未上場で、評価額10億ドル(約1,000億円)以上のベンチャー企業は、その希少性から「ユニコーン」と呼ばれている。
このユニコーン企業が世界に何社あるのか知っているだろうか。CBインサイツによると世界には233社のユニコーン企業が存在するという。CBインサイツのランキング(2018年4月17日時点)では、評価額680億ドル(約7兆2,000億円)のUberが世界最大のユニコーン企業となっている。
しかし、2018年4月10日にウォール・ストリート・ジャーナルが、中国アリババ傘下のAnt Financialが90億ドルを調達、評価額が1,500億ドル(約16兆円)近くに達し、世界最大のユニコーン企業になったと報じた。
この出来事が象徴するように、いま中国では希少であるはずのユニコーン企業が続々誕生しており、その勢いに世界の投資家が注目するようになっている。
これまで代表的なユニコーン企業として名が挙げられることが多かったのは、Uber、Airbnb、SpaceX、Pinterestなどの米国企業だ。日本でもよく聞く名前で馴染みのある企業かもしれない。世界200社以上あるとされるユニコーン企業のうち、米国ユニコーン企業は100社以上を占めており、現在米国は世界最大のユニコーン企業輩出国と考えられている。
一方、中国発のユニコーン企業もこの数年で爆発的に増えており、米国を猛烈な勢いで追い抜こうとしている。
CBインサイツのユニコーン企業ランキングでは、世界233社のうち米国の企業は114社と最多。次いで多いのが中国で64社だ。米国と中国を合わせると178社となり、世界全体の76%以上を占める寡占状態になっていることが分かる。
また中国科学技術省・ハイテク産業開発センターなどがまとめたレポートでは、中国国内には164社のユニコーン企業が存在するとも指摘されている。
レポートごとにユニコーン企業数にばらつきがあるものの、米国と中国の寡占状態であることには変わりない。
中国ユニコーン企業トップ5
以下では、中国のユニコーン企業トップ5を紹介したい。
先ほど紹介したAnt Financialはオンライン支払いプラットフォーム「Alipay」を運営する金融サービス企業だ。Alipayといってもピンと来ないかもしれないが、ペイパルのようなモバイル/オンライン支払いサービスといえばイメージできるだろう。ペイパルのようなサービスと説明したが、Alipayは2013年にペイパルを抜き世界最大の支払いプラットフォームになったといわれている。
中国国内ではしばらく70〜80%の市場シェアを占め、独占状態を保っていた。最近では競合テンセントの「WeChat Pay」にシェアを奪われているものの、いまだ50%のシェアを占めているといわれている。
Ant Financialに次いで評価額が大きいのが中国国内配車アプリ最大手Didi Chuxing(滴滴出行)だ。評価額は560億ドルほどと見込まれている。Uberのようなサービスであるが、タクシー配車だけでなく、レンタカー、バス、シェア自転車など都市移動に関わるあらゆるサービスを提供している。ユーザー数は中国400都市に4億5,000万人以上いると推計されている。自動運転技術や人工知能の開発にも力を入れている。
中国で3番目に評価額が高いユニコーン企業はエレクトロニクス企業のXiaomiだ。評価額は460億ドル。スマートフォン、ラップトップPC、電化製品などハードウェアに加え、アプリも提供。2011年に同社初のスマホをリリース、2014年には中国最大のスマホ企業となった。
また、2017年にはスマホ企業として世界で5番目の規模に拡大。中国だけでなく、インド、マレーシア、シンガポール、インドネシア、フィリピン、南アフリカなどにも事業を拡大している。
Xiaomiウェブサイト
中国第4位のユニコーン企業は、評価額300億ドルのMeituan-Dianpingだ。提供するサービスはオンラインでのチケット販売、フードデリバリー、グループディスカウントなど多岐にわたる。さまざまなオンラインサービスを提供しているため、同社プラットフォームには国内企業数百万社が登録されているという。
また、月間アクティブユーザー数は2億人ほど、登録ユーザー数は6億人に上るという。2018年3月末のロイター通信の報道によると、Meituan-Dianpingは香港証券取引所上場に向けて動き出しており、2018年中には上場する可能性があるという。
中国5位のユニコーン企業は、情報コンテンツプラットフォームを提供するToutiaoだ。評価額は300億ドル。機械学習を活用した独自のエンジンで、ユーザーに適したコンテンツ配信を行っている。2017年9月時点の1日あたりのアクティブユーザー数は1億2,000万人に達したという。2016年には人工知能の研究ラボを開設。Toutiaoと北京大学が共同で開発したニュース執筆ロボット「Xiaomingbot」は2016年、オリンピック開催期間中に450本もの記事を執筆したとして話題となった。
14億人近い人口によって形成される中国国内市場に加え、アリババ、テンセント、バイドゥによる積極的なスタートアップ投資や政府支援など、中国ではユニコーン企業を輩出する強固なエコシステムが存在すると考えられる。この勢いはしばらく止まりもそうなく、さらに多くのユニコーン企業が登場してもおかしくない状況といえるだろう。どのような企業が登場するのか、今後も注目していきたい。