JDSCと佐川急便、ならびに東京大学大学院 越塚登研究室・田中謙司研究室、横須賀市とグリッドデータバンク・ラボ有限責任事業組合(以下、GDBL)は、5者共同で、「AIと電力データを用いた不在配送問題の解消」に取り組んできた。
2020年10月~12月に、横須賀市で150世帯の協力を得て、世界初となるフィールド実証実験を行った結果、約20%の不在配送の減少を確認できたことを発表した。
今後、さらなる改善を目指して、2021年内に、次の実証実験を行うべく、準備を進めていくとのことだ。
これまでの背景
JDSCはAIを用いた電力データ解析・活用技術を保有しており(特許取得)、東大越塚研究室、田中研究室との連携のもと、スマートメーターから得られる電力データを元に、AIが配送ルートを示すシステムを開発。2018年9月~10月に東京大学内で行われた配送試験で、不在配送を9割減少。
2019年9月に、このシステムを用い、佐川急便の持つ配送実績データでシミュレーションした結果、不在配送の削減および総配送時間の短縮など一定の効果が確認されたことにより、2019年10月に3者共同研究開発へと至ったとしている。
2020年7月、電力データ活用による不在配送解消の社会実装を見据え、横須賀市とGDBLが参画、5者共同で2020年10月から12月の間に、横須賀市内でBルート(スマートメーターのデータを家庭用HEMS機器等で直接受信する方式)を用いたフィールド実証を実施。
今回実証は、2018年に行われた東京大学キャンパス内での学術目的の配送実験とは異なり、実際の配送会社、配送手段、実際の受け取り手である市民の協力と参画により行われまたとのことだ。
2020年10月~12月に横須賀市で行った世界初となるフィールド実証実験の結果
電力データを活用した在宅判定アルゴリズムで、在宅予測・判定を行い、実際に配送を行った結果、不在率を約20%改善。
その際、その地域の担当ドライバー、代走ドライバー、新人ドライバーなど、さまざまなドライバーで配送を行ttsが、これら不在率の削減効果は、ドライバー間での差は見られず、どのようなドライバーでも同様の結果が出せることが確認できたとしている。
また、この削減幅は、「終日不在であっても、配送拠点に荷物が到着した日には必ず訪問し、不在票を残す」というルールを変えず、現実に則した運用を行っても実現できたもの。
一方で、総走行距離と稼働時間は、「最短距離ルート」ではなく「不在宅を回避したルート」をとる形になるため、増加傾向にあったという。
今後の改善点として、2021年内に再度、実証実験を行い、走行距離・稼働時間を同等レベルに抑えた形で不在率の削減を目指す予定であるとのことだ。
2018年9月~10月に東京大学内で行った配送試験
なお、東京大学本郷キャンパス内で行った同実験では、予めキャンパス内の各建物に、別途収集した住宅の電力使用データと在不在情報を模擬的に割り振った上で、電力データのみから最適ルートを提示するシステムの性能評価を実施。
同システムを用いる場合と用いない場合(人が最短経路を判断し配送)で2輪車による配送を繰り返した結果、同システムを用いた場合の配送成功率は98%となり、不在配送は91%減少、総移動距離5%減少したという。
一方で同実験の課題としては、集荷・時間指定・宅配ボックスなどの実際の配送条件がない理想環境に基づくものであり、また配送者も、配送未経験の実験参加者によるものであり、実地環境での検証が課題となっていたとのことだ。