ビッグローブ(以下、BIGLOBE)は、日本能率協会コンサルティング(以下、JMAC)、日本健康開発財団とともに温泉地におけるワーケーションの実証実験を行った。

実証実験は、湯河原、わたり、別府と3つの温泉地で実施しており、BIGLOBEのほか、リモートワークを実施している損害保険ジャパン、三井住友ファイナンス&リースが別府温泉郷でのワーケーションに参加。

調査は2020年9月に実施したもので、調査方法は、JMACによる事前事後のアンケートおよび参加者へのインタビュー。

健康開発財団は、フィジカル面、メンタル面での変化を計測。自律神経バランス、血管の健康度・血管年齢、医科学的知見に基づく心身の健康状況や症状(VAS)、メンタルヘルス(POMS)などの評価を実施した。

1.ワーケーションは、実際に体験することでその良さが理解できる

ワーケーション参加者に満足度を調査したところ、参加者15名中14名にあたる93%がワーケーションに満足と回答。不満だと感じた参加者は0名。

また、事前事後のアンケート結果を比較すると、ワーケーションを取り入れたいという参加者たちの意向は高まっていることがわかった。ワーケーションを実際に体験することでその良さ・効果を実感することができたと推察される。

2.ワーケーション参加意欲変化の裏にはポジティブな体験がある

ワーケーション参加者の満足度や次回以降の参加意欲が向上した背景として、「温泉により自宅勤務よりリフレッシュできた」が73%、「いつもより楽しんで仕事ができた」「いつもよりメリハリある仕事ができた」が67%など、ワーケーション中にポジティブな体験を得たと回答した参加者が多く見られた。

また事後アンケートのフリーコメントやワーケーション中に実施したインタビューにおいて、「在宅勤務とはまったく異なるリフレッシュ感を味わえた」という声や、「温泉宿ならではの気分転換ができた」、「顧客という立場で過ごすことで違う発想が得られた」「自宅では得られない刺激があり、新しい発想が浮かんだ」という回答があった。

3.ワーケーションの課題はリモートワーク環境の整備や会社の制度化

一方で、ワーケーション参加者からは、ネットワークや机といったリモートワーク環境や、会社の制度化などといった課題も浮き彫りになった。ワーケーション中に実施したインタビューからも、温泉という“日常を離れた癒やしの場”ではあるものの、長時間仕事をするにはある程度のリモートワーク環境の整備が求められていることが分かった。

しかし、のワーケーション参加意欲の変化で明らかになったように、仕事環境面でのネガティブな体験があってもポジティブな体験がそれを上回っており、ワーケーションへの参加意欲は高まっている。

また、ワーケーションの事前準備から帰路までの体験をカスタマージャーニーになぞらえて整理すると、ネガティブな体験を補って余りあるポジティブな体験が得られていることがわかる。

ワーケーション参加の前段階には周囲からは「遊び」のように捉えられたり、到着してからは宿のリモートワーク環境に問題があったり、チェックイン前、チェックアウト後の時間にリモートワーク環境がなかった点など、ネガティブな体験が見られた。

しかし、普段と働く場所が違うということで発想が変わる、温泉でリフレッシュ、自然の中で気分転換など、ポジティブな体験が得られ、ネガティブな体験を上回った。また、リフレッシュ感が1~2週間続くなど良い体験の余韻が見られる点に特長があるという。

今後、本格的にワーケーションを取り入れる際には、事前の下調べや、職場としての理解を深めるといった点に留意することで、より充実した体験が得られるものと考えられる。

4.共同の体験を通じチームの絆が深まる

温泉地にてチームでワーケーションを実施すると、チームの絆が深まるということが参加者たちの声から分かった。

ワーケーション期間中のインタビューにおいて、ワーケーションはチームにとってメリットがあると87%(15名中13名)が回答した。

具体的には、「チームのコミュニケーションが活性化され、ワーケーション後にもその効果は持続すると感じる」「一緒に行ったメンバーの人となりを知れることで、前よりも心を開いて話せた」「仕事以外の時間も一緒に過ごすことで、メンバーと密度濃く会話をすることができている」といった声が上がった。

5.ワーケーションの導入は企業と従業員との関係強化につながる

ワーケーション後のアンケートにおいて、87%(15名中13名)がワーケーションを「取り入れている企業は従業員のことを熱心に考えてくれているのだと思う」と回答した。

働き方の多様性を認め、従業員のエンゲージメントを高めていく1つの施策としてワーケーションの導入も有効であることが示唆されている。

調査結果の詳細 健康開発財団調査結果

ワーケーション参加者に対し、フィジカル、メンタル両面から変化を計測。ストレスや疲れを評価する「自律神経バランス」、「唾液アミラーゼ活性」、動脈硬化の程度を評価する「末梢血液循環」、心身の健康度や症状を確認する「健康関連自己評価」(VAS)、心の健康状態を把握する「気分・精神調査」(POMS)、血圧、体温、運動機能、柔軟性、消化器症状(GSRS)など温泉による効果を計測。

ワ―ケーションの初日と3日目(最終日)に計測し、変化を観察した。

1.温泉地におけるワ―ケーションで自律神経バランスが改善
心拍変動に基づく自律神経バランス検査の結果、被験者4人のうち3人で改善が確認された。

3名は初日に慢性ストレス、疲労状態が認められたが、最終日は自律神経バランスが理想的な状態(青いゾーン中央)に近づいた。温泉地滞在がリラクゼーション、疲労回復をもたらした結果と推察される。

2.末端血液循環の見える化で血管老化度の改善を確認
指先につけるセンサーで末梢血液循環を測定し、血管老化度分析を行った。

その結果、4人中3人で血管推定年齢の低下、末梢血管健康度の改善、末端循環老化速度の減速が観察された。

毎日の温泉入浴でもたらされる血液循環の改善(温熱効果に起因する)により、末梢血液循環に良い影響がもたらされたことが示唆された。(一回の温泉地滞在で血管が若返ることを示すものではない)

3.健康関連自己評価に基づく「心身の状態」の改善
健康関連自己評価は、疫学・公衆衛生学で幅広く使われる指標である。

ワ―ケーション前後で12の項目についてVAS評価を求めたところ、10項目で改善が認められた。健康状態や幸福感、リラックス、リフレッシュは、温泉滞在を通じた総合的な効果と推察される。

疲れ、肩こり、腰痛、手足の冷え、睡眠の改善は、温泉入浴による温熱効果でもたらされたと考えられる。

4.「感情・気分」の改善
新しい生活様式(特に働き方)において、ワーケーションが気分・メンタル面での健康維持に寄与するかを確認するために、国際的に用いられているPOMSで評価を行った。

その結果、ネガティブな感情・気分である混乱や疲労感は低減し、ポジティブな感情・気分である活気・活力、友好的気分の改善が認められた。要因として、「温泉浴」に加えて滞在先での「おもてなし」や非日常空間での休養、JMACアンケートに見られたように自然の中での気分転換、(仕事仲間との)チームの絆が深まる等の相乗効果などが考えられる。

BIGLOBEは、2021年7月30日までBIGLOBEが宿泊費を負担するワーケーション実証実験「TRY ONSEN WORKATION プログラム」において、参加企業を募集しているとのことだ。