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2025年、人々は何を“調べていた”のか? WikipediaとGoogle検索ランキングが映す世界の関心

2025年、世界の人々は何を知りたがり、どんな出来事について深く理解しようとしたのか。その答えは、SNSの喧騒よりもむしろ、検索や参照といった“自ら調べに行く行動データ”にこそ鮮明に表れる。

Googleの「Year in Search 2025」、そして英語版Wikipediaの年間閲覧ランキングは、世界の関心がどの方向へ向かい、どれほど深く事象を理解しようとしたかを示す、極めて重要な指標になっている。

検索は“知りたい瞬間の入り口”であり、Wikipediaは“理解するための参照点”。この二つを重ね合わせると、2025年がどんな年だったかを、従来のニュースでは捉えられない角度から読み解く。

なぜ今、“検索・参照データ”が重要か

SNSはその場の空気感を映し出す一方で、情報は断片化し、アルゴリズムに左右される。それに対して検索やWikipedia参照といった行動は、ユーザー自身が能動的に情報を探し、理解を深めようとする動きである。

そこに記録されるのは、個人の生活に直結する疑問・不安・興味・確認ニーズといった“本音の関心”。大量の情報に翻弄されやすい現代において、検索と参照データは、集団が何を理解しようとしているのかを示す最も開かれたウィンドウになっている。

2025年は、AIの急速な普及、地政学的緊張、異常気象、国際スポーツの再編、政治的言説の変質など、複雑な変動が重なった年だった。その結果、人々の「調べる」「確かめる」行動が一段と増えたことは自然な流れと言える。

2025年のGoogle’s Year in Search 何が急上昇したか

Googleの「Year in Search 2025」は、検索回数の多さではなく“前年からの伸び”によって順位が決まるため、今年どんなテーマへの関心が急速に高まったのかを示している。2025年の上位には、AI、国際スポーツ、政治的事件、地政学といった、多様な領域が並んだ。

1位はGoogleの生成AI「Gemini」。6位の「DeepSeek」とともに、AIを理解し使いこなすための検索が世界的に増えたことがわかる。スポーツでは「India vs England」「India vs Australia」「Asia Cup」などクリケット関連が複数ランクインし、国際試合が起こるたびに世界的な検索需要が急増した。また「Club World Cup」の急上昇も、スポーツイベントのグローバル化を象徴する結果となった。

3位の「Charlie Kirk(チャーリー・カーク)」は、その中でも異例の存在だ。米保守系活動家である彼が検索上位に入ったのは、2025年に暗殺され、事件の背景や影響を確かめようと多くのユーザーが情報を求めたためである。AIやスポーツイベントと並んで個人名が上位に入るのは珍しく、政治的事件が世界の検索行動に直接影響した象徴的なケースとなった。

「Iran」や「Pakistan and India」といった地域名が急上昇したのは、地政学的な緊張を反映したものだ。一方、「iPhone17」が9位に入るなど、テクノロジーや消費に関する関心も依然として高い。

こうしたランキングから浮かび上がるのは、2025年が“世界の動きを理解するために調べる年”だったということである。人々は出来事の背景を知り、自分なりに世界を把握しようと積極的に検索を行っていた。

Wikipediaランキングと比較 “検索と参照”の二層構造

2025年の英語版Wikipediaの閲覧ランキングは、Google検索とは異なる角度から、その年の関心の深まりを映し出している。検索が“何が起きたのか”を知る行為だとすれば、Wikipediaは“なぜ起きたのか”を理解するための参照行動であり、この二段階の流れが2025年にはとりわけ鮮明だった。

年間1位となった「Charlie Kirk」のページは、その象徴的な例である。9月の暗殺報道の翌日に約1,500万回のアクセスが集中し、年間では約4,500万回に達した。事件の概要を検索で知った人々が、人物像や背景を確認するためにWikipediaに向かった結果であり、検索から参照への流れを端的に示している。

ランキング全体を見ると、2位の「Deaths in 2025」や、3位の連続殺人犯「Ed Gein(エド・ゲイン)」、4位の「Donald Trump(ドナルド・トランプ)」、5位の「Pope Leo XIV(教皇レオ14世)」といった記事が続き、政治・宗教・文化の転換点にいる人物や、社会の節目となる出来事が多く参照されていたことがわかる。

また、「Elon Musk(イーロン・マスク)」や政治家「Zohran Mamdani(ゾーラン・マムダニ)」など、テクノロジーや社会運動の中心にいる人物へのアクセスも多く、2025年のWikipediaは「事件の補足」だけでなく、世界の変化を理解する基盤として機能していた。

これらを総合すると、人々がニュースやSNSの断片情報だけでは把握しきれない背景や文脈を求め、“自分で理解に向かう参照行動”が強まっていることがうかがえる。生成AIの普及により、情報の真偽や背景を確かめる必要性が高まったことも、Wikipediaへのアクセスを押し上げた一因だろう。

2025年のランキングは、検索と参照がこれまで以上に密接に連動し、人々が世界を“理解し直す”方向へと動いていることを示している。

検索・参照ニーズの高まりと、それが社会にもたらすもの

2025年は、AIの普及や政治的事件、著名人の死去など、強い注目を集めた出来事が複数あり、特定のテーマに対して検索とWikipediaの参照が例年以上に集中した一年だった。ニュースやSNSだけでは全体像をつかみにくいなかで、人々はまず“何が起きたのか”を検索し、その後“なぜ起きたのか”“どんな背景があるのか”を確かめるためにWikipediaを参照するという二段階の行動を取るようになっていた。

AIの進展はその典型で、利用が拡大するほど「本当なのか」「どう使うべきか」を自ら確認する必要性が高まった。国際情勢や政治の揺らぎも、出来事の背後にある文脈への関心を押し上げ、表層的な情報だけでは判断しにくい不透明感を強めた。こうした背景から、“情報の意味まで理解したい”という行動が主要なトピックで特に強く現れたといえる。

この変化はメディアやクリエイターにも影響を与えている。メディアには、事実を伝えるだけでなく、その背景や因果関係を丁寧に解説する“参照可能な記事”が求められるようになった。クリエイターにとっても、検索されるテーマや参照される文脈を理解することは、発信の精度を高める重要な指針となる。社会全体で見れば、検索そのものが新しい情報リテラシーとして定着し、どの情報源にアクセスし、それをどう解釈するかが個人の判断力を大きく左右するようになっている。

2025年に見られた検索と参照の集中は、人々がただ情報に触れるのではなく、理解し、文脈を捉え、自分なりに世界を読み解こうとする動きが強まっていることを示している。こうした傾向は今後さらに加速し、情報との向き合い方そのものを更新していくはずだ。

2025年という“検索と参照の年”が示したもの

2025年のデータは、人々の“知りたがり消費”がこれまで以上に深化していることを示した。AI、政治インフルエンサー、国際スポーツ、地政学。多様な領域が同時に検索を押し上げたことは、世界が複数の転換点を迎えている証拠でもある。

検索は瞬間の関心を、Wikipediaは理解の継続性を映し出す。その両方を重ね合わせることで、私たちは2025年の世界像を立体的に捉えることができる。2026年以降も、この“調べて理解する”行動はさらに加速していくだろう。

文:中井 千尋(Livit

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