SEOは終わっていない──リクルート・JADE・Faber Companyが語る、1年間で見えたGEOのリアル
INDEX

生成AIによる検索体験の変化が注目されるようになってから、すでに1年以上が経った。「SEOは終わった」「これからはGEOだ」、そんな対立構造が語られたのも記憶に新しい。しかし、現場の第一線に立つ実務者たちの結論は、拍子抜けするほどシンプルだった。
「SEOは終わっていない」
「Japan SEO Conference 2026」のオープニングキーノート「続 生成AIで検索体験はどう変わるのか?企業・ブランドの対応状況は?」に登壇したのは、株式会社Faber Company 執行役員の鈴木 謙一氏、株式会社JADE 代表取締役の長山 一石氏、株式会社リクルートの酒井 亮平氏の3名だ。
今回は、SEOを支援するJADE、SEOを自社で実践するリクルート、それぞれの立場から語られた、この1年間のSEO・GEOの変化と現場が直面する課題をレポートする。
Googleの一貫したメッセージ「良いSEOは良いGEO」
セッションの冒頭、モデレーターを務めた鈴木氏は、今年、カナダ・トロントとオーストラリア・シドニーで開催されたGoogleの公式イベント「Search Central Live(サーチセントラルライブ)」に参加した際の話を紹介した。
「Googleが繰り返し発信しているメッセージは一貫しています。『SEO is not dead』、つまりSEOは死んでいないというものです。さらに『Good SEO is Good GEO』、良いSEOがすなわち良いGEOだということを繰り返し発信しています。GEOだからといって特別なことをする必要はない、というスタンスなんです」
つまり、基本的には人間のユーザーのために優れたコンテンツを作ることが、そのままGEOにもつながるという考え方だ。

さらに鈴木氏は、Googleが2026年5月15日に公開した公式ドキュメントについても紹介した。
「Googleが、AI検索のためにこんなことをやってください、こんなことをする必要ありませんよ、という内容のドキュメントを発表しました。SEOもGEOも変わらないという前提で、データを構造化してAIに渡すような『チャンキング』や『LLMs.txt』などはいらないと語っています」
一方で、AI経由の流入を計測するための環境整備が進んでいる点にも触れた。
「AIパフォーマンスレポートが、検索分析ツール『Google Search Console』に登場しました。まだごく一部ですが、GA4のデフォルトのチャネルグループにもAIアシスタントが追加され、AIチャットボットからのトラフィックも自動で取得できるようになっています」
こうしたGoogleのスタンスに対し、支援者側と事業者側、それぞれの立場からどのような実感があるのか。
ここから議論は、本題へと移っていく。
SEO対GEOという対立構造の先へ。YouTubeの躍進、AI駆動マーケティングなど1年間の変化
数多くの企業のSEOを支援してきた長山氏は、昨年の同カンファレンスからの1年間で起きた変化について自身の見解を共有した。

「GEOという概念が出てきた当初、SEO対GEOという対立構造がありました。しかし個人的には、この対立はもはや止揚されていて、どちらかというと『AI駆動マーケティングをどう行うか』というフェーズに入ってきていると思っています」
長山氏によれば、当時の対立構造は次のようなものだった。
「SEO側の主張は『SEOをきちんと実行すればそれがそのままGEOになる。追加の対応は不要』というもの。一方のGEO側は『検索という土台そのものが崩れつつある』という主張です。実際、Ahrefsの調査によれば、AI Overviewsが表示された際の国内オーガニックCTRは38%減少し、グローバルでは58%減少しているといいます。サイバーエージェントのAI検索白書では、検索の23.9%が実質ゼロクリック検索となっており、10代に限れば7割に達するというデータもあります。博報堂DY ONEの調査では、AI検索の利用率がわずか8カ月で3.5倍に急増したと報告されています」
これらの数字は「ある程度正しい」としながらも、さらに話を続ける。
「検索からどのようにクリックにつなげるか、トラフィックを獲得するかという話だけではなくなっています。しかし、SEOが終わったかというと、それも少しずれていると考えています」
長山氏がそう語る根拠は、SEOの歴史そのものにある。バックリンクを育てる時代が終わったときも、長文コンテンツを量産する時代が終わったときも、SEOは終わらなかったためだ。
「結局SEOとは、必要な人に必要な情報を届けるためのプラットフォームです。プラットフォームの形態や仕組みは変わり続けるかもしれませんが、そこに情報を乗せるという仕組み自体は変わりません」
酒井氏も長山氏の発言に共感する。
「リクルートの自社サイトでも、記事コンテンツを中心にトラフィックの減少傾向があります。一方で、Bingのウェブマスターツールで見ると、AI検索結果の66%を記事系コンテンツが占めています。流入は減っていても、影響力はまだまだ持っているのが現状だと考えています」
なかでも、この1年間で目立った変化の一つが、YouTubeの躍進だという。長山氏によれば、2025年10月頃からAI Overviewsの参照ソースとしてYouTubeが急増し、Wikipediaを大きく上回るようになったと話す。
「これはあくまでも推測ですが、YouTube側で動画の字幕をテキストとしてGoogle検索に参照される仕様変更が入ったのではないかと思います。これまでは音声・動画データだったために参照されづらかったのが、ウェブページと同じように扱えるようになったのではないでしょうか」
また、AI Overviewsが参照するURLの幅も、年々広がっているという。
「Ahrefsの時系列調査では、2025年7月時点でAI Overviewsで参照する検索結果のうち、上位10位以内のURLの割合は76%でしたが、2026年2月の調査では38%まで半減。31%は、トップ100位にすら入っていないURLだったというデータもあります。つまり、これまでのようにコンテンツを作成し、検索結果の上位に表示させれば良いという話ではなくなったのは真実です。この状況で、なぜSEOはまだ終わっていないと言えるのかというと、SEOというものが変わり続けてきたプラットフォームだからです」
では、SEOは具体的にどう変わってきているのか。長山氏は、そのキーワードとして「AI駆動のマーケティング」を挙げる。
「AIが登場する前からある、キーワードをボリュームで重み付けし、コンテンツを1件1件上位表示させていく、というようなキーワード偏重のSEOは、すでに時代遅れになりつつあるのかもしれません。今後は、カスタマージャーニーを重視し、フェーズごとのユーザーにどうやって必要な情報を届けるか、という検索エンジンを使ったAI駆動のマーケティングへと変化していると思います」

「検証フェーズを抜け出せない」リクルートが向き合うGEOへの本音
続いて事業者側の立場から語ったのが、リクルートのSEO推進チームでリーダーを務める酒井氏だ。まず、AI流入のモニタリング環境の構築について説明した。
「アクセス解析ツールを用いて、SEO流入に対してどのくらいAI流入のシェアがあるかを可視化しています。2025年10月の時点では右肩上がりという印象でしたが、最近は少し落ち着いてきている状況です。AI流入のシェア自体は、依然としてごく小さい割合にとどまっています。それでも、プロンプトを使った表示状況の確認や、ユーザーへの定期的なアンケートなど、複数の角度からモニタリングを進めています。プロンプトの生成方法については、従来のSEOで培ってきたキーワード群をベースに、あえてキーワードをそのまま投入する手法を採用しています」
モニタリングに加え、リクルートでは2026年4月から3つの仮説に基づくパイロット検証も始めている。精査しているのは「SEOの底上げ」、そしてAIは文章の冒頭と末尾を拾いやすく中盤の情報を読み落としやすいという仮説を踏まえた「ページ構造の見直し」、さらに「サブクエリでの上位表示」の3つだ。結果が見えてくるのは、10月頃になる見込みだと話す。
一方で、酒井氏は率直にGEO推進における課題も語る。
「GEOについては、検証フェーズを抜け出せないというのが正直な感想です」
その根拠として示したのが「0円」という数字だ。計測ツールにはきちんと予算がついているものの、それ以外のGEO施策には現時点で予算がついていないという。
「会社としては、予算を投資したらこれだけのメリットがある、という前提で予算を組みます。現時点では、余った予算でチャレンジするという範囲でしか実行できていないのが現状です」
課題の根本にあるのは、ROIの不透明さだ。従来のSEOであれば、表示回数からクリック率、コンバージョン率、そして売上へと、説明可能な変数が比較的多かった。しかしGEOが事業にどれだけ影響を与えているのかは、まだ不透明だ。
「事業貢献価値を算出できないと、それにいくら予算を投じるべきかを説明することが非常に難しくなります。そのため、事業貢献価値を換算する姿勢は、忘れずにいたいと思っています。一方で、これまでSEOに真摯に取り組んできた実直な回答の積み重ねがあるからこそ、現在行っている検証を社内で理解してもらえる関係性ができています。だからこそ逆に、その信頼を崩すように無理に攻めるわけにはいかず、GEOを推進する範囲はやはり限られています」
GEOに関して予算がついているのは、あくまでもモニタリングツールまで。SEOで長年培ってきた信頼関係を土台にしながらも、ツール以外の領域ではまだ「予算」が限られている状況だ。この温度差こそが、GEOという新しい領域の難しさを象徴していると言えるだろう。

「SEO×AI施策を推進すべき」GEOの支援者と事業者が一致した結論
酒井氏は、今後の方向性について次のように言及した。
「現時点の結論だと、GEOの検証は行いつつ、並行して従来のSEOに対してAIを活用していく施策を取り組むべきだと考えています」
興味深いのは、この結論が長山氏とも一致していたという点だ。
「私も先ほど、SEOはAI駆動のマーケティングへと変化していくと話しました。立場は異なりますが、たどり着いた結論は同じでした」
Googleの一貫したスタンス、そしてSEOとGEOの対立の先にある「情報を届けるプラットフォーム」としての本質。だからこそSEOは終わっていない、というのが両者に共通する見解だった。支援者と事業者、それぞれの立場から語られたこの1年間の実践は最終的に、「従来のSEOに対してAIを活用していく施策を推進するべき」という同じ結論へとたどり着いた。AIによって検索体験は変わりつつある。それでも、ユーザーに価値ある情報を届けるというSEOの本質は変わらない。両者の議論は、その事実を改めて示すものとなった。
