ビル・ゲイツの目算、GAFAM・テスラ級の企業が10社

このほどテスラの時価総額が1兆ドル(約114兆円)に到達した。

これにより2021年11月1日時点の世界時価総額ランキングでは、テスラは時価総額9000億ドルのメタ(旧フェイスブック)を抜き、6位に躍進した。

現在、時価総額1兆ドル以上の上場企業は、世界に6社存在している。トップは2兆489兆ドル(283兆円)のマイクロソフト。これに2位アップル(2兆4760億ドル)、3位サウジアラムコ(2兆ドル)、4位アルファベット(1兆9660億ドル)、5位アマゾン(1兆7090億ドル)、6位テスラと続く。

日本のメディアではよく、影響力の大きなアップルやアルファベット(グーグル)を「GAFAM」という通称で呼ぶことが多いが、影響力を鑑みると今後はテスラのTを加える必要があるかもしれない。フェイスブックの企業名もメタに変更されたばかり、GAFAM名称の変更にちょうどよいタイミングだ。

今後しばらくは、GAFAMやテスラを超える企業は現れないと思われるが、長期的にはこれらのテック企業を凌ぐ新興企業が出現する可能性はゼロではない。特に、メディアや投資家らの関心が注がれる「環境テック」分野からは目が離せない。

2021年10月20〜21日に開催された「SOSV Climate Tech Summit」では、ビル・ゲイツ氏が将来的にはテスラ級の環境テック企業が8〜10社出現するだろうと発言したことで、同分野への関心はさらに高まっている様相だ。

ゲイツ氏は、環境テックを取り巻く状況はインターネット・バブルが始まる前の状況に似ていると指摘。現在、多くの環境テクノロジーは研究開発段階のもので投資資金の多くが失われるリスクがあるものの、この分野からテスラ、マイクロソフト、グーグル、アマゾンのような「大化け(substantial success)する」企業が出現するだろうと発言している

植物ベースの牛乳スタートアップ「NotCO」

ゲイツ氏のこの発言が注目された「SOSV Climate Tech Summit」を開催したSOSVとは、アーリーステージの環境テック企業に投資するプリンストン拠点のベンチャーキャピタル(VC)だ。

最近の環境テックへの関心の高まりから、同社が投資する環境テック企業の累計評価額は、この5カ月間で57億ドル(約6512億円)から81億ドル(約9255円)と44%も増加している

数多くあるSOSVポートフォリオ企業の中でも、特に大きな期待を集めているのが、AIを活用し植物ベースの乳製品を開発するNotCoだ。

同社は2015年に南米チリで設立され、SOSVのアクセラレータプログラム「IndieBio」を修了した。2021年7月には、シリーズDラウンドで、SOSVやジェフ・ベゾス氏の投資会社などから計2億3500万ドル(約268億円)を調達、評価額は15億ドル(約1713億円)に達し、SOSVの同プログラム修了企業として初のユニコーン企業となった。

NotCoは、同社が特許を持つAIアルゴリズム「Giuseppe」を活用し、乳製品を構成する動物タンパク質に近い構造を持つ植物性タンパク質を探し出し、植物ベースの乳製品を開発、米国や中南米市場で提供している。

現在のラインナップは、植物ベースの牛乳「Not Milk」、マヨネーズ「Not Mayo」、アイスクリーム「Not Icecream」。また植物ベースの肉やバーガーも開発・提供している。米国市場では現在Not Milkのみの提供だが、アマゾン傘下のホールフーズなど全国展開するスーパーで入手可能となっている。

そのほかの注目環境テック、食品テック関連に関心集まる

NotCoのほかには、どのような環境テック企業が注目されているのか。

SOSVは、同社が投資する有望スタートアップ100社を「SOSV Climate Tech100」というリストにまとめている

同リストを見ると、環境テックの中でも特に食品関連のスタートアップに資金が集まっていることが分かる。上記で紹介したNotCoもその1社。

NotCoと並びユニコーン企業のステータスとなったのが発酵や微生物などによってカゼインやホエイなどのタンパク質を開発するPerfect Dayだ。同社のタンパク質は乳牛から採れるミルクと同じ分子構造を持っており、これを利用することで、アニマルフリーのチーズやヨーグルトをつくることが可能となる。

ビーガン食としての乳製品を製造できることから、ビーガン関連メディアでも注目が集まる存在となっている。

ビーガンメディアの1つVegNewsは2021年10月1日、Perfect DayがシリーズDラウンドで3億5000万ドル(約400億円)を調達し、評価額はNotCoと同じ15億ドル(約1713億円)に達したと報道。また上場の可能性もあると伝えている。

このほか、美容品・食品・飲料用として利用できるアニマルフリーのコラーゲンを開発するGeltor、鶏フリーの卵を開発するClara Foods、水利用を94%削減できる手法でウイスキーやワインを製造するEndless West、植物ベースのエビを開発するNew Wave Foodsなどがリストの資金調達額項目の上位に名を連ねている。

IPO間近といわれるスタートアップも少なくない。どのスタートアップがテスラやGAFAM級の企業に成長するのか、今後の展開が気になるところだ。

文:細谷元(Livit