ったインテリアを採用するなどサステナブルな仕様。現代のニーズに合ったエコカーとして注目を浴びている。
また、ソーラーパネルで生産された電力は、家庭や送電網に供給できる「インタラクティブ充電」が可能。価格は38,000ドル〜を予定している。
文:矢羽野晶子
編集:岡徳之(Livit)
- ゼロ・エミッション
- エミッション(放出・排出)をゼロにする考え方のことで、1994年に国連大学により提唱された。生産活動により排出された廃棄物をリサイクルすることで、自然界への廃棄物の排出ゼロを目指す資源循環型の社会システムをいう。