INDEX
NTTデータは、NTTデータCCS、クニエ、ハレックス、AmaterZ、一般社団法人新生福島先端技術振興機構とともに、農林水産省「令和元年度スマート農業技術の開発・実証プロジェクト」において、コンソーシアムを構成し、水稲の収量増および作業時間削減の実証を2019年4月から2021年3月まで実施。
同実証では、福島県南相馬市の株式会社アグリ鶴谷(つるがい)の農場で、福島県の水稲オリジナル品種「天のつぶ」を対象に、AI技術を用いた追肥時期の判断、AIによる病害虫・雑草の同定、みちびき対応ドローンによる肥料・農薬散布、水田水位センサーの利用、営農支援プラットフォーム「あい作®」を用いた作業管理の有効性について検証。
実証の結果、目標としていた収量5%増、農薬・肥料散布、水管理作業にかかる作業時間30%削減を達成し、一定の耕作面積において農家経営に寄与することが確認できたとしている。
今後NTTデータは、今後も水稲をはじめとした日本の農業の課題解決に向けて取り組んでいくとのことだ。
背景
近年日本の農業には2つの主な課題があるという。
第1に、熟練農業従事者が有する施肥タイミングなどの経験則が通用しない、従来その土地ではあまり目立たなかった病害虫の増加といった、地球温暖化の進行に伴って想定される課題。そして第2に、就農人口の減少であるとのことだ。
NTTデータはこれらの課題を解決するため、実証実験を2019年4月から2021年3月にかけて福島県南相馬市のアグリ鶴谷の農場で実施。
スマート生育診断・追肥、スマート病害虫診断・対処、水位センサー導入による水管理時間の削減、「あい作」を用いた作業管理について実証を行い、「天のつぶ」収量5%増、肥料・農薬散布、水管理作業にかかる作業時間30%削減を目標としたとのことだ。
実証の概要
実証課題:「みちびき」活用による新たなスマート営農ソリューション(中山間部における稲作経営対応)
実証目標:「天のつぶ」収量5%増、農薬・肥料散布、水管理にかかる作業時間の30%削減
実証期間:2019年4月~2021年3月
実証場所:福島県南相馬市の株式会社アグリ鶴谷の農場
実証内容:
1.スマート生育診断・追肥
<計画>「天のつぶ」AI生育診断モデルを作成し、圃場画像からAIにより生育ステージを診断し、適切な時期にドローンによる肥料散布を行う。また、分光指数NDVI撮影をもとに可変施肥(圃場内への肥料の撒き分け)を行い、圃場全体で稲の収量を向上させる。
<結果>作成したAIを用いた推奨時期の追肥により、2カ年平均で天のつぶの収量5.2%増を達成した。AI診断による生育ステージ判定誤差は正解と平均2.0日差と良好な結果が得られた。また、可変施肥により圃場内の収量内のばらつきを削減できることを確認した。
2.スマート病害虫診断・対処
<計画>ドローン空撮画像から病害・雑草発生状況の診断、スマホ撮影画像から病害虫・雑草の同定を行う。診断結果からドローンにより農薬散布を行い、被害の拡大を防ぐ。
<結果>ドローンによる病害と雑草の検知と、圃場で発生した30種の病害虫・雑草についてスマホで同定ができることを確認した。
3.「みちびき」対応ドローンによる肥料・農薬散布作業時間の削減
<計画>ドローン運行管制システム「airpalette® UTM」を用いた、「みちびき」ドローンの自動航行による肥料・農薬散布を実施する。みちびきとGPSの精度検証、および、複数台同時航行によるさらなる効率化が可能か確認する。
<結果>ドローンによる肥料・農薬散布と、動力散布機との作業時間比較で、肥料は33.1%削減、農薬は73.6%削減を達成した。みちびきとGPSの精度検証では、特にマルチパスが発生しやすい悪条件下でGPSより良好な結果が得られた。ドローン2台および4台での自動航行の農薬散布を行い、作業時間のさらなる削減ができることを確認した。
4.水位センサー導入による水管理時間の削減
<計画>水位センサー「tukumo」を圃場全体に設置し水管理に係る作業時間の削減を確認する。
<結果>水位センサー設置圃場と水位センサー未導入圃場との比較で、見回り稼働の削減により61.6%の作業時間削減を確認した。
5.「あい作」を用いた作業管理
<計画>栽培計画、栽培計画、連絡相談機能を利用し、実証データの記録・集約を行う。また、生育診断AI・病害虫診断AI、水位センサーとの連携の改善と確認を行う。
<結果>実証データを「あい作」へ記録し、実証データの集約を実施した。また、営農管理ツールとして、圃場情報の収集が可能な各種センサーや、AIを用いた診断サービス等との連携が有効であることが確認できた。
実証結果
目標としていた収量5%増、農薬・肥料散布、水管理作業にかかる作業時間30%削減を達成し、一定の耕作面積において農家経営に寄与することが確認できたという。
今後について
今後NTTデータは、同実証実験で得た結果や知見をもとに、新たな水稲栽培支援サービスなど、地球温暖化に伴う気候変動により従来の栽培暦や農業者の経験では対応が困難な状況への対応として、限られた就農人口でも大規模面積での営農を継続できる低負荷低コストのスマート農業サービスの提供を目指していくとしている。