Z世代は仕事中もChatGPT漬け?「上司より理解してくれる」AIに依存する若手社員たち
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Z世代は仕事中もChatGPT漬け?
あなたの職場でも、若手社員がパソコンに向かって何やら真剣な顔でタイピングしている光景を目にすることがあるだろう。資料作成に勤しんでいるのかと思いきや、実はChatGPTと雑談しているかもしれない。
2025年10月、履歴書サービスResume.orgが米国の18〜28歳のZ世代1,000人を対象に実施した調査は、職場におけるAI利用の実態を生々しく映し出した。同調査は、過去1週間にChatGPTやCopilotといったAIチャットボットを使用した正社員を対象に実施された。
調査結果の中で最も際立ったのは、Z世代のAI依存度の高さだ。1日に少なくとも1時間AIと会話する人が4割に達し、うち13%は1〜2時間、6%は2〜4時間、そして5%は4時間以上もAIとやり取りしているという。仕事中の30分以上をAIとの対話に費やす人は43%に上った。
興味深いのは、その利用目的。確かに77%が「業務関連のタスクにAIを活用している」と回答したが、仕事中の利用はそれだけにとどまらない。42%は業務に関係のない雑談に、38%は娯楽や休憩目的に、33%は仕事上のストレスや不満を吐き出すためにAIを利用。極めつけとして、15%が「実際には働いていないのに忙しく見せるためにAIを使っている」と認めている。
一方で、AIが生産性に貢献していることも事実だ。77%が「AIのおかげで生産性が向上した」と回答しており、33%が大幅な向上を、44%がある程度の向上を実感したと回答した。
Resume.orgのキャリアアドバイザー、カラ・デニソン氏は「Z世代にとって、AIチャットボットは単なる便利な道具ではない。人とのつながり、自分でコントロールできる安心感、そして即座に答えが得られる即時性を持つ存在になっている」と分析。このデジタルファースト世代は、彼らより上の世代がコーヒー休憩や廊下でのおしゃべりに使っていたのと同じように、気分転換や問題解決、理解されたいという欲求のためにChatGPTを活用しているという。
「上司より理解してくれる」ChatGPT、Z世代が抱く信頼感の正体
Z世代にとって、AIは単なる業務ツールではない。同僚以上に頼れる相談相手であり、時には上司よりも自分を理解してくれる存在となっている。
Resume.orgの調査では、AIとのコミュニケーション頻度が人間を上回っている実態が浮かび上がった。AIと同僚との比較では、22%がAIと、37%が同程度、41%が同僚とより多く対話していると回答。さらに驚くべきことに、25%が「(ChatGPTは)同僚よりも自分のことを理解している」と回答し、「上司よりも自分のことを理解している」との回答に至っては45%に上った。
この親密な関係は、職場外にも及ぶ。13%が友人よりも、11%が家族よりもAIが自分を理解していると回答したほか、34%が「これまで人間に話したことのない内容をAIに打ち明けた」と答えるなど、AIに対し深く依存している状況が浮き彫りとなった。
では、Z世代はAIをどのような存在として捉えているのか。47%が「ツール」と答える一方で、27%は「アシスタント」、13%は「友人」、9%は「セラピストやコーチ」、3%は「同僚」と表現する。デニソン氏は「多くのZ世代は、カジュアルな指導や雑談が形成されないハイブリッドやリモートの職場に入ったため、AIがその関係性の空白を埋めている」と分析している。
情報収集の手段としても、AIは従来の検索エンジンに迫る勢いを見せる。素早い答えが必要な時、39%がAIを最初に使うと回答。Googleを使う47%に肉薄し、ソーシャルメディアを使う14%を大きく引き離す。Z世代がAIを好む理由として、「明快」(63%)、「迅速」(56%)、「詳細」(56%)、「理解しやすい」(55%)、「批判的でない」(33%)、「プライベート」(29%)といった点が挙げられている。
だが、この密接な関係には警鐘も鳴らされている。デニソン氏は「AIが手軽なサポートを提供し、自信を高めることは心強いが、本物の人間関係に取って代わるなら懸念すべきだ」と指摘。「感情面のサポートをAIに過度に依存すると、若い専門職に必要な対人的な回復力、感情的知性、指導が欠如する可能性がある」と警告している。
企業の対応は後手、45%が禁止ツール使用を告白
従業員が自由にAIを使いこなす一方で、企業側の対応は大きく出遅れている。海外の調査が示すのは、規制と利用実態の深刻なギャップだ。
2025年夏に実施されたEisnerAmperの調査によると、過去1年間に業務でAIを使用した米国の従業員のうち、雇用主がAI利用を積極的に監視していると回答したのはわずか22%にとどまった。さらに衝撃的なのは、正式なAIポリシーを持つ企業が36%にすぎない点だ。マネージャーの84%がチーム内でのAI利用を認識しているにもかかわらず、実際に上司に報告したり許可を求めたりする従業員は41%にとどまるという。
この監視の甘さが、リスクある行動を助長している。従業員の60%が企業が提供する社内AIツールではなく、無料のAIプラットフォームを利用しているのだ。さらに28%が「たとえ禁止されていてもAIを使う」と回答している。
実際、セキュリティ研修企業Anagramの調査では、45%の従業員が禁止されているAIツールを職場で使用したことがあると告白。そのうち26%は過去1週間以内、12%は過去1カ月以内に使用していた。40%が「タスクを早く終わらせるために、故意に社内規定に違反する」と答え、58%が顧客記録や財務データ、社内文書などの機密データをAIツールに入力していることも判明している。
欧州でも状況は似通っている。ISACAの調査によれば、欧州のIT・サイバーセキュリティ専門家の4分の3近くが職場で生成AIが使われていると回答したが、正式で包括的なAIポリシーを整備している組織はわずか31%だった。この数字は前年から10ポイント上昇しているものの、利用実態と規制のギャップは依然として大きいのが現状だ。
ポリシーの有効性に対する認識の低さも際立つ。従業員の半数しか自社のAIポリシーが「非常に明確」だと考えておらず、半数以上が社内規定に違反する形でAIを使用する可能性があると回答している。Anagramの創業者でCEOのハーリー・シュガーマン氏は「従業員はコンプライアンスよりも利便性を優先している。これは憂慮すべき問題だ」と警告する。
ISACAの調査では、AIが既に組織の生産性を56%向上させ、71%が効率化と時間節約を報告している一方、63%が生成AIが自社に対する攻撃に利用される可能性を非常に、あるいは大いに懸念していることも明らかになった。ディープフェイク検出ツールに投資している組織はわずか18%にすぎず、脅威認識と対策投資の間に大きな断絶が存在している。
AI時代を生き抜く日本企業、明確なルールと研修が鍵
海外で広がるAI利用の混乱を、日本企業はどう受け止めるべきか。実は、先進的な取り組みを進める企業は少なくない。
まずはLINEヤフーの大胆な方針転換が挙げられる。2025年7月、同社は全従業員約1万1,000人を対象に、業務における「生成AI活用の義務化」を前提とした新しい働き方を開始した。目標は今後3年間で業務生産性を2倍に高め、継続的なイノベーションを創出することだ。
まず従業員の業務の3割を占める「調査・検索」「資料作成」「会議」などの共通領域から着手。「調査・検索」では「まずはAIに聞く」、「資料作成」では「ゼロベースの資料作成は行わない」といったルールを策定した。会議においても、社内会議の議事録作成は全てAIで実施し、任意参加の会議は原則出席せず議事録で把握するなど、徹底した効率化を図る方針だ。
重要なのは、同社が単なるツール導入にとどまらない点だろう。全従業員にリスク管理やプロンプト技術に関する必須のeラーニング研修を実施し、試験合格を生成AIの利用条件としている。2025年6月からは全従業員へ「ChatGPT Enterprise」のアカウントを付与し、100%活用に向けた環境整備も進めている。
富士通も先進的な取り組みを進める企業の一つだ。同社は2024年7月、「生成AI利活用ガイドライン」を公開。正確性・公平性・著作権侵害・情報管理・悪用という5つのリスクを明示し、それぞれの対策を詳細に解説している。特に情報管理では、秘密保持義務を負っている企業の生成AIサービスのみを利用するよう義務付けるなど、具体的な運用基準を設けた。
LINEヤフーや富士通の事例が示すのは、明確なガイドラインと徹底した研修、そして組織全体の意識改革の重要性だ。Z世代が職場でAIと共生する時代、リスクを低減し競争力を高めるには、企業側の戦略的な対応が求められる。
文:細谷 元(Livit)