首都圏への本社移転が過去最多に コロナ禍後初の「転入超過」
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帝国データバンクは、2025年に首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉:1都3県)と地方間をまたいだ「本社所在地の移転」が判明した企業(個人事業主、非営利法人等含む)について分析を行ったと発表した。対象は、同社が保有する企業概要データベースのうち、業種や規模が判明している企業である。
■首都圏企業の本社移転、5年ぶりの転入超過
2025年に地方から首都圏へ本社を移転した企業は363社となり、1990年以降で最多を更新したという。前年(296社)から67社、22.6%増加し、2年ぶりに300社を超えた。一方、首都圏から地方へ本社を移転した企業は325社で、前年(363社)から38社、10.5%減少したとのことだ。

この結果、転出企業数から転入企業数を差し引いた「転出入超過」は、38社の転入超過となった。転入超過の規模は、最も多かった2015年(104社の転入超過)の約3分の1であったものの、コロナ禍の2020年(8社)以来、5年ぶりの転入超過となった。

地方から首都圏への移転先では、「東京都港区」が56社で最多となり、「千代田区」(37社)、「中央区」(34社)、「渋谷区」(26社)が続いた。
地方から首都圏へ移転した企業の転入元をみると、「大阪府」が69社で最多となり、前年から11社増加した。コロナ禍以降では最多水準で、過去10年では2016年に次ぐ多さである。また、「福岡県」(37社)、「愛知県」(35社)、「茨城県」(30社)など8県で過去最多水準となったという。
首都圏からの転出先では「大阪府」が38社で最多だったが、前年から13社減少した。「群馬県」(28社)、「沖縄県」(14社)、「石川県」「熊本県」(各5社)などで過去最多水準となったとのことだ。
総じて、東京都心から郊外・隣接県へ機能を移す動きが続いているほか、観光産業が好調な沖縄県や半導体産業で好況が続く熊本県など、首都圏から離れた地域に移転する動きが目立っているという。

■首都圏へ転入、「サービス業」過去最多 西日本からIT企業移転
地方から首都圏へ転入した企業の業種では、「サービス業」が160社で最多となり、1990年以降で最多を更新したという。なかでも「ソフトウェア受託開発」や「パッケージソフトウェア」などIT関連企業の転入が多く、大阪府や福岡県など関東以西からの転入が目立ったとしている。次いで「卸売業」が52社、「建設業」が30社となった。一方、「製造業」は29社にとどまり、過去2番目に低い水準である。
首都圏から地方へ転出した企業でも「サービス業」が116社で最多だったが、前年から35社減少した。「卸売業」は67社で前年から増加し、「不動産業」は24社で2年連続の最多更新となったという。
首都圏からの転出を巡っては、ソフトウェア開発など比較的移転の容易な業種が多くを占める状況に変化はなかった。一方で、コロナ禍に沈静化していた、物流センターや工場など大規模な施設の新築・移設を前提とする製造・流通業種で、再び転出の動きが強まっている。

■中小企業の転入、中堅企業の転出が増加
地方から首都圏へ転入した企業の売上規模では「1〜10億円未満」が158社で最多、「1億円未満」が139社で過去最多となった。売上高10億円未満の企業が転入全体に占める割合は81.8%で、過去最高となったという。首都圏への移転が停滞したコロナ禍以降、規模拡大を目指す中小企業が首都圏を目指す動きが再び高まっている。
一方、首都圏から地方へ転出した企業では、「1億円未満」が140社で最多となり、小規模企業が中心だった。ただし、2024年(176社)からは36社、20.5%の減少となったという。「1〜10億円未満」は130社で、3年ぶりに前年を下回った。
他方で、「10〜100億円未満」は49社で3年連続の増加となった。コロナ禍前はIT関連産業など小規模企業の移転が中心だったが、中堅規模以上の企業でも首都圏から本社を移転する動きが増加しているとしている。

■首都圏へ転入した企業、前年度「増収」が拡大
首都圏へ転入した企業の業績動向をみると、2025年は前年から「増収」となった企業の割合は39.4%を占め、前年(36.6%)を上回った。
首都圏全体で高機能オフィスの供給が拡大するなど、移転企業の受け入れ態勢が整っていることに加え、新規取引先との関係構築や情報収集、人材採用の強化など、経営面で首都圏に本社を置くメリットが大きいことが背景にあるという。こうした点が、拡大・成長を志向する地方の中堅企業による首都圏移転を後押ししているとしている。
一方、首都圏から転出した企業では、増収企業が34.2%となり、前年(33.3%)を上回ったものの、転入企業の水準を下回った。リモートワークの普及で都心に巨大なオフィスを維持する必要がなくなった企業を中心に、オフィス賃料などランニングコストの高い首都圏から地方へと移転する動きが増加していたが、近時は成長を続ける企業の地方移転もみられるという。
<参考>帝国データバンク『首都圏「本社移転」動向調査(2025年)』