ソフトバンクは、成層圏から広域エリアに安定した通信ネットワークを提供する成層圏通信プラットフォーム(High Altitude Platform Station、以下、HAPS)事業に資金使途を限定したサステナビリティボンド(無担保普通社債、以下、HAPSボンド)を、2021年度中に発行すると発表した。

調達した資金は、HAPSに関わる設備投資や研究開発、事業運営などに充当する予定だという。なお、ソフトバンクがサステナビリティボンドを発行するのは、今回が初めてとのことだ。

HAPSモバイルが開発した無人航空機「Sunglider(サングライダー)」

ソフトバンクは、持続可能な社会づくりに貢献するためのコンセプト「すべてのモノ、情報、心がつながる世の中を」の下、5G(第5世代移動通信システム)やIoT、AI(人工知能)などのテクノロジーと強固な事業基盤を活用して、社会・環境問題の解決に貢献するとともに企業価値を向上させることを目指しているという。

そのためにソフトバンクおよび子会社が注力すべき六つの重要課題(マテリアリティ)を特定し、SDGsの達成に向けた取り組みに力を入れているとのことだ。

ソフトバンクは、六つのマテリアリティのうち「質の高い社会ネットワークの構築」と「人・情報をつなぎ新しい感動を創出」への対応として、安定した通信ネットワークの整備を通じて、全ての人が平等に必要なサービスを利用し情報を得られる環境の構築を目標としている。

同取り組みは、SDGsの目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」と目標10「人や国の不平等をなくそう」を推進するもので、その推進に重要な役割を担うのがHAPS事業とのことだ。

HAPSは、成層圏に飛行させた航空機などの無人機体を通信基地局のように運用することで、山岳部や離島、発展途上国など、通信ネットワークが整っていない場所や地域に、安定したインターネット接続環境を構築することができるという。

専用のアンテナなどは不要で、既存のスマートフォンなどの端末でLTEや5Gを利用することが可能になるとしている。

地上から提供する通信ネットワークとHAPSを効率的に相互連携させることで、より広域なネットワークカバレッジを実現でき、産業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支えるインフラとしても期待されているとのことだ。

また、HAPSは成層圏から安定した通信ネットワークを提供でき、大規模な自然災害発生時の人命救助や復旧活動への活用も期待できるとしている。

さらに、ソフトバンクの子会社でHAPS事業を推進するHAPSモバイルが開発した無人航空機「Sunglider(サングライダー)」は、太陽光で稼働するため、SDGsの目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」の達成にも貢献しているという。

ソフトバンクのHAPSは現在、研究開発段階で、ソフトバンクは2027年に本格的に商用化することを目指しているとしている。

2017年にHAPSモバイルを設立して以来、HAPS事業の推進に向けた研究開発や国際標準化活動、コアネットワークの構築、ビジネスの企画、周波数利用を見据えた活動などを行い、2020年9月には、無人機体の成層圏飛行および成層圏からのLTE通信に成功しているという。

今回の「HAPSボンド」の発行に伴う資金調達により、HAPS事業をさらに加速させていくとのことだ。

ソフトバンクは、「HAPSボンド」の発行に当たり、国際資本市場協会(ICMA)が定めるガイドラインに基づき、調達資金の使途、プロジェクトの評価と選定プロセス、調達資金の管理およびレポーティングに関する方針を定めたグリーン・ソーシャル・サステナビリティボンド・フレームワークを策定。

同フレームワークは、「グリーンボンド原則2021」、「グリーンボンドガイドライン2020年版」、「ソーシャルボンド原則2021」、「ソーシャルボンドガイドライン」および「サステナビリティボンドガイドライン2021」との適合性に関するセカンド・パーティ・オピニオンを、独立した外部機関である日本格付研究所から取得しているという。

ソフトバンクは、今後も事業活動を通して社会・環境問題への解決や持続可能な社会の実現に貢献することを目指していくとのことだ。