1980年~2000年ころまでに生まれたミレニアル世代の若手社員との、価値観のギャップに苦しんだことのある上司は多いのではないだろうか。

かれらは物心がついたときからスマートフォンやタブレットなどのデジタル機器に囲まれ、FacebookやTwitterなどのSNSで頻繁にコミュニケーションを行い、多様な価値観を育んでいる。そんな若手社員は、現在の上司をどのようにみているのただろうか。

若手社員の7割超が「上司を尊敬している」

人事BPR・BPO(採用・人事・労務・システム)のレジェンダ・コーポレーション株式会社は、2010年~2018年に新卒採用された若手社員5,996名に対して意識調査を行い、743名から回答を得た。

この調査によると「上司を尊敬しているか」との問いに対して、「尊敬している(32.4%)」もしくは「やや尊敬している(42.8%)」との回答は全体の7割を超え、「尊敬していない(7.8%)」「あまり尊敬していない(17.0%)」と答えた若手社員よりはるかに多かった。

ミレニアル世代より上の世代の上司は若手社員とのコミュニケーションに悩んでいることも多いと想定されるが、実際のところは若手社員の多くが上司を信頼し良好な関係を築けているようだ。これはミレニアル世代より上の世代にとっては、喜ばしい結果ではないだろうか。

上司に求める人間力は「コミュニケーションスキル」と「リーダーシップ」

同調査では、上司に求める人間力について、若手社員に重視するものを複数の選択肢から3つまで選んでもらっている。

その結果、「コミュニケーションスキル(51.9%)」と「リーダーシップ(51.2%)」のように職場での円滑な人間関係の構築に必要と考えられるスキルが最も多く、「専門的な知識・ノウハウ(39.9%)」「論理的思考力(36.5%)」などの回答を引き離した。ミレニアル世代の若手社員は、よりスムーズな人間関係を築ける上司を求めているということだろう。

上司との会話や面談で5割超の若手社員が「モチベーションが上がる」

若手社員に上司との会話や面談によって仕事のモチベーションが向上するか聞いたところ、全体の50.9%が「モチベーションが上がる」と答え、「どちらともいえない(36.3%)」がそれに続いた。

一方で同じ質問に「上がらない」と、ネガティブな回答をえらんだ社員は全体の12.8%にとどまっている。これらを総合して考えると多くの場合において、ミレニアル世代の若手社員のモチベーション向上に、上司の会話や面談が役立っているか役立つ可能性があると言えそうだ。

心を動かされた上司の言葉は「キミならできる」「期待している」

同調査では、具体的にどのような上司の言葉に心を動かされたか、若手社員に自由に記入してもらっている。結果、「キミならできる」「期待している」「あなたなら大丈夫」のように上司から信頼感を示してもらえる言葉が最も多く上がった。上司に信じてもらうことが、ミレニアル世代の多くの若手社員にとって、モチベーションの源になっているようだ。

ミレニアル世代の理想の上司像は「ボス充」

同調査では若手社員の7割が上司を尊敬しているということが明らかになった。若手社員を含むこれからの時代を担うミレニアル世代はどのような上司を理想としているのだろうか。

株式会社リクルートマネジメントソリューションズはリクルートホールディングス主催の「2018年のトレンド予測」発表会において、2018年にボス充の傾向が強くなるだろうと予測した。ボス充とは、上司が仕事だけに打ち込むのでなく、プライベートを重視し、社外活動を充実させている状況を表す用語だ。

根拠としているのが、同社の行ったアンケート調査の結果だ。たとえば「仕事人間な上司より社外活動が充実しているほうが人間的な魅力があると思うか」という質問について、「とてもあてはまる」「あてはまる」と回答した40~50代の管理職が32.2%だったのに対し、20代(ミレニアル世代)は40.2%におよんだ。

また「人間的な幅が広い」「専門性が高い」のどちらが理想的な上司にはてはまるか聞いたところ、「人間的な幅が広い」をえらんだ40~50代が45.2%だったのに対し、20代一般社員は60.8%。また「早く帰る」「遅くまで仕事」のどちらが理想的な上司かとの問いに関しては、「早く帰る」をえらんだ40~50代が58.0%だったのに対し、20代一般社員は75.3%にものぼっている。

これらの結果から、ミレニアル世代の若手社員にとっては、仕事に打ち込み朝から夜まで職場にいる専門性の高い上司より、早く帰って豊かなプライベート生活を過ごしている上司の方が理想的であり、ボス充な状態を望んでいることが分かる。

ミレニアル世代の若手社員の価値観を理解することが求められる

今回紹介した2つの調査では、人間関係の構築力に優れ、社外活動が充実したいわゆる「ボス充」を体現してくれる上司を、今のミレニアル世代の若手社員の多くが理想的と考えていることが分かった。また彼ら彼女らの多くが、上司とのコミュニケーションによってモチベーションを維持・向上させていることも意識調査の回答には表れている。

若手社員の価値観は時代によって変わるものだ。ミレニアル世代の若手社員を部下に持つ上司は、彼らの価値観をよく理解し適切なコミュニケーションをとることが求められるだろう。

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