「ユーザーにとっての最善」を問い続けた先にあった急成長。FOLIOホールディングスが体現する“誠実さ”と“経済合理性”が両立するビジネス
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「貯蓄から投資へ」。このスローガンが日本で掲げられてから、四半世紀ほどが経過した。新NISA制度の開始により、国を挙げた投資の後押しや金融教育の充実が進み、日本でも資産運用への関心は高まりつつある。しかし、2,200兆円という膨大な家計金融資産の多くは、依然として現預金のまま眠っている。
この巨大な岩盤を動かそうと挑み続けている企業が、株式会社FOLIOホールディングスだ。
子会社である株式会社FOLIOを通じて、独自のAI運用エンジンを搭載したロボアドバイザー「ROBOPRO(ロボプロ)」(※1)の提供をはじめ、金融機関が低コストで投資一任サービスを始められる「4RAP」といったSaaS型運用インフラを展開し、今や総取扱資産残高(※2)は1兆円に届こうとしている(2026年2月27日時点で9,000億円)。代表取締役社長兼CEOの甲斐 真一郎氏は、かつてゴールドマン・サックスという世界の最前線でトレーダーとして活躍した経験を持ちながら、極めて合理的かつ大胆な戦略で、業界の構造を塗り替えようとしている。
「自社のシェアを奪い合うフェーズは終わった」。そう言い切る甲斐氏が掲げる目標は、総取扱資産残高「10兆円」への到達だ。その数字は決して夢想ではなく、緻密に積み上げられた計算の先にある。
今回は日本における金融サービスをアップデートしながら、業界全体の構造的課題に対して誠実に向き合おうとする、彼らの挑戦に迫る。
(※1)「ROBOPRO」は株式会社FOLIOの登録商標。
(※2)「FOLIOが直接顧客に提供する投資一任運用サービスに関連して預かっている資産」「銀行・証券会社等の金融機関における、4RAPを活用した投資一任運用サービスの預り資産」「FOLIOホールディングスの子会社が投資助言業を行っている金融商品の資産」の合計金額を指す。
資産運用が進まない「最大の要因」と、AI投資のアプローチ
取材の冒頭、甲斐氏は「なぜ『貯蓄から投資へ』が進まないのか」という問いに対し、核心を突く答えを提示した。

「国もNISAなどの制度を刷新し、本気で資産運用立国化を推し進めています。学校でも金融教育が義務化されました。これは素晴らしい一歩です。一方で、金融の勉強だけをいくら机上でしても、正直あまり意味がない。一番の勉強は、実際に自分のお金を投じてみることに尽きます。100円でもいい、1,000円でもいい。実際に投資をしてみて、市場の動きによって自分のお金が増えたり減ったりする経験をすることが、どんな教科書よりも学びになります。いわば『習うより慣れろ』。これが投資を学ぶ最良の近道です。しかしながら、投資が広がらない本質的なボトルネックは、“ユーザー側”ではなく“仕組み側”にあると考えています」
この“仕組み側”の問題を解決するために、FOLIOホールディングスは新たなアプローチを提供している。
まず、一つ目の“仕組み側”の問題は「金融商品のパフォーマンス」だ。FOLIOはそれを改善するために、独自のAI運用エンジンを搭載した自動資産運用サービス「ROBOPRO」を提供している。

「まず資産運用で一番大切なのはパフォーマンス(成果)。パフォーマンスというのはリターン(利益)のことだけではなく、リスク(変動)をどれだけ抑えられるかも非常に大切な視点です。ROBOPROは40種類以上のマーケットデータから1,000種類以上の特徴量(予測の手がかりとなる特徴を数値化したもの)を導き出し、それらをAIで分析し、金融市場を予測して資産配分を大胆に入れ替え、運用パフォーマンスの最大化を目指しています。人間だとどうしても感情が投資判断の邪魔をしますが、AIにはそれがない。プロでも相場が急落しているときに『買い』を入れるのは怖いものですし、相場が上がりすぎている時に冷静に『売り』を入れるのも難しい。市場予測の精度に加え、冷静な投資判断がここまでの高いパフォーマンスにつながっていると考えています」
投資を日常に浸透させるには、ユーザーを「相場変動の不安や投資判断のストレス」から解放し、「長期的に」安心して資産を託せる高度な知識が必要だ。その点、ROBOPROはこういった負荷をAIが担うことでハードルを下げ、相場予測によって変動を抑えることで、投資を「長期的な目線で」生活の一部として溶け込ませていく可能性を秘めている。
事実、ROBOPROはリリース以降、数年にわたり運用を続ける中で一定の実績を積み重ねてきた。例えば、コロナショックやトランプ関税ショックなど、世界的な市場の下落局面においても、AIが市場の変化を分析し、資産配分の変更を行ってきた。2020年1月のサービス開始から2026年2月末までのリターンはプラス173%、トランプ関税ショックがあった2025年の年間リターンはプラス28%を記録している(※3)。
さらにFOLIOの大きな特徴は、自社プロダクトの強みであるこのAI運用エンジンそのものを他商品へ活用するという、大胆な一手に出ているという点だ。
「僕らが持っているAI運用エンジンは、非常に汎用性が高い。自社サービス『ROBOPRO』の中だけで完結させる必要はないんです。例えば、この運用エンジンを投資信託という形にパッケージ化し、『ROBOPROファンド』として提供すれば、NISA対応や、法人での購入も可能になる。また、ゴールドマン・サックス証券の発行する社債とROBOPROエンジンを掛け合わせた商品など、新しい形でAI予測を活用した商品も開発しています」
(※3)将来の運用成果等を示唆又は保証するものではありません。サービス開始当初(2020年1月15日)から2026年2月27日まで、および2024年12月30日から2025年12月30日まで、それぞれの期間でROBOPROサービスに投資していた場合のパフォーマンス。運用手数料を年率1.1%(税込)で徴収し、リバランスは最適ポートフォリオとの乖離(かいり)がないように実施したと仮定して計算。分配金は投資の拠出金銭に自動的に組み入れ、リバランスにより再投資したと仮定して計算。分配金やリバランス時の譲渡益に係る税金は考慮していない。年率リターンについては、同期間の日次リターンを用いて計算し、年率換算を実施。幾何平均リターンを表示。
自社の「エゴ」を捨て「誠実さ」を貫いた先にあった急成長
そして、二つ目の問題は、金融サービスの裏側にある“見えないコスト構造”だ。
「従来、金融機関が新しい投資サービスを立ち上げるには、既存の基幹システムに個別対応で手を入れる必要があり、そのたびに多額の開発コストと長いリードタイムが発生していました。この構造が、サービスの迅速な高度化と低コスト化を実現できない根本原因になっていたと考えています。FOLIOは、この非効率な構造を前提から見直し、投資一任サービスを“共通基盤化”することで解決しようとしています。それが、SaaS型プラットフォーム「4RAP」です。これは投資一任サービスという領域におけるOSをアップデートするための基盤となるものだと思います」
4RAPにより、金融機関はゼロからシステムを構築することなく、高品質な投資一任サービスを短期間で立ち上げることが可能になる。これは単なる効率化ではなく、金融サービスの提供コストそのものを構造的に引き下げる取り組みとなっている。

この4RAPというプロダクトの開発は、FOLIOにとって最大の転換点といえる。かつてFOLIOは、自社口座へ顧客を囲い込むBtoCサービス(個人向け)での成功を目指していた。しかし、甲斐氏はその「エゴ」を捨てる決断をする。
「僕らも当初は、個人向けロボアドバイザーを通じて自社の経済圏を広げようとしていました。しかしこの数年、多くのBtoC金融サービスが苦戦しています。理由はシンプルで、ユーザーを“無理に”自社サービスへ誘導しようとするからです。資産形成を考える人の多くは、すでに使っている金融機関を持っています。ネット証券を使う人もいれば、地元の銀行を信頼している人もいる。それにもかかわらず、新しいサービスのためにアプリをダウンロードさせ、本人確認をさせ、口座を開設させる。このプロセスには、膨大なユーザーの手間がかかります。ユーザーにとって本当に良いかたちは、すでに使っている金融機関の中で自然に自分に合った投資ができることだと、僕らは考えるようになりました」
ここに、世の中の資産形成を純粋に前に進めたいという「誠実さ」と「経済合理性」が同居する、FOLIOホールディングス独自の経営判断がある。
「ネット証券に口座があるなら、そこで運用した方がいい。その口座には、投資の元手となるお金がすでにあるからです。利便性を考えれば、今の口座のまま、中身だけが最新のテクノロジーにアップデートされるのが良いですよね。そのため僕らは、金融機関が品質の高い投資サービスを始められる基盤となる4RAPを提供し、AIを使った運用エンジンだけをさまざまな金融商品の形で提供することで、日本の金融インフラそのものをアップデートする側に回るという判断をしました。この決断が、結果としてFOLIOの成長を加速させる起爆剤となりました」
現在、FOLIOホールディングスの総取扱資産残高は、毎月約700億~800億円という驚異的なペースで増加しているという。総額も1兆円規模に迫りつつある。自社マーケティングに依存せずとも、提携パートナーである金融機関や取扱商品の拡大に伴い資産が積み上がるビジネスモデルは、ユーザー目線を重視した姿勢から生まれたものともいえる。

業界の構造的課題を解決し、総取扱資産残高10兆円へ
取材の最後、甲斐氏は自身の「夢」ではなく、あくまで「一つ目の目標」としての総取扱資産残高10兆円への意気込みとロードマップを語った。

「5兆円、10兆円という数字は、決して夢物語ではないと考えています。むしろ、今見えているものを着実に積み上げていけば、到達する数値だと思っています。まず、ロボアドバイザー(ROBOPRO等)や投資助言を行う投資信託(ROBOPROファンド等)以外にも、保険領域や年金にも弊社サービスは拡大していく予定です。また4RAPが提供可能な金融機関はまだまだ数多くあり、導入金融機関の数だけ総取扱資産残高も積み上がる。AIの利活用は現時点ではROBOPROが中心となっていますが、弊社はすでに数多くのAI運用アルゴリズムを開発しています。まだまだ複層的に積み上がっていくマルチプロダクト戦略の本領が、これからさらに発揮されていくと考えています」
かつての自社ブランドへのこだわりを超え、業界全体の資産形成を底上げすることに、誠実に向き合うFOLIOホールディングス。ユーザーにとっての最善を追求するスタンスが、結果として総取扱資産残高の急成長という形で見事に結実している。業界全体の構造的課題への対応が、結果として企業としての成長にもつながる可能性がある。同社の取り組みは、「誠実さ」と「経済合理性」の両立を模索する次世代ビジネスの一つの姿といえるだろう。

【金融商品取引法等に係る表示】
商号等:株式会社FOLIO
金融商品取引業者登録番号:関東財務局長(金商)第2983号
加入協会:日本証券業協会・一般社団法人日本投資顧問業協会
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取材・文:吉田 祐基
写真:水戸 孝造