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「マイナンバーカード」という言葉に、どれくらい身近さを感じるだろうか?多くの人は、自分にはあまり関係がないと考えているのではないだろうか。
2015年10月よりマイナンバー制度が導入されたことで、年金、雇用保険、医療保険の手続や生活保護、児童手当その他福祉の給付、確定申告などの税の手続で申請書などにマイナンバーの記載が求められるようになった。また、社会保険などの申請で、勤務先にマイナンバーを提出するといったケースも出てきた。
マイナンバーとは日本に住民票を持つ全ての人に付与される12桁の番号であり、行政手続において早く正確な事務処理に活用される。一方、マイナンバーカードは、マイナンバーが記載された顔写真やICチップ付きのプラスチック製のカードを指す。正しいマイナンバーの証明のほか、本人確認書類として活用でき、行政サービスへの申請手続がオンラインでできるなど、国民の暮らしが便利になるツールとして注目されている。
一方で、総務省の調査によると、2020年6月1日時点のマイナンバーカード普及率(人口に対する交付率)は約17%と、利用場面が多い割に定着していないのが現状だ。
しかし、実際にマイナンバーカードを取得することでさまざまなメリットがあり、新しい体験価値を得られることをご存知だろうか。
マイナンバーカードの最も大きなメリットは、先ほども触れた通り、行政サービスに関する手続が簡単になることだろう。
例えば、住民票の写しの取得や印鑑登録証明書の発行がすぐに必要だが、平日は仕事が忙しく市区町村の窓口が空いている時間帯になかなか行けない。本人が直接取りに行けない場合は代理人を立てることもできるが、その手続もなかなか進まない…。
そのような状況でもマイナンバーカードさえ持っていれば、これまで時間のかかっていた手続に関してもコンビニなどで取得が可能になり、大幅な時間短縮が期待できるのだ。
(* ご自身の住む市区町村のコンビニが交付サービスを実施しているかどうかは下記URLから確認してみよう)
https://www.lg-waps.go.jp/01-04.html(2020/6/23時点)
またその他に、2020年9月から始まる予定の、1人上限5,000円分のポイントがもらえるマイナポイント施策が今後始まる点も注目だ。
マイナンバーカードの快進撃がこれから始まる。
知っておくべきマイナンバーカードとは
マイナンバーカードのメリットを解説する前に、制度の概要について解説しよう。
マイナンバー制度とは
そもそも「マイナンバー」とは、日本に住民票を有する国民1人1人に付与される、12桁の番号だ。
このマイナンバーを利用する場面は、
・税
・社会保障
・災害対策
の3つの分野。
制度の目的としては、国民の利便性を高め、公平公正な社会、行政における作業の効率化を実現する社会基盤をつくることを目指している。
※詳しくは、マイナンバーカード総合サイト(地方公共団体情報システム機構)(2020/6/25時点)を参照
マイナンバーカードとは
「マイナンバーカード」は、2016年1月から交付開始となったカードだ。
氏名や住所、生年月日、性別、マイナンバーと本人の顔写真などが表示されており、公的な本人確認書類として活用可能だ。そのため、運転免許証やパスポートが手元にない、という人にとっては本人確認書類としても使えるカードとなる。その他のメリットについては本記事後半にて触れる。
マイナンバーカードの取得方法3つ
マイナンバーカードを取得するには、次の3つの方法がある。
1.Webでの申請
マイナンバーカードはスマートフォンやパソコンからも申請が可能だ。
「個人番号通知書」または、郵送された通知カードの下に付いている「個人番号カード交付申請書」には、QRコードと申請書IDが記載されており、これらを使ってスマートフォン・パソコンから申請ができる。
スマートフォンの場合は、カメラで交付申請書のQRコードを読み取り、申請用Webサイトにアクセスしてメールアドレスを登録。登録されたメールアドレス宛に通知される申請者専用Webサイトにアクセスし、顔写真を登録。画面に従って必要事項を入力し送信する。
パソコンの場合は、申請用Webサイトにアクセスしてメールアドレスを登録。登録されたメールアドレス宛に通知される申請者専用Webサイトにアクセスし、顔写真を登録。画面に従って必要事項を入力したら送信。なお、この方法では交付申請書または個人番号通知書に記載されている申請書ID(半角数字23桁)が必要だ。
顔写真はスマートフォンのカメラや、デジタルカメラで撮影したデータを添付して、申請を行う。なお、スマートフォンであれば、自分で撮影した写真をすぐに添付できるので、簡単で便利である。
2.まちなかの証明用写真機での申請
あまり知られていないかもしれないが、駅前やまちなかの証明用写真機でも申請ができる。
まちなかの証明用写真機のタッチパネルから「個人番号カード申請」の項目を選択し、個人番号カード交付申請書または個人番号通知書にあるQRコードを読み取らせ、必要事項を入力。顔写真を撮影して送信する。
3.郵便での申請
郵便での申請には、「個人番号カード交付申請書」の該当箇所に顔写真を貼り、氏名、電話番号などの必要事項を記入し、郵便で申請を行う。
※「個人番号カード交付申請書」は、専用サイトからもダウンロードできる。
(※交付申請後、受け取りまでにおおむね1か月程度かかる。交付準備ができたことを知らせる交付通知書が届いたら、市区町村の窓口へ必要書類を持参すれば、マイナンバーカードを受け取ることができる。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から、地域の状況に応じて、適切な時期に受け取りに行くことオススメする。詳細はお住まいの市区町村のホームページから確認可能。)
※詳細はマイナンバーカードの申請方法
マイナンバーカード総合サイト(地方公共団体情報システム機構)(2020/6/25時点)
マイナンバーカードを持つべき6つの理由
冒頭でも述べたが、マイナンバーカードを持つ最大のメリットは、行政手続をオンラインでできるため、負担を軽減してくれる点だ。
住民票の写しや印鑑登録証明書といった各種証明書の取得だけでなく、社会保険や年金手続もオンラインにより簡素化してくれる。
ビジネスパーソンにとって、手続をするためだけに休暇を取るなどして、市区町村の窓口に行かなければならないというのは、大きな悩みの種だろう。また、確定申告などの時期によっては、税務署の窓口などが混んで想定通りの時間で用事が終わらないというケースもよくある。
マイナンバーカードは、そうした状況や悩みを解消してくれる可能性を持っている。
ここでは、マイナンバーカードを持つべき理由を6つ紹介しよう。
メリット1 マイナンバーの証明書になる
就職や転職時など、最近ではさまざまな場面でマイナンバーの提示が求められるようになってきている。
そこで、自身のマイナンバーを証明するのに最も便利なのが、マイナンバーカードだ。
マイナンバーを使う手続では、マイナンバーの確認書類と顔写真付きの本人確認書類が必要だが、マイナンバーカードなら、マイナンバーの提示と本人確認を1枚で済ませることができる。
なお、5月25日以降、通知カードの廃止に伴い、券面事項に変更が生じた際には通知カードは使えなくなるので、今後はマイナンバーカードがあると便利だ。
メリット2 公的な本人確認書類になる
日常生活の場面においても、携帯電話の契約や金融機関での口座開設、パスポート取得時など、顔写真付き本人確認書類の提示を求められる場面は多々ある。
運転免許証を持っていない人は、パスポートを出したり、面倒さを感じたことはないだろうか。
マイナンバーカードを取得すれば、運転免許証やパスポートと同様に、公的な本人確認書類として活用することが可能だ。さらにマイナンバーカードは、交付手数料無料で取得することができる。
メリット3 コンビニで各種証明書が取得可能
マイナンバーカードがあれば、わざわざ市区町村の窓口に行かなくても、近場のコンビニにある端末にマイナンバーカードをかざすだけで、住民票の写しや印鑑登録証明書などを簡単に取得することができるのだ。時間に余裕がない人にとっては、メリットが大きいだろう。
※人口ベースで1億人以上が対象となる市区町村がコンビニ交付サービスを実施しているが、ご自身の住む市区町村がコンビニ交付サービスを実施しているかどうかは下記URLから確認してみよう。
https://www.lg-waps.go.jp/01-04.html(2020/6/23時点)
メリット4 行政手続をオンラインで申請
行政手続がオンライン上でできる、というメリットもある。
例えば、年度末の確定申告では、電子証明書が入ったマイナンバーカードと、パソコン、カードリーダライタがあれば、e-Tax(電子申告)を行うことが可能だ。
また、2019年申告分からは、マイナンバーカード読み取り対応のスマートフォンを使って申告ができる。
インターネット上で手続を行うことで、税務署に行ったものの何時間も待つ、ということにならずに済む。
メリット5 オンラインでの口座開設に利用できる
マイナンバーカードは、口座開設時にも有用だ。証券口座の開設や住宅ローン契約をオンラインで行う際の本人確認に、マイナンバーカードを活用することができる。
運転免許証やパスポートの写しを郵送する必要がなくなり、スピーディーに手続を行うことが可能だ。
メリット6 健康保険証として利用できるようになる
健康保険証として利用するための事前登録をすると、2021年3月(予定)からマイナンバーカードが健康保険証として利用できるようになる。(マイナポイントの申込時に、健康保険証の利用登録もできます)
マイナンバーカードを使えば、就職や転職、引っ越ししても保険証の切り替えを待たずに初めて行く病院でも受診することができる。また、オンラインによる医療保険資格の確認により、高齢受給者証や高額療養費の限度額適用認定証などの書類の持参が不要になるなどのメリットがある。
さらに、安全・安心で利便性の高いデジタル社会の構築に向け、マイナンバーカードを基盤として、既存の各種カード、お薬手帳などとの一体化が推進されている。
※マイナンバーカードを活用した各種カード等のデジタル化等に向けた工程表
https://cio.go.jp/digi-gov-actionplan(2019/12/20 改定(閣議決定)別紙4)
付与率25%、上限5,000円分のポイントがもらえる「マイナポイント制度」とは?
現時点でのメリットだけでなく、今後の利便性の向上が期待されるマイナンバーカードだが、2020年9月から「マイナポイント」という制度がスタートする。
マイナポイントとは、事業に登録されたキャッシュレス決済サービスを選択してひも付けることで、利用金額に応じて、選択したキャッシュレス決済サービスにポイントが付与される仕組みだ。
マイナポイント最大の特徴は、そのポイント付与率(いつでも25%)だ。例えば、2万円のお買い物を対象のキャッシュレス決済サービスで支払った場合、上限5,000円分のポイントが付与される計算となる。
2020年6月19日時点で、対象となっているキャッシュレス決済サービスは以下の通り。
なお、「マイナポイント」という名称でポイントが付くわけではなく、QRコード決済、ICカード/電子マネー、クレジットカードなど、キャッシュレス決済サービスごとのポイントとして付与される。
これらのキャッシュレス決済サービスが、独自のポイント還元・付与のキャンペーンを行っている場合は、マイナポイント分+キャッシュレス決済サービス独自に還元・付与しているポイントの双方が獲得できる点も見逃せないポイントだ。
近年、キャッシュレス決済サービスが一般に広まり、キャッシュレス社会を目指す日本政府においても、その流れを逃さず捉えようという思いがある。
ちなみに、ポイント付与は、2020年9月から始まり、申込みは2020年7月から開始される。なお、マイナポイントの予約は既に始まっているため、マイナンバーカードをお持ちの方は早めに予約することをお勧めする。
マイナポイントの利用方法
マイナポイントを利用するためには、マイナンバーカードの取得と、マイナポイントの予約と申込みを行う必要がある。予約と申込みをしてしまえば、その後は特に手続なく9月から利用できるハードルの低さも特徴だ。
マイナポイント利用のための、具体的な手順は以下の通り。
※マイナポイントの予約者数が予算の上限に達した場合には、マイナポイントの予約を締め切る可能性があります
1 マイナンバーカードを取得する
マイナンバーカードをまだ取得していない、という人は、前述の申請方法にのっとってマイナンバーカードの交付申請を行う。
申請から取得までは、おおむね1カ月必要となる。
2 マイナポイントを予約する
マイナポイントを利用するためには、マイナポイントを予約する必要がある。
スマートフォンやパソコンから予約可能だが、今回はスマートフォンでの予約方法を紹介する。
<予約手順(iPhone端末の場合)>
- App Storeで、「マイナポイント」アプリをインストールしアプリを起動
- 「マイナポイントの予約」を選択し、マイナンバーカード申請時or受け取り時に設定した数字4桁のパスワード(暗証番号)を入力
- マイナンバーカードをスマートフォンで読み取り予約完了
※Android端末の場合はGoogle Playで「マイナポイント」アプリをインストール。また、2と3の作業が逆になり、マイナンバーカードを読み取ってから数字4桁のパスワード(暗証番号)を入力する。
スマートフォンやパソコンをお持ちでない方は、市区町村や民間のマイナポイント手続スポットもあるため、以下のサイトを参考にして欲しい。
マイナポイント手続スポット検索(2020/6/25時点)
3 マイナポイントを申込む(7月以降)
マイナポイントアプリで自分が利用するキャッシュレス決済サービスを選択。
4 選択したキャッシュレス決済サービスを利用する
チャージまたは購入を行うことで、キャッシュレス決済サービスから、ポイントが付与される。
マイナポイントの付与タイミングや有効期限は、決済事業者により異なる。
マイナンバーカードは1人1枚取得することができるため、仮に夫婦が利用すれば2人合わせて上限1万円分のポイントが付与される計算だ(※夫婦であっても1つのキャッシュレス決済サービスに2人以上のポイントの合算はできない点に注意)。獲得したマイナポイントは、食事をしたり家具を買ったりと、キャッシュレス決済サービスの加盟店で自由に利用できる点も消費者側にメリットの大きい取り組みだといえるだろう。
デジタル・ガバメント実現に向けた日本の取り組み
ここまでは、私たちが日常で扱うマイナンバーカードのメリットなどについて触れてきた。この章ではもう少し視点を広げ、日本と電子政府(デジタル・ガバメント)について考えてみよう。
「デジタル・ガバメント」が行政を変える
近年、Googleやfacebookなどの世界的なインターネットサービスが巨大化し、あらゆる場面でデジタル化の流れが加速してきていることは自明だろう。
こうした潮流は、ビジネスシーンだけで起きているわけではない。本記事でも述べているように、日本の行政においてもアナログだった作業をデジタル化する重要性は増してきている。
デジタル技術を活用し、行政の在り方そのものを変革することを、「デジタル・ガバメント」という。
2018年の成長戦略において、「行政からの生産性革命」と銘打った目標が掲げられ、2019年5月に成立した「デジタル手続法」により、日本政府は「デジタル・ガバメント」の実現を目指している。同法には、行政手続を基本的にオンラインで行うほか、マイナンバーカードなどをこれまで以上に活用すること、民間との連携を強化していくこと、などが盛り込まれている。
この方針は、今後も加速していく見通しだ。
デジタル・ガバメント推進の目的
では、なぜ、行政手続を電子化していく必要があるのだろうか。
その理由は、大きく分けて3つある。
1つ目は、行政サービスにおける国民の利便性向上だ。マイナンバーカード解説の章でも触れたように、電子化することでこれまで国民にとって負担となっていた限定的な場所、時間でしか利用できなかった行政手続を、インターネットによって、いつどこにいても実行することができるようになる。
2つ目は、セキュリティー・行政の透明化だ。これまで紙で管理していた情報をデジタル化することで、情報の検索性やセキュリティー面での強化が期待できる。また、国民に対して広く情報を開示し、政策を決める過程を伝えることも可能なので、行政への国民理解を促進することにも寄与するだろう。
そして3つ目は、行政サービスにおけるコスト削減だ。今後、日本は少子高齢化の影響で、働き手が少なくなることが分かっている。そのような状況の中では、現在の行政の在り方を変えていかなければ、行政サービスの質を維持していくのは難しいという考えだ。
電子化やインターネット技術によって、少ない人数でも充実した行政サービスを国民に提供していくためには、この目標の実現は必須となる。
マイナンバーカードから始まる、デジタル・ガバメント
日本のデジタル・ガバメントへの取り組みはすでにいくつか進んでいるが、ここではマイナンバーカードを活用したケースを紹介する。
徳島県におけるマイナンバーカードを活用した職員証/セキュリティー強化を実施した事例
職員証(マイナンバーカードの顔写真部分と氏名部分が透明になっているもの)とマイナンバーカードを重ね合わせ、専用のカードケースに挿入することで、顔写真入り職員証として使用。なお、マイナンバーを外から見られないように、カードケースの裏面は非透過になっている。
また、マイナンバーカードの空き領域へ利用者認識のためのアプリケーションを組み込むことで、マイナンバーカードをパソコンへのログイン、特定のセキュリティー管理区域への入室時の本人確認に活用している。
同時にパスワードによる認証では、同じパスワードの使いまわし等、セキュリティー強度低下のリスクが常に存在することを解消している。
群馬県前橋市の活用事例
前橋市では、マイナンバーカードを活用し、高齢者など交通弱者に対し、タクシー利用の際の運賃補助や利用資格確認、精算手続を簡易化している。
従来は、利用登録証と利用券の2つを持ち歩く必要があったが、マイナンバーカード1枚に集約することができるため、利用が簡単になった。また、それまで発行に時間を要していた利用券が、マイナンバーカードをかざすだけで利用できるようになったという。
マイナンバーカードを活用することで、利用者、タクシー業者、市役所の3者において、事務作業削減につながった。
このように、デジタル・ガバメントの実現は、単純なコストカットのためではなく、国民に対して新たなイノベーションを生み出すための成長戦略ともいえるだろう。
より簡単に、よりよい社会へ向かうためのマイナンバーカード
運転免許証があるから取得する気が進まない、などとマイナンバーカードに必要性を感じていなかった人も多いのではないだろうか。
しかし、一度マイナンバーカードを取得してしまえば、わざわざ市区町村の窓口に行く必要がなく、いつでも好きなときに、どこからでも行政手続ができるようになる。その手軽さを一度味わってしまったら、もう戻ることはできないだろう。
議論はまだまだ発展段階にはあるが、デジタル・ガバメントの実現のためにも、マイナンバーカードによって社会がより良い方向へアップグレードしていく未来はすぐそこまできている。
文:北浦 のぞみ