コロナ禍により「遊び」のスタイルが変化している。人が集まることが難しく、ソーシャルディスタンスを取らざるを得ない今、飲み会やパーティー、大型イベント、海外旅行といった娯楽ができなくなっている。

それに代わって人気を集めているのが、アウトドアである。特に、家族で気兼ねなく出かけられ、自然を満喫しながら旅行気分も楽しめるキャンピングやグランピングは世界中で愛好家が増えている。

コロナ禍をきっかけに、世界中で“キャンパー”が急増中

2020年にキャンプを始めた人の約77%が「コロナがきっかけ」と回答(出典:Kampground of America

アメリカのキャンプ団体Kampground of America(KOA)の年次レポートによると、全米で2020年にキャンプを始めた人の数は、前年と比べ5倍も増えたという。2020年は4820万世帯が少なくとも1回はキャンプに出かけたが、その中でこれがキャンプデビューだったのは1010万世帯であった。さらに、デビュー組のうち770万世帯が「コロナ禍がきっかけで始めた」と回答している。

同時に、サービスと快適さを兼ね備えたグランピング人気も急上昇している。米国に本拠地を置くPR会社Cisionの調査によると、世界のグランピング市場は年々拡大しており、現在の年成長率は14.1%。2028年には市場は54.1億米ドルに達する見込みだという。

ステイホームやテレワークが日常となり、気軽に出かけることもままならない今、世界中で閉塞感が蔓延している。その中で、感染リスクが少なく安全に楽しめるキャンピングやグランピングは、時代の要求に応えるレジャーとしてスタンダードになりつつあるようだ。

トレンドキーワードは「若年ファミリー層・高級化・体験型」

世代別キャンプ頻度の割合。紫色の「初キャンパー」は、Z世代(28%)とミレニアル世代(26%)が多く占めている(出典:Kampground of America

キャンプ人口の増加とともに、傾向やトレンドも変化している。KOAによると、米国で2020年にキャンブを始めた「初キャンパー」のうち、6割が40歳以下のZ世代やミレニアル世代だったという。また、うち3/4が子どものいる家族であった。

10年前には米国のキャンプ人口の9割が白人であったが、2020年には6割に減少。代わりに黒人やアジア人などが増えており、現在は全体の1/4を黒人が占めている。キャンプ人口は若年化、ファミリー化、そして人種の多様化が進んでいると言える。

また、「高級化」もトレンドの一つである。キャンプというと、キャンピングカーで移動したり、自分たちでテントを立てて食事を作ったりというイメージがあるかもしれないが、初キャンパーの2/3がアメニティやサービスが整った施設を選んでいる。

高価格でラグジュアリーなグランピング施設も増えていて、高級ホテル並みの部屋やサービスを提供しているものも少なくない。実際、デビュー組の約4割が世帯年収10万米ドル以上だという。

キャンピングの急速な一般化により、これまで長期休暇に海外旅行に行っていた層や、アウトドア慣れしていない若者、小さな子どものいる家族などがキャンプ市場に流入してきた影響が伺える。

旅行やお出かけが気軽にできない今、体験型のアクティビティを備えた施設も人気だ。次章で紹介するが、動物に餌付けできるサファリグランピングやオーロラの真下のキャンプ場など、驚くようなユニークな施設もある。

米国のキャンプ場予約サイトThe Dyrtによると、2020年夏の予約件数は前年の400倍とのこと。空前のキャンプブームは今後もしばらく続きそうである。

世界のユニークなキャンピング&グランピングサイト6選

では、ここからは米国を中心に世界のユニークなキャンプ場やグランピング施設を紹介する。想像を超えるスケールの大きさで、いつか行ってみたくなる場所ばかりだ。妄想トリップをしながら、非日常気分を味わってほしい。

1. 動物への餌付けもできるサファリグランピング(オーストラリア)

オーストラリアの首都キャンベラにあるJamala Wildlife Lodgeは、個人所有の国立動物園&水族館の園内にある、アフリカをテーマにしたロッジだ。

宿泊者は、バルコニーからキリンに餌をやったり、バスルームからマレーグマを観察したり、ライオンやトラ、チーターをガラスの仕切りから間近で見たりと、動物たちと至近距離で過ごすことができる。食事中にライオンが近くまで来ることもあるという。

1泊890豪ドル〜で、料金には宿泊料、マルチコースディナー、飼育係とのプライベートモーニングツアー、2日間の動物園入場などが含まれる。

2. ニューヨークの避暑地にある歴史あるキャンプサイト(米・ニューヨーク)

ニューヨーク州中部、風光明媚なキャッツキル山地にあるEastwind Hotel&Bar。1920年代は狩猟者や釣り人向けの簡素な山の家だったが、近年ラグジュアリーな宿泊施設に改装し、リニューアルオープンした。

「快適さを追求するキャンピング」というスカンジナビアの理念に倣い、5つ星ホテルのようなサービスとクオリティを提供している。

森の中に点在するウッドキャビンには上質なベッドやアメニティが備えられ、近くには小ぎれいなサウナ小屋もある。ホテルタイプの施設もあり、いずれも都会からのエスケープに希望する人が後を絶たない。キャビンは1泊229米ドル〜。

3. テントからオーロラ観測ができる(フィンランド)

フィンランドにあるTorassieppi Jerisjärviでは、タイミングが合えば宿泊テントからオーロラが見られるという夢のようなキャンプ場だ。ドーム型のテントには天窓があり、室内で寝転がりながら美しいオーロラが観測できる。

アクティビティも充実していて、クロスカントリー、犬ぞり、スノーモービル、トナカイ散策など盛りだくさん。近くにはヨーロッパ最北端のスキーリゾートSaariselkäがあり、国内で最も長い雪そりも楽しめる。1泊301米ドル〜。

4. 水上に浮かぶ茅葺ハウスにステイ(米・フロリダ)

フロリダのキーウェスト沖に浮かぶ、茅葺の水上バンガローThe Grand Tiki。2021年にオープンしたばかりで、部屋からは360度の海が見渡せる。室内設備は50インチのテレビやカスタムオークベッド、1日113リットルの水タンクやWiFi、トイレ、ホットシャワーや音声起動照明など過不足ない。

The Grand Tikiは、海岸近くに停泊する従来のフローティングハウスと違い、陸地から比較的遠くに滞在する。密から逃れ、海の自然を思う存分楽しめる新しいタイプのグランピングサイトとして注目されている。1泊543米ドル〜。

5. 氷河の上でオーロラを見ながら夜を過ごす(米・アラスカ)

アラスカのキャンプ施設Alpenglow Luxury Campingでは、アラスカ最大で最も近くにある氷河「マタヌスカ」で、オーロラを見ながら夜を過ごすことができる。

テント型の宿泊施設にはベッド、ロッキングチェアなどの基本的なアメニティはあるが、電気はなく、シャワーやお風呂は共同だ。暗くなったら火を灯して大自然と一体になる、本来のキャンプらしい体験ができる。1泊159米ドル〜。

6. テキサスらしさを楽しめる、ユニークな体験型グランピング(米・テキサス)

テキサスにあるCollective Hill Countryは広大な牧場の中にあるグランピングサイトだ。12あるテント内にはキングサイズのベッドや豪華なバスルームが備わり、マッサージやスパサービスもある。

地元の文化や食を楽しめるプランが充実しており、弓矢やナイフ投げ、緑の小道での乗馬、ハイキングなど、テキサスらしいアクティビティが盛りだくさん。施設の毛布やラグには伝統の手染めテキスタイルが採用され、食事はシェフが郷土料理でもてなしてくれる。1泊263米ドル〜。

文:矢羽野晶子
編集:岡徳之(Livit

<参考>
Kampgrounds of America「North American Camping Report
Cision「Global Glamping Market Report 2021
Travel Awaits「Unforgettable Zoo Sleepovers In Australia
Forbes「Northern Lights, Cozy Hot Tubs: 11 Winter Glamping Spots You Need To See
Forbes「Glamping Takes To The Water With Floating Airbnbs
AARP「9 Glorious Glamping Spots Around the U.S.