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中学生のころ、理科の先生が夜の学校で星空観察会を開いてくれた。昼間は人が溢れている校内は静まり返り、夜は全く違う空間のようだった。
見晴らしのいい丘の上に立つ学校の屋上は、夜になると即席の天体観測所になる。次の日からは昼間の学校ですら、なんだか新鮮に写った。
同じ場所でも時間帯を変えれば、全く異なる印象を持ったり、使い方ができたりする。そう思わせてくれる多様な側面を持った施設がノルウェーにオープンする。
海中レストランと研究センターを兼ねる「Under」
ノルウェー沿岸の最南端に2019年にオープンする 「Under」 は、ヨーロッパではじめての海中レストラン。営業時間外は海洋生物研究センターにもなる施設だ。
11m x 4mの大きなアクリルの窓から、海中の様子をつぶさに観察することができ、レストラン営業時は、幻想的な水面下の世界を体験しながら食事を堪能できる。
Underの食材は、地産地消にこだわっている。ウェブサイトには「われわれのゴールは、ノルウェー沿岸の生態系を見せること。そして、適切な海の観光をつくりだすことである」と記載されている。
大きな直方体をした建築物が陸地から海底まで斜めに横たわっているように見えるが、中は3つのフロアに別れている。入り口のフロアは陸上、陸地と海中の境目のフロアにはシャンパンバーを置いた。そして、海中がレストランのフロアとなっており、100人ほどを収容できる。
海洋条件の変化による圧力や衝撃に耐えられるようにメートル単位の分厚いコンクリート壁に覆われている。外壁は時間の経過とともに、二枚貝が付着できるようなっていて、海中の環境変化にも考慮されているのが特徴だ。
ノルウェーは国を挙げて観光資源である「海」の価値を高めようと取り組んできた。Underを運営しているのは民間企業だが、その視点を忘れていない。料理と研究の両方の視点から海にアプローチすることで、その存在意義と価値を深めている。
既存空間を飲食目的で利用するケースも
Underがレストランと研究施設を併設したように、食を取り巻く空間はマルチユースが盛んになってきている。そのヒントになる事例が、国内外に存在している。
渋谷にある人気のカレー屋「ケニックカレー」は、渋谷のBAR FOXYの使っていない昼の時間帯を間借りする形で、店舗を運営していた。飲食店を始めたいが、いきなりお店を構えるほどそこにコミットできないという場合でも、空き時間を活用すれば小さく始められる。
実際、ケニックカレーは口コミで話題となり、しばらく空き時間で運営した後、クラウドファンディングで成功を収め、実店舗を作るための挑戦へとステップアップしていった。
最近では、オフィス空間のカフェ化が進んでいる。リラックスするための設備やキッチンや美味しいコーヒーを入れるお店が出店しているケースもある。オフィスがカフェ化しているのであれば、夜間の使わない時間を飲食店として運営しようとする二毛作に着手したスタートアップもある。
グルメメディアを運営する株式会社favyは、昼はオフィスとして利用している空間を夜は飲食店として利用し「C by favy」という店舗をオープン。空間にかかる初期コストや運営費を安く抑えた。発想を柔軟にすれば、こういった空間の使い方もあり得る。
飲食店の空き時間をコワーキング化するサービス
飲食店が、その空き時間を別の目的で利用するケースもある。2016年7月にニューヨークでリリースされた 「Spacious」 は、昼間は営業していないレストランと提携し、コワーキングスペースとして利用できるようにするサービスだ。営業時間外のレストランという見過ごされてきた価値に注目し、空間の別の利用方法を開拓している。
ユーザーはSpaciousに登録し、月に99ドルを支払うことで、提携しているレストランをコワーキングスペースとして利用できる。現在はニューヨーク市内で約15箇所のレストランと提携を結んでいる。朝8時30分からコーワーキングスペースとして利用できるレストランもある。多くのレストランは夜間営業の準備のために、17時にはスペースを閉じているようだ。
空間のマルチユースは、新しく飲食店を始めたいプレイヤーにメリットが大きい。いきなり場を保有するのではなく、間借りすることで、自分のやりたいことを小さく試すことができる。
その空間を保有している会社や店舗としても、営業時間外の店舗やオフィスを活用できることはメリットとなる。
その価値を有効活用できていないものが、身近に存在することがある。すでに空間を所有している事業者は、「使われていない時間」に注目することで、新たな活用のヒントを見つけられるかもしれない。