大和ハウス工業は、2022年4月1日、60歳で一律に設定されている役職定年を廃止し、給与などの処遇を改善することで、シニア社員のさらなる活躍を推進するという。
あわせて、従業員の自律的なキャリア形成や成長、自己実現をサポートするため、副業を中心とした「越境キャリア支援制度」を導入するとのことだ。
1.60歳一律役職定年の廃止および処遇改善
同社では、経験豊富な人財を確保するため、2013年4月に65歳定年制を導入。さらに、2015年4月には、65歳以降も現役として働き続けることができる「アクティブ・エイジング制度」を導入し、労働意欲があり、一定の業績が認められるシニア社員は、定年を超えて勤務を継続し、活躍することが可能としたという。
報酬水準の比較イメージ
しかし、現行の制度では、60歳での役職定年を適用するとともに、以降の給与・賞与は一定水準まで下がるなど、処遇が低下する設定になっており、シニア社員のモチベーションダウンや、高度な専門性を持つ社員の流出が生じていたとのことだ。
そこで、2022年4月1日より、年齢だけを理由とした60歳一律での役職定年や年収水準の下がる処遇体系を廃止し、60歳以降も役職任用や昇格の機会がある制度へと改定することでシニア社員の処遇改善を行うという。
これにより、豊富な経験・知識、高度な専門資格を持ったシニア社員の流出を抑止し、労働意欲の向上を図るとともに、転職市場でのキャリア採用における競争力も強化。
●主な変更点
2.越境キャリア支援制度
近年では、雇用制度の変化やキャリア観の多様化に伴い、柔軟な働き方が普及するとともに、より自律的なキャリア形成が労働者に求められている。
一方、企業の経営戦略においては人的資本投資への注目が高まっており、労働者の企業選択だけではなく、投資家からも人的資本の開示が求められるなど、「選ばれる企業」にとって人的資本投資は企業価値向上の重要な要素となっているとのことだ。
そこで同社は、従業員の自律的な成長やキャリア形成を目的とした、副業を中心とする「越境キャリア支援制度」を導入。
同制度は、社内の経営資源に限定したキャリア制度だけではなく、社外のリソースも活用し、本業を継続しながら新たなチャレンジができる機会を提供することで、これまでは難しかった人脈の形成や自律的なキャリア形成、スキル・経験の獲得を支援するもの。
今年度は、会社が副業先を斡旋する「副業(公募型)」、従業員自らが副業先を見つけ、会社が許可をする「副業(申請型)」、現在の所属のまま他部門の業務やプロジェクトに携わる「社内副業」、大和ハウスグループ以外の他企業で自社以外の業務に携わる「出向」の4つの実務メニューを用意。
●副業で想定されるケース
また、研修型メニューとして「共育&共創活動」への参画も設けるという。
これは、2021年10月に開所した「大和ハウスグループ みらい価値共創センター」で行われている活動で、子ども・学生の学び支援や異業種の企業・団体との協働プロジェクトによって新たな知見の獲得、新規ビジネスの創出を目指すもの。
今年度以降は、スタートアップ企業への派遣や社内起業家育成といった実務プログラム、キャリア自律教育、サバティカル休暇などの導入も検討し、社内キャリアだけでは難しい「越境体験」「他流試合」の機会創出を支援。
今後も同社は、持続可能な企業経営の強化のため、多様な人財が継続的にキャリアを形成できる企業風土の醸成に努めるとのことだ。