東芝が開発した細胞培養管理プラットフォームの社会実装を加速させるために設立した「サイトロニクス(以下、Cytoronix社)」が7月1日に営業を開始すると発表した。

Cytoronix社は、同社で実証を行ってきた細胞培養管理事業を外部化するために、Beyond Next Venturesとともに出資を行い設立した会社。

Cytoronix社のロゴ

Cytoronix社には、細胞培養管理プラットフォームの研究開発や事業化の推進を行ってきた同社従業員の今井快多が代表取締役 最高経営責任者(CEO)、香西昌平が代表取締役 最高技術責任者(CTO)に経営株主として就任。

同社がベンチャーキャピタルとともにスタートアップ企業を立ち上げ、従業員が独立して経営株主として事業の推進を担うことで新規事業の創出を行う試みは、同社として初めての事例となるとのことだ。

同事例では、同社とBeyond Next Venturesが出資を行うが、Cytoronix社の独立性を担保するため、議決権の過半は経営株主が有しており、経営の自由度の最大化と多様な資金調達が可能になるという。

同社は、「東芝Nextプラン」に基づき2019年1月に発足した新規事業推進室において、オープンイノベーションにより有望な新規事業を迅速に創出する活動を推進。

今回、外部化する細胞培養管理事業は、細胞を培養して増やし、所望の状態や量にして患者に投与する再生医療の拡大と普及に不可欠な事業であるという。

細胞培養においては「培養結果がばらつく」「ばらつきを管理するには大きな装置が必要」といった課題があるが、同社は、ばらつきを抑え細胞を安定的に培養することに必要な細胞モニタリング装置の小型化を同社独自の技術で実現し、それを効果的に運用するクラウドウェアからなる細胞培養管理プラットフォームを開発。

今後、測定されたデータを分析するアルゴリズムを継続的に改善・強化するとともに、研究から量産まで様々なフェーズのユーザーに導入する装置開発や、ユーザーのフェーズごとに最適化したサブスクリプションモデルでの提供を目指すとのことだ。

再生医療分野は、多種多様なシーズ開発による事業機会の到来に伴い、激しい競争が繰り広げられている新しいビジネス領域。

開発したシーズを、タイミングを逃さず事業につなげるためには、迅速な人材・事業投資が必要不可欠。こうした環境の中、同社は、細胞培養管理事業を外部化することが、同事業の価値提供を最大化するための最善なスキームであると考えたという。

またBeyond Next Venturesは、医療・ライフサイエンス領域を中心に、多数の技術系スタートアップへの投資を通じて、その事業化・成長支援に豊富な実績を有しており、同社とは医療系ベンチャー企業の探索や協業の検討において業務提携を行っていることから、同スキームの実現に最適なパートナーと考えているという。

同社は、今回の事業の外部化スキームを、研究開発の成果を迅速に社会実装し、社会課題の解決や社会への新たな価値提供を実現するための新しい事業創出の手法の一つに位置づけているという。

このスキームを通じて、社内外に存在する高い挑戦意欲をもった人材に対して組織の壁を超えて活躍の場を広げるとともに、これらの人材との連携を強化することで、シーズ開発を起点とした事業の創出とオープンイノベーションによるエコシステムの形成を実現していくとのことだ。