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日本はデジタル国家になれるのか? GSMAサミットが示したAI時代の課題と可能性

世界が認める技術先進国である日本。しかし、デジタル化においては世界の先頭を走っているとはいえず、地域や企業規模による格差も大きい。AIが台頭した今、日本に足りないものは何か。

2026年4月15日に開催されたGSMA「Digital Nation Summit Tokyo 2026」では、この問いに対するひとつの答えが示された。基調講演やパネルディスカッションから見えた日本の現在地と課題を整理し、AI時代における“デジタル国家”への道筋を読み解く。

イノベーションが課題。デジタル国家としての現在地

まず明らかになったのは、日本はデジタル化が遅れているわけではないのにかかわらず、強みと弱みの差が大きいという現状だ。

世界中のモバイル通信事業者や端末メーカーなどが加盟する業界最大級の団体であるGSMAが発表したレポート「Digital Nations 2026 – Accelerating the Digital Leap in Japan
(2026年デジタル国家──日本におけるデジタル化の飛躍的加速)
」によると、日本の「デジタル国家指数(Digital Nations Index)」は100点満点中76点をマーク。アジア太平洋地域では、シンガポール、オーストラリアに次ぐ第3位に位置づけられている。

この指数は、インフラ・イノベーション・データガバナンス・セキュリティ・人材の5つの要素から評価されるもの。日本は特にデータガバナンスと人材(※)が高く評価され、2019年のダボス会議で提唱した「信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)」は、現在G7各国にも広がるなど、国際的なルール形成において存在感を示している。

一方で、最大の課題として挙げられたのがイノベーションだ。日本は安全性を重視するあまり、リスク回避の傾向が強い。そのため、優れた研究や技術があっても、社会実装やビジネス化に至るまでのハードルが高いという問題がある。

さらに、楽天モバイルのシニア・バイス・プレジデントであるDavid Soldani(デビッド・ソルダニ)博士は、日本の現状をより厳しく分析。日本は世界4位の経済規模にあるが、デジタル競争力は30位にとどまっているとされ、中小企業や地方のデジタル化の遅れが大きなボトルネックになっていることが示唆された。

楽天モバイル シニア・バイス・プレジデント デビッド・ソルダニ博士

こうしたなか、GSMA 最高戦略責任者のHakan Dursun(ハカン・ドゥルスン)氏は「日本にはアイデア、インフラ、経験、そして人材が揃っており、再び世界をリードできる可能性がある」と期待を寄せる。基盤は整っているものの、それを十分に活かしきれていない。このギャップを埋められるかが日本の今後を左右するといえる。

GSMA 最高戦略責任者 ハカン・ドゥルスン氏

鍵を握るのは「信頼」。競争から共創へ

では、日本の強みを活かすために必要なものは何か。議論の中心となったのは「信頼」である。

NTTドコモ・Google・経済産業省・総務省の各代表者が登壇したパネルディスカッションでは、「デジタル社会における信頼とセキュリティの構築」がテーマに掲げられた。

AIの進化により、利便性は飛躍的に向上する一方で、より巧妙なオンライン詐欺、不正アプリ、個人情報の漏えい、国際的なサイバー攻撃など新たなリスクも浮上している。実際、会場で行われたアンケートでも、消費者の最大の関心は「安心して使えるかどうか」であることが明らかになった。

通信事業者はAIを活用した不正検知などの対策を進めているものの、一企業の取り組みには限界がある。AI時代における安全性は、官民の連携、さらには産業界の横断的な協力が必要だ。GSMA CEOのJohn Hoffman(ジョン・ホフマン)氏も「世界を変えるには協力が不可欠だ」と述べ、競争から共創への転換を強調している。

GSMA CEO ジョン・ホフマン氏

日本においては特に、安心・安全がイノベーションの前提条件となる。重要なのは導入のスピードだけでなく、社会全体で安心して使える環境を構築できるかどうかだ。デジタルツールへの信頼を軸とした共創こそが、日本型デジタル国家の鍵となる。

日本企業に潜む構造課題

AIの活用現場からも、日本特有の課題が浮かび上がっている。

PwC Japanのパートナーである中林 優介氏は、アメリカ・イギリス・中国・ドイツ・日本を対象にしたAI活用に関する調査結果を紹介した。調査によると、日本はAIの活用率は高いものの、その成果に対する経営層の評価は他国よりも低いという。

背景にあるのは、AI活用の目的が「効率化」や「コスト削減」に偏っている点だ。新規事業の創出や顧客体験の向上といった価値創造への活用が限定的であるため、期待とのギャップが生じている。

また、日本ではAI活用が特定の部門に偏る傾向にあり、全社的に活用している企業は全体の約3分の1に過ぎないという。これが効果の最大化を阻む要因となっている。

PwC Japan パートナー 中林 優介氏

こうした課題に対し、中林氏は次の3点を提言した。

(1)AIと共に生きるという“共存”への発想転換
(2)全社横断のAIコントロール体制の構築
(3)外部連携を含めた人材活用によるAI変革

AIは単なるツールではなく、企業の意思決定やビジネスモデルそのものを再設計する基盤である。この認識を持てるかどうかが企業の価値を大きく左右するだろう。ここでも繰り返し示されたのは、外部との共創だ。

問われるのはイノベーションへの実行力

こうした分析や議論を踏まえると、日本が直面しているのは技術不足ではなく、構造転換の遅れであることが見えてくる。

経済産業省が提起する「2025年の崖」は、構造転換の遅れがもたらすリスクを示すものだ。デジタル変革が進まなければ、最大で12兆円の経済損失が生じるとされている。

また、総務省の「デジタルインフラ整備計画2030」では、AI時代を見据えた通信基盤の強化として、デジタルインフラの地方分散や光ファイバ、5G・6G、さらにはHAPS(空飛ぶ基地局)といった次世代のネットワーク整備が掲げられている。

日本はすでに高い技術とインフラを有している。不足しているのは、それらを結びつけ、社会実装へと一気に押し上げる実行力だ。安心・安全という信頼性を武器に、共創によってデジタル変革を加速できるか——。その成否こそが、日本のデジタル国家としての行方を決める。

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