インターネットが普及した現代において、インターネット上のサービス利用の際に、企業へ個人情報を送信する機会は多い。その一方で、インターネットから個人情報が流出したというニュースは後を絶たない。

それでも多くの消費者は企業をそれほど疑わずに、オンライン経由で企業へ個人情報を送り続けている。けれど消費者は、その信頼を見直さなければいけないかもしれない。デジタル・トラストに関する見解について、企業と消費者の間で大きな隔たりがあると世界的な調査が発表されたのだ。

CA Technologies、デジタル・トラストの見解に関する世界的調査の結果を発表

ニューヨークを本拠地とし、「ビジネスの革を推進するソフトウェアを提供」するコンピュータソフトウェア企業「CA Technologies」では、消費者・サイバーセキュリティ専門家、および企業のエグゼクティブのデジタル・トラストについての見解に関した世界的調査の結果を発表した。

この調査はCA Technologiesの後援で、調査会社Frost&Sullivan社により2018年3月4日、世界10ヵ国(米、ブラジル、英、仏、独、伊、豪、日、中、印)で実施されたもの。990人の消費者、336人のセキュリティ専門家、324人の企業経営幹部が調査の対象となった。

そのうち日本の調査対象者として、90人の消費者、30人のセキュリティ専門家、30人の企業経営幹部が含まれている

「Global State of Digital Trust Survey and Index 2018(デジタル・トラストの世界的状況調査とインデックス2018)」と題された今回の調査では、消費者が自身のデジタル・データを保有する企業についてどのように認識し、どの程度信頼しているかに焦点をあてている。

また企業のビジネス・リーダーやサイバーセキュリティ専門家が、データ管理や第三者への消費者データのライセンス提供、およびデータと顧客のプライバシーを保護するために利用している技術に関し、その責任をどう考えているかの見解についての重要なデータも含まれている。

インターネットの普及で消費者はオンラインで多くの時間を過ごすようになり、消費者たちのプロフィールや個人情報、行動や習慣に至るまで多くのデータに対して、企業が簡単にアクセスできるようになった。消費者に関するデータが膨大化するとともに、企業がそのデータを保護すべき責任も大きくなっている。

一方で、企業や政府機関において重大なデータ侵害が起きているとのニュースは後を絶たない。そんな中、オンライン上に存在する個人を特定可能な情報(Personal Identifiable Information:PII)を保護する側の企業に対し、消費者がどの程度信頼しているかは示されてこなかった。

企業はオンラインで個人情報を共有することに関する消費者の感情や、それが侵害されたときの企業への影響について理解することが不可欠だ。今回の調査も、消費者側の見解や感情を知るのに役立つだろう。

2018年の日本のDigital Trust Index(デジタル・トラスト指標)は100点満点中63ポイント

同調査では、消費者がデータを保護する側の企業の能力や意欲に対する信頼度を示すスコアを発表している。それが「Digital Trust Index(デジタル・トラスト指標)」であり、2018年の日本の同スコアは、100点満点中63ポイントだった。

この指標は、消費者が個人データを企業と共有することに関しどの程度協力的かや、消費者は企業が個人データをどの程度適切に保護していると考えているかなど、デジタル・トラストの考え方に関連した要素を測定するさまざまなメトリクスに基づき計算されている。

数値を見る限り個人データの保護に関して日本では、消費者の企業に対する信頼は決して高いとは言えないようだ。企業はこの数字の示す意味について考え直すべきだろう。

デジタル・サービスと引き換えに個人データを提供してよい個人は29%のみ、一方企業のエグゼティブの40%が個人を特定できる情報を含む消費者データの販売を認める

同調査ではより細かく、消費者や企業のエグゼティブ、サイバーセキュリティ専門家のデジタル・トラストに対する見解について明らかにしている。その結果は以下の通り。

  • 消費者の32%が、公表されているデータ侵害に関与している企業のサービスを現在も使用している、または過去に使用したことがあると回答。そのうち48%はデータ侵害を理由に、特定の企業のサービスを使わなくなったと回答した。
  • 消費者のデジタル・トラスト指数(63%)と、企業のエグゼティブ・サイバーセキュリティ専門家のデジタル・トラスト指数(73%)には10ポイントの差があった。これは、それぞれの立場で、デジタル・トラストに対する見解のズレがあることを示す。
  • 消費者の29%のみ、デジタル・サービスと引き換えに個人データを提供してもよいと回答した。
  • 75%の企業が、消費者データに関する自身の保護能力が非常に高いと回答し自信を示している一方で、組織の幹部の43%が公開された消費者データの侵害に関わっていることを認めた。
  • 企業のエグゼクティブの40%が個人を特定できる情報を含む消費者データの販売を認めた。一方で、そのようなデータの自社での販売を認識しているサイバーセキュリティ専門家は3%に過ぎなかった。

以上のように、デジタル・トラストについての認識は、個人・企業間で大きなズレがみられた。また企業内でも、エグゼクティブ・スタッフ・サイバーセキュリティ専門家間で認識を合わせられているとは言い難いことも見て取れる。消費者側も企業側も、このズレについて考え直すときにきているのではないだろうか。

企業に対するデジタル・トラストが失われないために

企業のデジタル・トラストが失われれば、インターネット上のさまざまなサービスが立ち行かなくなり、企業にも消費者にもその影響は甚大だろう。

今回の調査は、企業が消費者のプライバシーについてより真摯に考え直さなくてはならないこと、消費者はインターネット上で自身の情報を送信する際に企業をより厳しい目で見なければならないことを示している。この調査の結果が、少しでもデジタル・トラストの改善に寄与することを期待したい。

img:PR TIMES