日本自然保護協会は、東京都市大学、英国シェフィールド大学、近畿大学と共同で、日本全国158地点の里地里山(※1)にて、生物多様性(※2)に対し人口増減がもたらす影響(恩恵ならびに損失)について調査を実施し、その結果を発表した。
同研究により、人口減少が生物多様性の損失につながる可能性があることが明らかになったという。
同研究では、鳥類、チョウ類、ホタル、カエルの卵塊など450種以上の生物および約3,000種の植物を対象に、5年から17年にわたる「モニタリングサイト1000里地調査(※3)」を実施し、生物種数と個体数の変化を解析。

その結果、人口減少が生物多様性の損失につながる可能性があること、人口増加の影響の大きさは分類群によって異なる可能性が明らかになった。特に鳥類では、人口増加が大きな減少につながることが示された。
同研究結果は、おそらく伝統的な生業(農業、土壌・森林管理、景観の維持管理など)の衰退や消滅による生物の生息環境の縮小に起因していると推測。
さらに、人口減少地域でも人為的な開発が続くこと、管理放棄された地域では草地や農地が森林化する遷移が進み、里地里山環境が減少する場合もあるとしている。

国際連合の予測によると、2050年までに85カ国で継続的な人口減少が進むとされており、今回の日本の研究結果は、東アジア以外の国々にとっても有益な示唆を与える可能性があるとのことだ。
(※1)原生的な自然と都市との中間に位置する地域で集落とそれを取り巻く二次林、農地、ため池、草原などで構成
(※2)生命の豊かさを包括的に表した広い概念
(※3)モニタリングサイト1000は、日本を代表する生態系(高山帯、森林・草原、里地里山、湖沼・湿原、沿岸域、小島嶼など)の動態を全国約1,000カ所、100年以上継続してモニタリングし、生物多様性保全施策への活用することを目的として、2003年から開始した環境省の事業。このうち、里地里山を対象としたもの