東日本大震災から10年が経った2021年3月。Twitterで、大震災の記憶と学びをつなぎ、未来の災害を考えるキャンペーンが1か月にわたって開催された。

「#あれから10年」「#防災いまできること」などの共通ハッシュタグでツイートすると、期間限定でTwitter Japanのデザイナーが作成した折り鶴の絵文字も表示される仕組みとなっている。

同キャンペーンには、報道各社が運営する50のツイッターアカウントが参加し、東日本大震災に関するニュース、防災や減災の特集記事などをツイート。JX通信社(@NewsDigestWeb)も参加したとのことだ。

これらのハッシュタグはこの1か月どのように使われ、広まったのか、そして記憶と学びは、どれほどつながったのか、今回TwitterおよびJX通信社は、キャンペーンの結果を発表した。

なお、対象としたツイートについては以下。

#あれから10年 #防災いまできること #あれから私は #これから私は #東北ボランティア #10yearslater #lovefortohoku のいずれかのハッシュタグを含むツイート(具体的に言及が無い限りリツイート、引用ツイートを含まない)

報道各社のツイート件数の推移

まずは、キャンペーンに参加した報道各社のツイート件数。報道各社別に色を変えた積み上げ棒グラフを作成。

棒グラフはツイート件数(左目盛り)、折れ線グラフはリツイート件数(右目盛り) 

3月始めの1週間は、およそ50件/日以上のツイート件数。そしてリツイート件数は4日目から急に増え始め、大勢の注目を集めるようなツイートが集まった証左であり、3月11日以前から着実にハッシュタグが浸透していたことが伺えるとのことだ。

ツイート件数は、8日から11日にかけて一気に増加。東日本大震災から10年が経つ11日には350件近くツイートが発信され、10,000件を超えてリツイートされたとのことだ。

しかも、グラフの通りで12日以降もツイートは続き、かつ注目を集めリツイートされたツイートもあったという。

例えば、南海トラフ地震の危険性を訴えるツイートや、東日本大震災の津波を煙突に逃れて助かった証言をVRで体験できる記事を知らせるツイート、警視庁災害対策課のTwitterの中の人を取材したツイートなど。

3月始めの報道各社から他団体への広がりが鍵

キャンペーンは、趣旨に賛同して参加した報道各社の発信に留まらない。多くの人々に広がり、積極的な発信につながったと分かったとのことだ。報道各社と一般の人のツイート件数の推移をグラフで表現。

報道各社(黄色)と一般の人々(青色)のツイート件数を表す積み上げ面グラフ 

一貫して、報道各社からのツイート件数よりも一般の人々からのツイート件数が多いことが見て取れるが、一方で報道各社やさまざまな団体からのツイートがハッシュタグやその目的の認知向上を牽引。

特に5日以降、テレビ局のアカウントによる「震災への備え」に関するツイート、避難所生活の環境について問題提起するオンラインメディアのアカウントによるツイートに関心が集まり、ハッシュタグの使用が広がっていったとしている。

報道各社をはじめとするツイートが、多くの人々が自分たちの経験や学びをツイートするという行動を誘発したことが伺える。

なお、ハッシュタグの利用は、報道各社から他団体、そして一般の人々に具体的にどのように広がっていったのか、まとめは以下。

1.11日前の段階で団体から団体への情報の広がりが加速:
まずハッシュタグの利用が広がったのは、認証済みバッジがついているような、いわゆる「公式アカウント」。東日本大震災からの10年を振り返るなどのツイートが見られ、Twitter Japanからの呼びかけに賛同してくれた駐日外国公館のアカウントによるツイートは多くのエンゲージメントを獲得していたという。

2.復興支援を地道に続けてきたインフルエンサー層のフォロワーにリーチ:
次にリーチしたのが、一般のなかでも東日本大震災からの復興に深く関わってきたスポーツ選手や芸能人のファンであったという。有名人の活動と結びつけて「#あれから10年」と共に震災からの10年を振り返るツイートが見られたとのことだ。イラストで防災を説明する絵師さんなどの参加も強く影響しているという。

3.11日前にハッシュタグが多くの一般の人々へ広がる:
そして、多くの一般の人々にハッシュタグが拡散。震災当時の体験を振り返るツイートや政治的な主張をしているツイートなど、幅広い層が利用し始めたとのことだ。

これらの動きを経て盛り上がりは8日から12日にかけてピークを迎える。特に東日本大震災からちょうど10年となる11日には約30,000件のツイートが確認された。

Twitter Japanと報道各社によってスタートした企画であるが、11日にツイートされたツイートのうち約99%は一般の人々が占めるまでに広がっていったとのことだ。

また、上のグラフを拡大して見ると、11日を過ぎて14日まで多くのツイートがあったことがわかる。東日本大震災当時の体験や災害時に必要な知識を思い出しツイートする人が現れるなど、「3.11」をきっかけにしたツイートが数日続いていたとのことだ。

グラフの目盛り上限を3,000件に設定することで数百件台の推移が分かりやすくなる 

具体的には、東日本大震災で家族を亡くした経験やボランティアとしての体験を振り返るツイート、震災に関するニュース、著名人アカウントによる追悼のツイートが多く確認されたとしている。

それ以外にも、ハッシュタグに触発されたのか「力を合わせて乗り越えよう」という呼びかけがあったり、自らの夢を語るツイートがあったり、ハッシュタグそのものが未来に前向きな感情を抱くきっかけにもなっていたという。

のべ13億人に届いたであろう「東日本大震災の記憶とこれから」

ツイートのリツイート回数も、一般の人々のツイートは、報道各社のツイートよりもリツイートされており、特に3月11日は120,000件以上もリツイートされていたと分かった。

報道各社による発信だけでなく、一人ひとりが10年前の大震災の記憶を思い出し、得られた学びを共有したことが共感を呼んだと考えられるとのことだ。

報道各社(黄色)と一般の人々(青色)のリツイート件数を表す面グラフ 

ちなみに、ハッシュタグの付いたツイートはどれだけの人の目に触れたか、ツイートを発信した人、そのツイートをリツイートした人、それぞれにフォロワー数を足し合わせていくと、1か月で延べ約13億2,390万人になることが分かったという。

ただし、実際はそれぞれのフォロワーのタイムラインは時系列表示やアルゴリズムによって最適化されており、Twitterのタイムラインの早い移り変わりのなかでこれらのツイートが全て彼らの目に振れていると限らないとのことだ。

しかし、ツイートが届く延べフォロワー数のポテンシャルは素晴らしいといえるとしている。

次に日別の詳細を見てみると、ハッシュタグ付きのツイートをした報道各社と一般の人々それぞれのフォロワー数合計を日ごとに集計したグラフが以下のとおり。

1か月を通して一般の人々によるツイートは延べ約8.8億人に、報道各社によるツイートは述べ約4.4億人に届いていたという。

もっともツイート件数が多かった11日には、一般の人々によるツイートが延べ約3.5億人、報道各社によるツイートが延べ約1億人に届いているとグラフから見て取れる。

報道各社(黄色)と一般の人々(青色)のツイートとリツイートが
どれほどのフォロワー数に届いていたと思われるかを表す折れ線グラフ 

まとめ

今回のキャンペーンの初動は報道各社中心で始まったが、その意義と重要性を理解した多くの人々が11日前後で「経験」を語り始めたことも大きな特徴だといえるとしている。

東日本大震災から10年が経つ11日に35,000件/日のツイートが発信されるだけでなく、その後もツイートが続くなど「その日だけ」で瞬間的なピークが作られるのではなく、1か月を通して大きな山ができた印象があり、その山の大きさは、1か月間で10億人以上に到達するほど。

中には、過去の振り返りにとどまらず、11日以降も未来に目を向けた前向きなツイートも散見され、一つのハッシュタグが様々な目的で使用されていることも分かったとのことだ。