クラウド家事代行サービス「CaSy(カジー)」が、6月10日より企業向けの福利厚生プログラムを開始する。従業員の家事負担をなくすことにより、生産性を向上させたい企業が対象だ。2017年度内におよそ100社の導入を目標に掲げている。
CaSyはパソコンやスマホで受付をすれば、システム上でスタッフが手配されるクラウド型の家事代行サービスだ。見積もりや営業を介さない仕組みのため、いつでもどこでも申し込める気軽さ、そして安価な料金が強みだ。共働き世帯や多忙な単身者を中心に利用者は増加し続けているという。
仕事と家庭の両立を支援する動き
政府の主導する「働き方改革」に伴い、長時間労働の見直しやワークライフバランスの実現に取り組む企業は増加している。家庭と仕事の両立を支援するという点で、家事代行サービスへの期待は高い。東京都は、家事代行サービス活用に取り組む中小企業に助成金を支給する「家事サービスを活用した両立支援推進サービス」をスタートした。
企業が家事負担を代替する福利厚生プログラムが、多くのビジネスパーソンにとって魅力的な制度であることは間違いないだろう。平成 23 年の「社会生活基本調査 生活時間に関する結果」によると、単身者の男性は1日1時間40分、女性は3時間を家事に充てている。
より切実なニーズがあるのは共働き世帯の女性だ。先述の調査結果によれば、共働き世帯で女性が家事に使う時間は1日4.53時間、男性は0.39時間だ。また、女性の担っている家事の時間を市場での労働に置き換えた場合、共働きの女性の年間無償労働評価額は223.4万円に上る。
もちろん、仕事と家事の両立は女性だけの問題ではない。2014年にOECDが発表したデータによると、日本の男性はOECD加盟国の平均的な男性の仕事と家事の合計時間よりも長く働いた上に、62分間を家事に費やしている。男女差はあれ共働き世帯は仕事と家事に追われている現状がある。
「働き方改革」に家事代行サービスはどう貢献できるか
働く人々に負担となっている家事労働を企業が代替することは、安易に労働時間を削減するよりも、働き方改革を目指す上で現実的な施策となるかもしれない。おおたとしまさ氏は「ルポ 父親たちの葛藤 仕事と家庭の両立は夢なのか」の中で、極限まで人員削減や業務効率化を進めた上で、業務量はそのままにワークライフバランスが要求される社会の歪みを指摘している。
「よほどサボっていた会社員でもない限り、それ以上業務の効率化などできるはずがなかった。そこで更に『家族時間を捻出しろ』というのは、絞りきった雑巾をさらに万力にかけ、最後の1滴を絞り出すようなものだ。下手をすれば雑巾が破れてしまう」
もちろん、企業が家事代行サービスを福利厚生とすることで、人々が「仕事」か「家事」の二択を迫られるようになってはいけない。仕事だけに集中するための仕組みではないのだ。厚生労働省は「働き方改革」について次のように定義している。
「一億総活躍社会の実現に向けた最大のチャレンジであり、日本の企業や暮らし方の文化を変えるものです。厚生労働省では、女性も男性も、高齢者も若者も、障害や難病のある方も、一人ひとりのニーズにあった、納得のいく働き方を実現するため、『働き方改革』の実現に向けて取組を進めていきます」
「働き方改革」によって実現しなければいけないのは”一人ひとりのニーズにあった、納得のいく働き方”だ。企業が家事労働の負担を減らすことで、働く人々の1日に少しでも余裕が生まれることが、多様な働き方を推進する一歩となることを期待したい。
img : CaSy