労働市場における男女の割合が同じになると2025年までに世界全体のGDPに12兆ドル(約1,300兆円)分が追加される。マッキンゼーが2015年に発表したレポートで示した数値であり、12兆ドルとは世界GDPの11%に相当する。同レポートではまた、ベストシナリオが実現すれば12兆ドルではなく、世界GDPの26%に相当する28兆ドルになる可能性も指摘している。
労働市場のなかでも、テクノロジー産業への女性参画は近年世界中で議論されることが多くなっているグローバルアジェンダだ。米国のSTEM(科学・テクノロジー・エンジニアリング・数学)分野では、女性の割合が25%といわれており、この割合を高める取り組みが増えている。
この流れを受けてドローン産業でも、女性の参画を促す取り組みが登場している。
米国などで登場、ドローン産業で活躍する女性を増やすコミュニティ
「Women & Drones」は、ドローン産業で活躍する女性たちが立ち上げたドローンコミュニティだ。ドローン産業への女性参画を促すための情報配信や教育、イベントを実施している。
創設者でCEOのシャロン・ロスマークさんは、FAA(米国連邦航空局)認定のパイロットだ。STEM分野、特にドローン産業の女性の少なさに危機感を覚え、2016年末に同コミュニティを創設した。
ロスマークさんの考えには、ドローン産業で活躍する多くの女性が賛同、Women & Dronesのアドバイザーとして名を連ねている。アドバイザーのウェンディー・エリクソンさんは、FAA認定パイロットであり、エミー賞を受賞したジャーナリスト。カーマイン・ミーンズさんは、ニュース番組でのドローン空撮を専門とするFAA認定パイロット、また女性のための空撮コミュニティ「Drone Girl Photography」の主催者でもある。
このほかにドローン関連企業を立ち上げた女性起業家や航空関連教育の専門家など多様な分野のアドバイザーが名を連ねている。
「Women & Drones」
Women & Dronesでは、ドローン産業で活躍する女性のストーリーをポッドキャストや記事で配信している。女性のロールモデルが少ないといわれるドローン産業だが、こうしたストーリーを伝えることで女性読者がドローン産業でのキャリアを考えることを促している。
これまでに紹介されたのは、ウォール・ストリート・ジャーナルのSNSエディターであり、「TheDroneGirl.com」を運営するサリー・フレンチさん、ドローン企業Trumbull Unmannedを立ち上げた元空軍パラシュート部隊のダイアン・ギベンズさん、ドローン企業CyPhy Worksを立ち上げたヘレン・グレイナーさんなど、ドローン産業で顕著な活躍を見せる女性たちだ。
「Women of Commercial Drones」もドローン産業への女性参画を促進するコミュニティだ。
同コミュニティの共同創設者グレッチェン・ウェストさんとリサ・エルマンさんは、米国の法律事務所Hogan Lovellsに属する法律の専門家でもある。Hogan Lovellsは、ドローンに関わる規制や知的財産、ビジネス戦略などへの需要の高まりから、事務所内にドローンを専門とするグループを発足させた。ウェストさんとエルマンさんはこのドローングループの担当者でもある。エンジニアリングや法律など、ドローンに関わるさまざま分野の女性プロフェッショナルのネットワーキングやイベントを開催している。
「Women of Commercial Drones」
一方オーストラリアでは、ドローンを含めたテクノロジー分野への女性参画を実践形式で促進しようというプログラム「SheFlies」が実施されている。
学校や地域コミュニティ、企業で女性向けのドローン操縦教室などを行っている。共同創設者のキャサリン・ボールさんとカレン・ジョイスさんはともに博士号を持つ研究者でもある。自分たちの経験を踏まえ、STEM分野に興味を持つ女性を増やそうと尽力している。
「SheFlies」
これまでのSTEM分野への女性参画を促進する取り組みでは「女性ロールモデルの設定」や「STEM分野キャリアに関する正しい情報の提示」などが効果ありと判明しているようだ。ドローンに関して、今回紹介してきた取り組みはまさにこれらの機能を果たしているといえるだろう。女性の参画でドローン産業にどのような変化が起こるのか、今後の展開に注目していきたい。