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デジタルネイティブでも「実店舗で買い物したい」α世代 リアルな体験に価値を見出す新たな消費行動とは

「デジタルネイティブ」と聞けば、スマートフォンを手に動画やゲーム、SNSの中で多くの時間を過ごし、買い物もオンラインで済ませる若者を想像するかもしれない。

しかし、次の消費世代として注目されるアルファ世代(主に2010年代以降に生まれた世代)の実像は、もう少し複雑である。

イギリスの子どもたちが選んだ「クールなブランド」の上位に並んだのは、YouTubeとMcDonald’s(以下、マクドナルド)だった。デジタルプラットフォームとファストフード。一見まったく異なる二つのブランドだが、そこにはアルファ世代がブランドに求める価値の共通点が見えてくる。

デジタルが当たり前の世代だからこそ、リアルな場所、手触り、友人との時間、そして「自分で選択できる」という感覚が価値を持ち始めている。

1万人のアルファ世代が選んだ「クールなブランド」、2位はMcDonald’s

主に子ども・若者を対象とする調査会社Beano Brainが発表した「Coolest Brands 2026」は、イギリスの7〜14歳を中心とする1万人以上の声をもとに、彼らが「クール」と感じるブランドを調べたものだ。

首位は3年連続となるYouTube。そして2位となったのがマクドナルドである。

さらにランキング全体にもある特徴がみられる。「食品・飲料カテゴリー」がトップ100のうち29%を占め、KFCが12位、コカ・コーラが13位、キャドバリーが14位、プリングルズが15位にランクイン。ハリボーは17位、ドミノ・ピザは20位、ヌテラは21位、オレオは24位に入った。

TikTokやゲーム、AIが身近な環境で育った世代のランキングとしては、意外なほど「昔からあるブランド」が多い。

もちろん、子どもたちがハンバーガーやお菓子を好むこと自体は不思議ではない。しかし、食品・飲料ブランドが高い支持を集める理由は、商品の味だけでは説明できない。

マクドナルドのようなファストフード店は、食べ物を買う場所であると同時に、家族で出かける場所、ちょっとしたご褒美を楽しむ場所、そして友人同士で時間を過ごせる場所にもなる。手頃な価格で利用できることも、こうした場所に足を運びやすい理由の一つと考えられる。

つまり、彼らが買っているのは、ハンバーガーだけではない。「自分たちが過ごす場所」でもあるのだ。

デジタル世代の68%が「実店舗で買い物したい」

この傾向はマクドナルドに限らない。

Beano Brainがアメリカとイギリスの家族を対象にした調査「Gen Alpha: Born to Shop」では、アルファ世代の68%が「実店舗で買い物する方が好き」と回答している。

さらに87%が商品を実際に触りたいと答え、69%が買い物そのものを楽しいと感じている。

Beano Brainの責任者であるHelenor Gilmour(ヘレナ・ギルモア)氏は、この調査結果について、アルファ世代は膨大なデジタルコンテンツにいつでもアクセスできる環境で育ったにもかかわらず、「リアルに感じられる体験」を非常に重視していると説明する。

スクロールすることが日常だからこそ、店舗は家族や友人、そして商品そのものと対面でつながることが可能な場所になっているという。

別の調査結果でも同様の傾向が表れている。小売業などのコンサルティングを行うMG2が、8〜14歳500人を対象に調査したところ、73%が「実店舗でのショッピングを好む」と回答した。さらに半数以上は、商品を試せる機会がなければ店を出ると回答している。

こうした調査結果からは、興味深い逆転現象がみられる。アルファ世代より上の世代にとってECは「実店舗に足を運ばずに買い物ができる新しい体験」だった。しかし、幼い頃からデジタル環境に親しんできたアルファ世代にとっては、むしろ実店舗での買い物が非日常的な体験になり得るのである。

Apple、Sephora、スライム――「実際に触れられる店」が強い

実際、アルファ世代から支持される店舗を見ると、共通する特徴が浮かぶ。

その一例がApple Storeだ。

店内では商品が並べられ、来店者は自由に手に取ることができる。子どもたちもiPhoneやMacに触れて機能を試し、友人や家族と一緒に商品を体験できる。Beano Brainの分析では、Apple Storeを、派手な仕掛けがなくても商品そのものを通じて楽しめる「遊び場」と捉えている。

美容小売店のSephoraも同様だ。TikTokなどで見た商品を実店舗で手に取り、試すことができる。オンラインで商品を発見し、実店舗で体験する。デジタルとフィジカルは競合するのではなく、一つのカスタマージャーニーとしてつながっているのだ。

さらに特徴的な例が、米国で展開するSloomoo Instituteである。

スライムをテーマにミュージアムと小売店舗を融合した施設で、来場者はスライムを見るだけではなく、大量のスライムの中を歩いたり、触ったり、自分好みのスライムを作ったり、香りを選んだりできる。Beano Brainによると、施設内には300ガロン(約1,136リットル)ものスライムを使った体験やDIYスライムバーなどが用意されている。

ここでは「商品を買う」ことと「遊ぶ」ことの境界がほとんどない。デジタルでは再現できない、触覚、匂い、身体を使った体験そのものが商品価値になっているのである。

スライムを「見る」のではなく、触り、伸ばし、自分で作る体験を提供するSloomoo Institute。
博物館と小売店舗を融合させ、商品購入と遊びの境界を曖昧にした体験型小売業の代表例である
(画像:Sloomoo Institute)

もう一つの象徴的な例が、韓国発のライフスタイルブランドWiggle Wiggleだ。

カラフルなキャラクターやライフスタイルグッズで知られるWiggle Wiggleは、小売店舗そのものを一つの世界観として設計している。

Beano Brainが紹介する「Wiggle Hotel」型のポップアップストアでは、ホテルの客室を模した空間や、SNS映えする写真撮影ができるエリアなどを用意している。来店者は商品を選ぶだけではなく、その空間に実際に足を踏み入れ、写真を撮り、ブランドの物語の中に入り込むことができる。

Wiggle Wiggleは、2026年に日本において「ポケットモンスター」とのポップアップを展開し、商品販売に加えて写真撮影スポットなどを用意した。

つまり実店舗は、販売チャネルであると同時に、顧客自身がコンテンツを作るための「セット」にもなっている。

Wiggle Wiggleは、店舗やポップアップを写真撮影や探索そのものを楽しめる空間として設計する。
アルファ世代にとって小売店舗は、商品を買う場所であると同時に、自らコンテンツを作り、共有する場所にもなっている(画像:Wiggle Wiggle)

アルファ世代は「見たい」のではなく「参加したい」

もう一つ、アルファ世代を理解するうえで重要なのが「参加」である。

MG2の調査では、実に97%が、パッケージや店舗レイアウトなど何らかの「ブランド設計に参加したい」と回答している。

調査を担当したMG2のコンサルティング部門に所属するMelissa Gonzalez(メリッサ・ゴンザレス)氏は、アルファ世代についてデジタルとフィジカルの両方を自然に行き来する「最も流動的な世代」だと説明する。

Robloxのように自分でコンテンツを制作できるバーチャル世界に幼い頃から触れていることが、実際の商品やブランドに対しても共創を求める姿勢につながっているという。

Beano Brainも別の分析記事で、アルファ世代はブランドやコンテンツの単なるオーディエンスではなく、クリエイターコミュニティーの一員として、コメントし、リミックスし、編集し、「次の流行はなにか」に関わることを期待していると指摘する。

オンラインゲームプラットフォーム「Roblox」で世界を作り、動画編集アプリ「CapCut」で動画を作成し、フットウェアの「Crocs」をデコレーションして自分仕様にする。彼らにとってカスタマイズや共創は特別なキャンペーンに限られたものではなく、日常的な文化なのである。

ここで、冒頭で紹介したYouTubeとマクドナルドの共通点が見えてくる。

YouTubeでは、視聴するコンテンツを自ら選び、好きなクリエイターをフォローしたり、コメントを投稿したりすることで、ファン同士のコミュニティーに参加できる。

さらに、アルファ世代にとってYouTubeは、単なる短い動画の集合体でもない。Beano BrainはYouTubeのストーリーテリングに関する分析で、人気ゲームを舞台に定番キャラクターや物語を展開するクリエイターなど、子どもたちが繰り返し戻ってこられる「世界観」が形成されていると指摘している。

例えば、ブロックを使って自由に建築や冒険を楽しめるゲーム「Minecraft」の動画を制作するYouTuberのAphmau(アフマウ)氏は、同ゲームをテレビスタジオのように活用し、アニメ風の演出を取り入れた連続ストーリー動画を公開している。Beano Brainによると、2026年1月時点でチャンネル登録者数は2,450万人を超えていた。

一方マクドナルドでは、何を食べるかを選び、ハッピーセットを楽しみ、家族や友人と時間を過ごす。年齢が上がれば、親から少し離れて友人だけで過ごせるサードプレイスにもなる。

片方はデジタル、もう片方はフィジカルだが、共通するのは、「自分で選べる」「何度も訪れる」「参加できる」「誰かと共有できる」ことである。

「オンラインかリアルか」という発想を捨てる

アルファ世代を理解するうえで、「デジタル世代だから店舗は不要になる」「SNSでリーチすればいい」と考えるだけでは、彼らの消費行動を十分に捉えられない。彼らはデジタルかフィジカルかを選んでいるのではない。両者を自然に行き来している。

YouTubeやSNSで商品を知り、実店舗へ行って実際の商品を触り、友人と体験し、その様子をオンラインで共有する。

アメリカのアルファ世代についてBeano Brainが行った調査では、子どもたちに「今、自分が自由に使えるお金はいくらあるか」と尋ね、その回答を合計すると11億ドル(約1,650億円)に達したという。彼らはまだ本格的な所得を得る世代ではないが、すでに企業にとって重要なカスタマーであり、家庭の購買にも影響を与え始めている。

同社はアルファ世代のショッピングについて、単なる商品取得ではなく、他者とのつながり、自己表現、そして自分で選択する感覚と結びついた行為として分析している。

これは企業にとって重要な示唆といえる。

次世代の顧客に選ばれるために必要なのは、単にデジタル上で顧客との接点を増やすことではない。顧客自身が商品やサービスを選び、体験し、他者と共有できる機会を設けることも重要になるだろう。

実店舗を持つ企業であれば、「その場所でしかできないことは何か」を改めて考える必要がある。商品を並べるだけでは、ECとの差別化は難しい。一方、商品を試したり、ものづくりを楽しんだり、写真を撮ったり、他者と交流したりする体験は、実店舗ならではの価値となる。

一方、デジタルブランドにとっても同様の示唆がある。完成したコンテンツを一方的に提供するだけでなく、ユーザー自身が選択し、編集し、参加できる機会をどこまで設けられるかが重要になる。

アルファ世代にとって「クール」なブランドとは、単に憧れる対象ではなく、自らがその世界に参加し、体験を共有できるブランドなのかもしれない。

YouTubeとマクドナルドがランキングの1位と2位に並んだことは、そうした変化を象徴しているといえる。

文:岡 徳之(Livit)

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