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2026年W杯は“試合を見ない観戦”が主流になる Z世代が作る「メタ観戦」の時代

2026年のサッカー・ワールドカップは、史上初めて“試合以外のコンテンツが主戦場になる大会”になるだろう。若者のスポーツ視聴行動は、この数年で急速に変わった。Z世代は、試合を最初から最後まで見ることを前提としていない。にもかかわらず、SNSでは試合のハイライト、選手のミーム、TikTokでの切り抜き、裏側動画の再生数が爆発し、スポーツの熱狂の中心は依然として若い世代が握っている。観戦の目的が「試合の視聴」ではなく、「編集された物語の消費」へ移ったことで、スポーツはまったく異なる文化圏に入りつつある。

メタ観戦とは何か Z世代の観戦は“二次創作”

Z世代はライブ中継ではなく、短尺動画、切り抜き、SNS実況を観戦の中心に置く。たとえばTikTokでは、スポーツ関連動画の視聴時間が伸びており、10〜20秒のクリップが公式放送以上に消費されることも珍しくない。試合のどの瞬間が価値を持つかは、もはや放送局や競技団体ではなく、SNSの編集文化によって決まる。Z世代にとって、スポーツとは“ライブを追うもの”ではなく、“SNSのタイムラインで拾った断片をつなぎ合わせるもの”であり、観戦とはすなわち二次創作の営みに近い。

日本でも同様の兆候がある。X(旧Twitter)ではサッカー日本代表戦の実況スレッドがテレビ視聴に匹敵する勢いで盛り上がり、高校サッカーや高校野球の名場面がTikTokで多くの再生数を記録する。若者は“リアルタイム視聴で盛り上がる”のではなく、“SNSで盛り上がっている部分を見る”という形でスポーツを消費している。

なぜ試合を見ないのに熱狂できるのか

リアルタイム視聴で試合を見なくても熱狂できる最大の理由は、Z世代の生活がSNS中心にあり、“断片で世界を理解する”ことが自然な世代だからである。試合を90分見ることは「時間コストが高い」行為であり、それよりも「物語性のある瞬間」だけを抽出して楽しむ方が効率的で、共感もしやすい。実際、若年層はフル試合の視聴時間が減少し、ハイライト視聴が急増している。

さらに、Z世代は“国より個人”、“結果より物語”を重視する。Netflixの『Drive to Survive』がF1人気を押し上げたように、スポーツの本当の牽引力は試合ではなく“選手のストーリー”であると彼らは理解している。

推し選手の時代へ Z世代的IP消費としてのスポーツ

Z世代は「国」や「チーム」よりも「推し選手」を軸にスポーツを追う。競技力以上に、人格や背景が重要だ。SNSで素顔を見せる選手ほど人気が出るのはそのためである。選手がどんな苦労をし、どんな価値観で生き、どんな仲間に支えられているか——こうした物語が観戦価値を決定する。

女性スポーツはこの点との親和性が極めて高い。女子サッカーや女子バスケットボールは、選手個人の発信力が強く、ファンとの距離も近い。視聴の中心が“人物の物語”へ移っている今、女性スポーツはZ世代の価値観に最もフィットしている市場である。世界的にも女子スポーツ市場は急成長し、Z世代ファンの牽引力は大きい。

スポーツ界が適応すべき“物語の時代”

このような時代において、スポーツ界・メディア・スポンサーがすべきことは、従来型の「試合を見せる」発想ではなく、「物語の基礎素材を社会に提供する」発想である。

具体的には、選手の裏側動画、練習や移動の様子、友人・家族との関係、ロッカールームの空気、感情の揺れといった“非競技の要素”こそ観戦の核になる。これらはZ世代のSNS文化と親和性が高く、スポーツの熱狂を「メタ観戦」として増幅させる燃料になる。

日本でも、WEリーグやBリーグの女子選手がTikTokやInstagramでファン層を広げており、物語起点の観戦スタイルが広がりつつある。

スポーツは“編集して参加する”文化へ再発明される

スポーツは、もはや「結果を見守るだけの対象」ではない。Z世代は、スポーツを切り取り、編集し、再配置し、自分なりの物語として再発明する。観戦とは創造行為であり、Z世代はその最前線にいる。

2026年のワールドカップは、テレビの前に座る大会ではない。自身の感性で「どの瞬間を切り取り、どの物語を広げるか」を選び取る大会である。そして、その選択がスポーツの未来を変える。

Z世代は、スポーツの観客ではなく、“新しいスポーツ文化の創り手”なのである。

文:岡 徳之(Livit

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