日本電信電話(以下、NTT)とNTTドコモ(以下、ドコモ)は、「電波反射方向を制御するメタサーフェス反射板(以下、RIS反射板)」と28GHz帯5G基地局(以下、基地局)を用いて、ユーザーの動きに合わせて基地局からの電波の反射方向を動的に変更させる実験に世界で初めて成功したと発表した。

これにより、遮蔽(しゃへい)物により基地局のアンテナが見通せない場所でも、移動するユーザーに電波を届けることが可能となり、工場やオフィスなどの遮蔽物が多い場所での高周波数帯の電波の利用シーンが拡大するという。

今後は、6G時代を見据え、より高い周波数帯でも超高速無線通信を安定して提供するためのエリア化ツールとして実用化をめざし、検証を進めていくとしている。

1.背景

5Gサービスで利用している28GHz帯(ミリ波帯)や、6Gに向けて開拓を進めているさらに高い周波数帯の電波は直進性が強いため、遮蔽物により基地局のアンテナが見通せない場所での通信エリア化が課題となっており、その解決に電波の反射の活用が期待されているという。

RIS反射板は適切な方向に基地局からの電波を反射させる技術であるが、特定の方向のみに反射するため、エリア改善も特定の方向に限られたものであったとのことだ。

2.技術概要

今回、NTTが研究開発を行ってきた「ユーザーの移動に合わせて動的に反射方向を制御する反射制御技術」をAGCの開発品であるミリ波帯のRIS反射板に適用することで、5G以降の世代で利用される高周波数帯で、ユーザーの移動に合わせた効率的なエリア構築が可能に。

3.実験について

実証実験では、窓を介して室内に浸透してきた基地局からの電波を、RIS反射板が適切に電波の反射方向を制御することで、移動する受信機での受信電力を広範囲に改善できることを確認。

NTTにて研究開発した反射制御技術を適用したRIS反射板を用い、ドコモが屋内エリア設計と基地局運用を行い、RIS反射板の屋内での有用性を確認したという。

なお、同実験において用いたRIS反射板は、開発元であるAGCの実験協力のもと運用。

4.今後の取り組み

同取り組みは、5Gおよび5G evolution & 6Gに向けた高周波数帯エリア構築技術の有力な1候補として検討を進めているという。

引き続きNTTとドコモは、高周波数帯における効率的かつ柔軟なエリア構築手法の確立をめざして研究開発に取り組んでいくとのことだ。

同実験で用いたRIS反射板は2021年11月16日~19日に開催予定の「NTT R&Dフォーラム ― Road to IOWN 2021」にて展示予定であるとのことだ。