フェイスブック、2024年の広告収入は1,000億ドル超えの見込み

メタ傘下、フェイスブックが好調だ。2024年の広告収入は1,000億ドルを超える見込みで、達成すればグーグルと並び、史上2社目の広告収入1,000億ドル超えメディアブランドとなる。

メタの2024年第三四半期の収益は、前年同期比19%増の405.9億ドル。広告収入は前年同期比11%増の398億ドルだった。

この背景には、AIとコマース分野への継続的・積極的な投資がある。メタは、AI駆動の広告ツール「Advantage+」の開発。Advantage+はフェイスブックやインスタグラムに組み込まれ、広告パフォーマンスを効率化・最大化するツールとして利用されている。

WARC Mediaのレポートによると、100万以上(月間)の広告主がメタのAIツールを使用しているという。広告主の多くは中小企業で、2024年の小売業者の投資額は20億ドルを超える見込みだ。

特にアジアのブランドがフェイスブックへの広告支出を増やしている。彼らの多くは他地域をターゲットにしており、その額は過去12カ月、右肩上がりに増加している。

メタのAIツールを利用することで、広告主は様々なメリットを得られる。広告パフォーマンスの最大化、関連性の高いオーディエンスへのリーチ、そして自動化による時間や労力の削減などである。

たとえば、クリエイティブやキャンペーン設定の自動化をする「Advantage+ショッピングキャンペーン(ASC)」を使うと、広告費用対効果は2年で12%向上したという報告がある。ASCにはキャンペーンパフォーマンスを予測・最適化する「Lattice」フレームワークが導入されている。

さらにメタの画像生成ツールを使った企業は、コンバージョン率が7%上がったという。メタの報告によると、同社のAIツール利用による広告作成数は1カ月1,500万本以上だという。今後、AIを使った広告運用の可能性はさらに広がりそうだ。

メタの広告主向けAI「Advantage+」とは

メタの広告自動化ツールAdvantage+とは、どのようなものか。

ざっくりいえば、広告のクリエイティブ制作から配置、予算、ターゲティング、キャンペーン、配信まで、広告に関するあらゆる作業や設定をAIが自動で行ってくれるサービスである。

Advantage+は機能別に複数の種類に分けられている。

たとえば、「Advantage+ショッピングキャンペーン(ターゲティング、配信、広告クリエイティブの自動化)」、「Advantage+配置(フェイスブックやインスタグラムなどメタのサービスの中で、最適な場所に自動で配置)」、「Advantage+クリエイティブ(ターゲットに最適な画像・動画を予測して、パーソナライズされたクリエイティブを自動表示)」、「Advantage+カタログ広告(ユーザーの興味関心をもとに自動配信)」などがある。

また2024年5月には、画像やテキストの自動生成もできるようになった。

先述のとおり、フェイスブックの広告主の多くは中小企業である。中小企業は、広告にかける人材、予算、時間、クリエイティブ制作やマーケティングのノウハウなどが、大企業に比べると圧倒的に少ない。そんな彼らとってリーズナブルかつ、すべてをスピーディーに最適化・自動化してくれるAIツールは、非常に利用価値のあるものだ。

AIツールの利用で時間と労力を軽減

コスメブラントのKitschはAdvantage+ショッピングキャンペーン(ASC)を利用している企業の1つだ。

MarTechによると、同社のYingying Kuang副社長は「ASCの利用によって、これまで手作業で行なっていたプロセスを削減でき、クリエイティブに集中できるようになった」と述べている。また、AIがターゲティングまで自動で行ってくれるため、地理的な事前調査の手間も削減できているという。

クリエイティブに力を入れる同社では、約45,000人いるフェイスブックコミュニティのメンバーの課題を広告に反映している。AIによりほかの作業を自動化できたことで、クリエイティブにより注力することができている。

Kitschはクリエイティブ制作にもAIを利用している。ホリデーシーズンは忙しいうえ、クリエイティブも通常以上のバリエーションが必要になる。簡単かつ迅速に画像生成できるAIを利用し、繁忙期を乗り切るのだという。

AI開発を加速させるメタ

メタはAI開発に力を入れている。同社の仮想アシスタント「メタAI」(現在は米国のみで利用可能)は、同社傘下のアプリ(フェイスブックやインスタグラムなど)にも組み込まれている。ザッカーバーグCEOによると、「メタAI」が表示されるアプリユーザーは、月間5億人に近づいているという。

1日に数時間フェイスブックやインスタグラムを利用している人も少なくない。これが同社のAI普及を加速させる可能性もある。

今後の課題

フェイスブックの広告ビジネスは、米国のOTT(インターネット経由の映像配信)市場の2倍、TikTokの4倍の規模を誇り、米国の小売業者支出の29%を占めている。

だが、見通しはそう楽観的でもない。Marketing Driveでは、2025年、2026年のフェイスブックの広告収入の伸びは鈍化するだろうと予測している。

理由の1つは、ソーシャルメディア市場におけるフェイスブックのシェア縮小だ。米国では成人の4分の3がフェイスブックを使用しているが、若い世代からの人気はいまひとつだ。フェイスブックのシェアが市場全体から縮小することで、広告収入の成長も鈍化すると見ている。

とはいえ、メタの強みはユーザー層の異なるプSNSプラットフォームを複数持っていることだ。さらに、メタは現在グーグルやマイクロソフト「Bing」と並ぶ検索エンジンも開発中とのこと。AI連携とプラットフォームの横断により、ユーザーをいかに獲得していくかが今後の鍵を握るだろう。

文:矢羽野晶子
編集:岡徳之(Livit