2050年ごろ海中では魚よりプラスチックゴミの方が多くなるかもしれないーー。

これは世界経済フォーラム、マッキンゼー、エレン・マッカーサー財団がまとめたレポートからの引用だ。近年ますます消費者の環境意識は高まり、プラスチックゴミが海洋生物に大きな悪影響を及ぼすということも広く知られるようになった

このような現状から、プラスチックゴミ問題に対する早急なアクションが求められるようになる中、先日スターバックスが2020年までに、マクドナルドは2025年までにプラスチック製ストローの使用を廃止するとアナウンスしたことは大きな話題となった。今後はより「脱・プラスチック」の流れが世界的に加速していくことが予測される。

そこで今、世界中の起業、投資家からの注目度が急上昇しているのが、従来のプラスチック製に代わる新素材の「オルタナティブ・ストロー」だ。本記事ではこの新産業におけるいくつかな主な潮流を紹介する。

スタバは紙やビルド・イン方式を採用

前述のとおり、プラスチック製ストローの使用廃止を決断したスターバックス。現在アメリカの多くの店舗では、エスプレッソドリンクやアイスティーなど冷たい飲み物の大半に対して、飲み口の部分が突起している蓋を採用している。


赤ちゃん用のボトル(Sippy Cup)と似ていることから「Adult Sippy Cup」と形容される独特の蓋(筆者撮影)

ストローなしでも快適に飲むことができる構造になっており、筆者の自宅近くのスターバックスで早速この蓋を体験したところ、車の運転中でもこぼれることなく使用上全く問題はなかった。また、フラペチーノなどストローが必要なものに関しては紙ストローやリサイクル可能なプラスチック製のものに置き換えるとのことだ。

「わら製」に「竹製」100%自然由来も人気

植物由来のストローもエコ度の高い原材料としてナチュラリストや子ども用として人気だ。

ストローの語源となったstraw(わら)を原材料としたストローの生産を手掛けるのが、アメリカのスタートアップ「HAY!STRAWS」。わら製の一番のメリットとして、100%自然由来であることから使用後に生ゴミと一緒に廃棄できる点がある。また紙のように使っている途中で水分が染みたりしないので、同社は「完璧なストロー」だと胸を張る。デメリットを挙げると、人によってはアレルギーに注意しなくてはいけない点だろう。


「プラスチックストローは最悪!」吸う・最悪の二つの意味のあるsuckをかけているユーモアあふれるHAY!STRAWSのウェブサイト

同社のウェブサイトによると、アメリカでは毎日約5億本のストローが消費されているという現状や、鼻にストローが刺さり苦しむカメの動画に衝撃を受け、普段の生活から使い捨てプラスチックを使わない生活を心がけていたことが同製品の開発に繋がったという。

価格は100本入りで通常サイズが8USドル(約900円)でカクテル用が7USドル(約800円)。一方アマゾンでプラスチックストローを見てみると、同量の100本入りで5.99USドル(約670円)や500本入りで7.35USドル(約830円)といったものが売れ筋。生産プロセスの違いや流通量の差からどうしても割高になってしまうのが現状だ。

しかしHAY!STRAWSは「プラスチックからHAY!STRAWSに切り替えてくれることにワクワクしているよ!ようこそストローレボリューションへ」と呼び掛けており、同社のストローに切り替えるアメリカ国内の飲食店は少なくないようだ。

同じくアメリカのオレゴン州・ポートランドベースの「Bambu」は、社名の通り竹を使った食器を手がけるスタートアップだ。オーガニック志向の消費者に大きな支持を得る大手スーパーマーケットのホールフーズマーケットでも販売されており、同社のストローを始めとして皿やカトラリーなど全てがリユーサブルなので、ピクニックやバーベキューなど野外用としても人気だ。


飲み物に馴染む竹製のストロー(Bambu公式Facebookページより)

価格は6本入りの通常サイズが9.50USドル(約1,000円)、カクテル用が8.50USドル(約960円)だが、繰り返し使えることを考えると決して高い値段ではないだろう。

続いて、ポータブルのストロー「Final Straw」はカナダのデュオEmma CohenとMiles Pepperが開発したもの。特筆すべきは車の鍵とほぼ同じ大きさのケースに収納しどこへでも持ち運ぶことが可能な点。ステンレススチール製で、手入れもブラシと洗剤で洗えば清潔に保てるため、半永久的に使用することができる。


Final Straw

Final StrawはクラウドファンディングサイトのKickstarterで180万USドル(約2億円)を調達し、現在プレオーダーを受付中。アーリーバード価格は20USドル(約2,300円)で、配送は今年2018年の11月を予定。公式Facebookページやインスタグラムアカウントでは「これぞまさに探していたもの」「あなたの孫はきっとあなたに感謝するわね」といった同製品に対する賞賛の声が多数投稿されている。

「食後に食べられるストロー」も

オルタナティブ・ストローの中には「食べられるストロー」という変わり種も。この一風変わったストロー「Lolistraw」の開発を手掛けるのは、アメリカのスタートアップ「Loliware」だ。

果物の皮のような食感のカラフルなストローは海藻をベースに作らており、他の飲み物との組み合わせを楽しめるようにストロー自体に風味や栄養を持たせているという。「例えばアイスコーヒーを飲むときにバニラやキャラメル味のストローだったら、楽しいでしょ」と創始者のChelsea Briganti氏はFastCompany誌に話す。


黒・青・紫・ピンク・緑とカラフルなバリエーション、味はそれぞれ異なる(Lolistraw公式Facebookページより)

さらに「プラスチックは環境に悪いからストローは使えません!じゃなくて、思わず使いたくなるような、サステイナブルでポジティブなものを作りたかった」とも。確かに、食事と飲み物のペアリングは存在するが、ストローまでも食事の一部にして楽しむというのは何とも新しくユニークな発想だ。また、コーンスターチで固めてあるため、ストローを食べない場合も自宅で普通に生ゴミとして処理することが可能だという。

同社はKickstarterと、同じくクラウドファンディングサイトの「Indiegogo」で78,000USドル(約900万円)の資金調達に成功しており、今年2018年8月の発売予定を控え、現在プレオーダーを受付中。価格は10本入りが10USドル(約1,100円)。

ここまで紹介したように、オルタナティブ・ストローは、プラスチック製よりデザイン性に富むものが多く、ファッションやアートとの親和性もよい。

採用することで、企業はサステイナブルなイメージや独自の世界観を演出できたり、消費者は自分のエコ意識を表現したりできる。アピールするツールにもなるだろう。

オルタナティブ・ストローは、今後、一大産業として確立していくだろうか。少なくとも、今回スターバックスやマクドナルドという世界的企業が脱・プラスチックの一歩を踏み出したことで、消費者に「これからはストローを選ぶ時代だ」ということを気づかせてくれたことは間違いない。

文:橋本沙織
編集:岡徳之(Livit