作業服とアウトドアウェアの小売店を全国展開するワークマンは、日立との協創を通じ、先進のデジタル技術を用いて、約10万品目の発注業務を自動化する新システムを2021年3月から2店舗に先行導入し、稼働開始したことを発表した。
同システムは、全国展開するスーパーマーケットなどへの導入実績がある日立の「Hitachi Digital Solution for Retail/AI需要予測型自動発注サービス」を活用したもの。
在庫回転率が低い品目に対応する「自動補充型」と、在庫回転率が高い品目に対応する「AI需要予測型」のアルゴリズムを併せ持ち、商品の売れ行きに応じて最適なアルゴリズムをタイムリーかつ自動で選択・切り替えることが可能であるという。
ワークマンは、同システムを活用することにより、従来、各店舗において1日あたり約30分を要していた発注業務を約2分に短縮することができ、働き方改革と欠品の抑制、在庫の適正化を実現。
ワークマンと日立では今後、全国の「ワークマン」、「WORKMAN Plus」、「#ワークマン女子」を合わせた約900店舗を対象に同システムを適用拡大していく予定であるとのことだ。
消費者ニーズが多様化し、トレンドが急速に変化していく現代において、小売店にとって発注・在庫管理は、店舗の売上・利益や運営効率に直結する重要な業務となっているが、深刻な労働力不足を背景に発注・在庫管理業務を自動化するシステムの活用が広がっている。
しかし、取り扱い商品数が多く、かつ定番品と季節品など商品特性が混在するケースでは、全ての商品に対する業務の自動化が難しく、人手による作業が無くならないという現状にある。
こうした状況の中、近年、アウトドアウェアや女性向け商品など新たなコンセプトを打ち出して事業を拡大している作業服大手のワークマンでは、取り扱い商品が約10万品目に及び、1店舗あたり約13,000品目を有している。
ワークマンではこれらの発注業務に1日あたり約30分を費やすとともに、適切な在庫の確保やタイムリーな商品の入れ替えに課題があった。
こうしたことから、ワークマンと日立は、2020年からデジタル技術を活用した発注・在庫管理業務の自動化に向けた協創を開始。
ワークマンのニーズに合わせた自動発注システムの開発にあたり、日立は、全国展開するスーパーマーケットなどで導入実績がある「Hitachi Digital Solution for Retail/AI需要予測型自動発注サービス」をベースに、ワークマンの商品特性を考慮し、在庫回転率の低い定番商品に対応する自動補充型のアルゴリズムを組み合わせるとともに、在庫回転率に応じて「自動補充型」と「AI需要予測型」のアルゴリズムを動的に切り替える機能を今回新たに追加したとのことだ。
ワークマンの3店舗、31品目を対象に同システムのシミュレーションを行ったところ、現状の店舗棚割に即した平均在庫量を維持しながら、こまめな補充による欠品抑制が実現できるとともに、各店舗で毎朝、システムにより推奨された発注量を確認し確定ボタンを押すのみで発注作業を完了でき、約30分を費やしていた作業を約2分に短縮できることを確認。そして、2021年3月から2店舗への先行導入を開始。
同システムは、品目ごとに刻々と変化する在庫回転率に応じて、以下のアルゴリズムをタイムリーかつ自動で切り替える強化学習型機能を搭載している。
- 自動補充型アルゴリズム:商品の販売累計が一定数を超えた時や最低在庫量を下回った時に、自動的に発注を行う「セルワンバイワン方式」による計算方法。
- AI需要予測型アルゴリズム:商品ごとの過去の在庫・発注・販売・売れ残り量や、天候・イベント情報などの複雑な条件を考慮して需要量を算出する方法。
なお、アルゴリズムの切り替えや、自動補充型アルゴリズムに関する制御パラメータを分析し、一括でメンテナンスする運用サポートには、日立ソリューションズ東日本の需要予測・発注計画ソリューション「SynCAS」を活用している。
ワークマンと日立は、同システムを2021年11月までにワークマンの450店舗に導入し、順次、国内の全ての約900店舗へ展開していくという。
また、ワークマンはさらなる事業拡大に向けて、プライベートブランドの商品開発や流通センターの増強などを進めており、サプライチェーン全体を最適化する仕組みづくりに向けて、ワークマンと日立は今後も協創を継続していく予定であるとのことだ。
日立は、今回の協創を通じて機能を拡充した同サービスを、流通分野向けのLumadaソリューション群「Hitachi Digital Solution for Retail」のラインアップの一つとして、衣料品やスーパーマーケットなどの小売店を対象に展開し、社会価値、環境価値、経済価値の向上に貢献していくとしている。