2022年2月にオンラインで開催された、MaaSの課題を共有するイベント『モビリティピッチ第8回「タクシーの高度化」』にて、DiDiモビリティジャパン営業本部長の宮脇竜一郎氏が登壇し、イベントでの発表内容のレポートを公表した。

日本のアプリ浸透率は8%まで成長。ただし、諸外国と比較するとまだ成長余地が大きい

DiDiが日本でタクシー配車アプリのサービス提供を開始した2018年、Uberやタクベルも相次いでローンチし、Japan Taxi以降の「第2世代」が登場。配車アプリ業界はJapan Taxiの独壇場から激しい競争フェーズに入り、配車アプリの普及が加速したという。

しかし2020年にコロナ禍に突入し、一時は大きくダウンロード数が減ったものの、人の移動が増えるとともに再び成長フェーズに入り、全アプリの累計ダウンロード数は約1,200万(Japan Taxiを除く)まで増加。

2021年12月時点での全国のタクシー乗車数に占める配車アプリの割合(以下、アプリ浸透率)は約8%まで伸びたとのことだ。

一方、配車アプリをアクティブに使っているユーザー割合(人口比)を海外と比較するとその差は大きいのが現状だという。

宮脇氏は、「日本で配車アプリをアクティブに使っているユーザーは人口の2%。他国と比較すると高める余地は十分にある。しかしこのような話をすると、”配車アプリの浸透はタクシー業界にとって必要なのか?乗り方を変えているだけではないか?”と聞かれる。

我々としては”アプリの浸透がタクシー市場全体を盛り上げる、底上げする重要な取り組み”と考えている」と述べ、アプリ浸透の必要性を強調した。

アプリ浸透の必要性

アプリ浸透によって「タクシー利用回数増加」、付加価値サービス発展の可能性が拡がる

アプリの浸透によって、主に2つの点から業界の発展を望むことができるという。1つ目が「タクシーの利用回数増加」、2つ目が「ダイナミックプライシング等の付加価値サービスの提供」とのことだ。

2022年1月にDiDiのユーザーに行ったアンケート調査で、「DiDiを利用するようになってタクシーの利用頻度は増えたか?」という質問に約70%が「増えた」と回答。

月のタクシー平均利用回数については、DiDiの利用前後では平均3.9回/月から6.8回/月と、利用回数が増えたことがわかるとし、利用回数増加に繋がったと考えられるのは、配車アプリの利便性だとしている。

また、同調査でタクシーについて不満に思うことを尋ねたところ、最も多かった回答が「タクシーがつかまらない」(34%)となった一方、DiDiを利用する理由で最も多かったのが「タクシーがつかまるから」(20%)と、配車アプリがタクシー利用に関する不満解消に繋がっていることがわかるとした。

アプリ浸透による「タクシー利用回数増加」の割合

さらに、アプリが浸透することで付加価値サービスの発展も望めるという。今後プラットフォームとアルゴリズムを駆使して発展したタクシー業界の未来では、付加価値として提供できるサービスが増え、配車アプリの利便性はさらに高まると考えられるとのことだ。

現在のタクシー業界を含むサービス発展のためには、需要も供給も高い密度が必要だとし、宮脇氏は、以下のように説明した。

「ダイナミックプライシングのような取り組みやその先にある高度なサービスを実現させるには、需要と供給の両方の密度を上げる必要がある。DiDiとしては、まず供給を増やしていくことでタクシーに乗りやすくなり、結果としてユーザー数が増加し、需要も追いついてくると考えている。そうなればアプリがタクシー業界へ今以上に貢献することが可能になる」

需要と供給の密度

宮脇氏は最後に、「単にDiDiを使って欲しいということではなく、一緒にタクシーのデジタルトランスフォーメーションを推進していきましょうと強く言いたい。

『革新的なサービスの創造で、あらゆる人々の移動をもっと自由に』という我々の企業ミッションのもと、官民連携してタクシー業界を盛り上げていきたいと思う」と述べ、業界発展への意気込みを語ったとのことだ。