レコテック、花王、三菱地所、Tokyo Marunouchi Innovation Platform(以下、TMIP)は、東京・丸の内エリアにおいて、プラスチックの回収・製品化を通じた資源循環モデルの確⽴に向けた実証事業を開始すると発表した。

プラスチック製品など消費者が製品を使用した後に回収されるリサイクル材であるポストコンシューマーリサイクル材(以下、PCR材)は、多品種かつ少量で発生するため回収が難しいことが指摘されている。

そこで、消費材製品の原材料として循環利用するために必要な物流の効率化およびトレーサビリティの担保に向け、丸の内エリア等の廃プラスチックを回収・製品化することで、廃棄物の回収・圧縮保管・リペレット・製品化の一連のプロセスにおける課題の抽出および製品のライフサイクルを通じた環境への影響やコストを検証するとのことだ。

なお、廃棄物の回収にあたっては、レコテックが構築したごみの種類・量・発生時間などの情報を地図上にマッピングするなど廃棄物情報を集約したクラウドプラットフォーム「Material Pool System(以下、MPS)」を活用するほか、「再生利用指定制度」を利用。

また、資源を採取・加工し、製品を製造・流通・販売する「動脈産業」と、その廃棄物を回収して再生・再利用、処理・処分などを行う「静脈産業」が一体となった物流システム「動静脈一体物流」を実現。

再生利用されることが確実である産業廃棄物のみの処理を業として営んでいる事業者を都道府県知事が指定することで、産業廃棄物処理業の許可を不要とし、産業廃棄物の再生利用を容易に行えるようにするための制度。

同実証事業のプロセス

■実証実験概要
実証期間:2021年6月1日~2か月程度(予定)
実証内容:ビルから排出されるプラスチック由来の再生プラスチックの品質を確認し、将来におけるプラスチック資源循環に適した分別ルール、効率的静脈チェーンのあり方、供給可能量およびリサイクルコスト(試算)の確認
実証対象:丸ビル、新丸ビル等の主にアパレルテナントから排出されるプラスチック製フィルム

プラスチック製フィルム参考イメージ(画像は一例)

■ 実証実施の背景

昨今、グローバルにおいて急増する人口や過剰消費により、サーキュラー・エコノミーへの移行が急務となっており、2020年3月に発表されたEC(欧州委員会)の「New Circular Economy Action Plan(新循環型経済行動計画)」では、リサイクル材の使用義務化や廃棄削減に対する強制的な措置が提案されている。

日本においても、海洋プラスチック問題の深刻化からプラスチックごみの削減と再利用が喫緊の課題であり、消費材メーカー等の製造事業者にもPCR材を商品の材料として積極的に活用していくことが強く求められているという。

一方で、PCR材は多品種かつ少量で発生するため、各拠点での品種ごとの排出量が不明瞭で品質が安定せず、回収コストも非常に高くなる。

企業が原材料としてPCR材を継続的に活用していくためには、調達量と品質の安定とともに回収・リサイクルのコストを抑える必要がある上、トレーサビリティの担保が欠かせないとのことだ。

■実証実験について

【実証方法】
同実証事業では、レコテックが提供するごみを可視化するプラットフォームシステム「MPS」および廃棄物を記録するWebアプリケーション「GOMiCO」にて廃プラスチックの量と種類を可視化し追跡・管理を徹底することでトレーサビリティを確立。

これを前提に、東京都の「再生利用指定」を受けた許認可外の車両を使った動静脈一体物流を実現することで、廃プラスチックの収集・運搬を効率化し再生ペレットのコスト削減を目指しているとのことだ。

また、プラスチックの回収から製品化までの一連のプロセスの環境負荷とコストを産学連携で評価。

日本でも今年3月に「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案」が閣議決定され、プラスチックの資源循環に向けた物流の効率化のための規制緩和が促進されていくと期待されるとのことだ。

同実証事業を通して、将来的なプラスチック循環事業のモデルや各ステークホルダーにおける課題をさらに抽出することでサーキュラー・エコノミーへの移行を先導するとしている。

ごみを可視化するプラットフォームシステム「MPS」(左)とごみを記録する「GOMiCO」(右)

【各社の役割】

同実証事業では、三菱地所が所有する丸ビル・新丸ビルで排出されたプラスチックを、センコーグループである東京納品代行が商品の納品時の帰り便で廃プラスチックを回収。

回収した廃プラスチックはセンコー商事で圧縮保管し、エンビプロ・ホールディングスが廃プラスチックを粉砕・溶融して原材料化し、 リサイクルする「リペレット」を行う。再生ペレットは花王で製品への利用に向けて物性評価・用途開発を行うとしている。

レコテック、双日、NTTコミュニケーションズ、日商エレクトロニクスの4社は再生資源のプラットフォームである「MPS」を基盤に、サーキュラー・エコノミー形成に必要なプラットフォームとしての要件や課題の抽出を実施。

東京大学の村上研究室および有限責任監査法人トーマツは、「再生利用指定」による動静脈一体物流による廃プラスチックの収集・運搬プロセス等の環境負荷およびコストを評価。

資源循環プラットフォーム「Material Pool System(MPS)」を活用したプラスチック循環モデル

■今後の展開について

レコテックは、2020年の川崎や福岡での実証事業により、商業施設から排出されるプラスチックの日用品ボトルへの利用可能性や経済合理性などを検証してきた。

同実証事業では、規制緩和による物流効率化の環境負荷と収集・運搬コストへの効果を検証すると同時に、次年度からの事業化に向けてプラットフォームとしての課題を抽出・整理し、排出元・加工プロセス・PCR材の最終成果物の評価や認証などを検討しながら更なるシステム開発を加速させるとしている。

花王は、リデュース、リプレイス、リユース、リサイクルの4Rの観点で、包装容器に使用されるプラスチック資源の削減に努めている。同実証事業では、廃プラスチックの回収の効率化と品質の安定性から、今後の商品への活用について具体的に検討を進めるとのことだ。

三菱地所は、長期ビジョン「三菱地所グループのSustainability Vision 2050」を策定しており、多様な個人や企業が経済・環境・社会の全ての側面で持続的に共生関係を構築できる場と仕組みをエコシステムと定義し、その実現に向け取り組んでいる。今回の実証事業を通じて、持続可能な魅力あふれるまちづくりを推進していくとしている。

TMIPは、丸の内エリアにおいてサーキュラー・エコノミーを始めとした様々な社会活動の解決に向けた活動を活発に行っており、今回の取り組みもTMIPとの連携により始動したプロジェクトであるとしている。今後も、様々な社会課題解決に向けて進めていくとのことだ。