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新世代のA(Action)面とB面(Business)に密着するインタビュー企画。第7回に登場するのは、なーすけさん。B面ではYouTubeだけでなく自身の会社でジムやボディメイクコンテストの開催も通じて、様々な人のトレーニングをサポートするなーすけさんのクリエイターとしての価値観に迫ります。
- 【なーすけ】
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筋トレ系YouTuber。SNSではボディメイク大会に挑戦する様子をリアルタイムで配信。初心者向けのパーソナルジム「Shape Fit Gym」を経営し、FC展開も行う。大会運営にも携わり、フィットネスを通じた社会貢献を目指す。主な大会実績は、J-CLASSIC/K-CLASSIC OVERALL優勝、FWJ BEEF SASAKI CLASSIC 3位など。SNS総フォロワー数は180万人超。
- YouTube: https://www.youtube.com/@naasuke
- Instagram: https://www.instagram.com/naasuke_fit/
- X: https://twitter.com/Naasuke_fit
- TikTok: https://www.tiktok.com/@na_suke
筋トレ初心者が求めるコンテンツ作りの秘訣
ーアカウントを運営する上で最も重要だと考えていることは何ですか?
一貫性を持って発信することです。発信する目的や伝えたいメッセージがぶれると、視聴者の信頼を得るのは難しいと思っています。僕の会社のミッションでもある「初めての一歩が誰でも安心して踏み出せる世界」を軸に、筋トレ初心者にとってわかりやすく、挑戦したいと思ってもらえるコンテンツ作りを心がけています。
ー軸からぶれずにコンテンツを作るために、どのようなことを意識していますか?
筋トレ初心者の気持ちになることです。僕も初心者の頃にYouTubeで筋トレの動画をたくさん見ていましたが、多くの動画が見づらいと感じていました。
おしゃれでかっこいい動画が多いものの、何を意識すればいいのか、どんな食事をすればいいのか、外食時の工夫など具体的な情報が不足していたり、字幕がなくて重要な内容を聞き逃してしまったりしていたんです。
僕のコンテンツでは、最初から最後まで字幕をつけたり、チャプターをつけたり、専門用語を使わないようにしています。また、僕が初心者の頃に知りたかった食事についても「1日のフル食」として動画にして提供しています。
ー自分が成熟すると初心者の気持ちを忘れがちですが、どのようにして初心者の気持ちになっているのでしょうか?
確かに、僕も動画を始めた頃よりも体が大きくなっていますし、大会の実績も増え、初心者の感覚が遠くなっている部分もあると思います。そのため、常に初心に帰ることを意識しています。
僕の会社で展開しているジムやボディメイクの大会は、初心者をターゲットにしています。そのため、初心者が求めるものを直接聞くことができ、自分自身が初心者だった頃を思い出しながら、より良いコンテンツ作りを続けることができています。
「失敗してなんぼ」。常に目標を更新し、挑戦を続ける
ーインフルエンサー活動を始めてからの最大の挑戦を教えてください。
現在も続けていますが、毎回違う団体の大会に出ると決めて挑戦していることです。これまでトレーニングを重ねてきましたが、大会のレベルは年々上がっていて、本気で努力をしなければ結果はついてきません。常に目標を更新し続け、自分を高めることが大きな挑戦だと感じています。
ーその挑戦から何を学んでいますか?
「継続した人は強い」ということです。小さいことでも続けるのがいかに難しいかを実感していますし、継続できずに離脱してしまう人たちも見てきました。
一方で、「ゼロじゃなければいい」ということも学びました。週1回の筋トレでも、何年も続ければ追いつけないほどの大きな差になります。コツコツと継続することがもたらす力の大きさは常に感じていますね。
ーこれまでのインフルエンサー活動で失敗したことはありましたか?
失敗は数え切れませんが、一番大きかったのはフィジークというカテゴリーの大会に参加した時のことです。
僕はこの大会に参加するのは初めてだったので、大会当日まで何カ月もかけて減量して挑んだんです。しかし、当日にトラブルがあり、万全の状態で挑むことができず、応援に来てくださった方々にも不甲斐ない思いをさせてしまいました。
ーその失敗をどのように乗り越えたのですか?
大きな失敗ではありましたが、この失敗によって「初心者が出やすい大会を作りたい」という思いが加速したんです。その思いを、自分の会社で行っているボディメイク大会のコンセプトに取り入れることで、失敗を乗り越えました。
他にも多くの失敗をし、ビジネスでの挫折を経験してきました。しかし、失敗を恐れていては行動もできないし、何の経験も得られません。「失敗してなんぼ」のマインドで、失敗しても素直に受け入れ、アドバイスを吸収し、自分や未来に生かすことが大切だと思っています。
リアクションをもらい、返すことがつながりに
ーエンゲージメントを高めるために行っている具体的な取り組みにはどのようなものがありますか?
視聴者とのつながりを深めるために、動画内で質問を投げかけて自然にコメントを促したり、Instagramで質問を募集したりと、リアクションを誘発する工夫をしています。エンゲージメントを高めるためでもありますが、同時に視聴者からフィードバックを得ることが可能になります。こうしたリアクションをいただけないと、視聴者のニーズや反応を把握できないので、とても重要だと考えています。
ー視聴者との繋がりを強化するために特に重要視していることは何ですか?
視聴者の声を大切にし、それに応える姿勢です。いただいたコメントには全て目を通し、YouTubeやInstagramでいただくメッセージにも可能な限り返信や「いいね」をするようにしています。
ーファンのフィードバックをどのように取り入れていますか?
コメントやリアクションをくれる方は、長く応援してくださっている視聴者が多いです。なので、自分が良かれと思って提供したコンテンツが期待と異なる場合は、すぐに「違うよ」と教えてくれるんです。そのフィードバックを「これは刺さらなかったんだな」と受け入れて、すぐに軌道修正することを心がけています。
また、チャンネル登録の解除やフォローの取り消しといった数字の動きもフィードバックだと思うので、それも含めて自分のコンテンツの方向性を振り返るようにしています。
ほかの発信者がインスピレーションの源
ーコンテンツのネタはどのように探していますか。
ゼロから新しいものを生み出すことが苦手なので、他の発信者のコンテンツを参考にし、それを自分なりの形に落とし込んで作ることが多いです。もともとSNSでの発信を見るのが好きなので、見ることで多くのインスピレーションを得ています。
ー視聴者の関心やトレンドをどのように把握していますか?
コメント欄で視聴者の反応を確認したり、SNSのトレンドをチェックしたりしています。筋トレにもトレンドがあって、トレーニング方法やサプリメント、ファッションなど、新しい情報が常に出てきます。特にSNSでは、トレーニングの理論について議論されていることも多いので、そうした情報はチェックするようにしています。
また、登録者が少ない発信者のコンテンツを参考にすることも多いです。というのも、登録者数の多い方の場合、何を投稿しても一定以上の再生数が期待できるのに対し、登録者が少ない方で数字が伸びているコンテンツは、本当に需要が高いテーマだと思うんです。そうした情報を参考に、自分の視聴者にはどうすれば刺さるかを考えています。
視聴者のペルソナは僕自身
ーコラボレーションをしたいブランドや企業はありますか?
フィットネスジムやアパレルの事業を展開している「LYFT(リフト)」さんです。これまでに何度か打合せに参加させていただいたことがあるのですが、社員に対する考え方やクリエイティブの制作課程など、勉強になることがとても多くて。いつか一緒にお仕事ができたら嬉しいです。
ーコラボレーションを選ぶ際の基準は何ですか?
「僕自身の心が動くかどうか」です。視聴者のペルソナを僕自身にして発信を始めたので、僕が魅力を感じないものは視聴者にも響かないと考えています。単価の高い案件でも、心が動かないものは受けないようにしています。
ー過去のコラボレーションで特に成功したと感じるプロジェクトはありますか?
キョクヨー(株式会社 極洋)さんの鯖缶のタイアップが印象に残っています。減量法として脂質をカットするのが一般的ですが、正しい知識がないと必要以上にカットしてしまい、肌荒れや体調不良を引き起こすことがあります。
そのため、適度に脂質を摂る重要性や、良質な脂を摂れる鯖のメリットを僕は以前から伝えてきました。しかし、視聴者の中には「脂質を摂るのが怖い」という意識が根強く、なかなか食べられない方も多かったんです。
そこで、僕自身が減量期間中に鯖缶を積極的に食べる姿を発信したところ、キョクヨーさんからお声掛けいただき、タイアップが実現しました。大会中も鯖缶を食べ、体を仕上げていき、その効果を実証しました。
すると、それを見た視聴者から「鯖缶を食べてます!」という反応が増え、実際に行動の変化が生まれたことがとても嬉しかったです。このプロジェクトは、タイアップによって僕が伝えたいメッセージも広がり、視聴者の健康や生活に具体的な影響を与えられた成功例だと感じています。
フィットネスを通じて、生きがいを見出してほしい
ー新しいことにどんどん挑戦し続けていると思いますが、頑張り続けられる背景にはどのような思いがあるのでしょうか。
「初めての一歩が誰でも安心して踏み出せる世界」をミッションに掲げているからには、視聴者のみなさんにも一歩踏み出して挑戦してほしいという思いがあります。ですが、僕自身が挑戦していなければ、その大切さや楽しさを伝えることはできないと思うんです。視聴者に寄り添い、挑戦する価値を共有するために、まずは僕が挑戦し続ける必要があると考えています。
また、僕自身が目標を追いかけて挑戦していく中で、生きがいを見つけることができたので、同じように、生きがいを見つける人がもっと増えてほしいと思っています。日本中の人たちが生きがいを持てるようになれば素晴らしいと思いますし、フィットネスがそのきっかけになれると信じています。このビジョンが実現するまでは、全力で走り続けるつもりです。
ー自分の成長を続けるためにどのようなことに取り組んでいますか?
常に新しい目標を立てることを心がけています。これが成長を続ける原動力になっているんじゃないかと思います。
大会が終わると、燃え尽きて筋トレをやめてしまう人は少なくありません。僕も最初の目標を達成した後に「なんでYouTubeをしているんだっけ」と迷った経験があります。
振り返ってみると、追い続けるべき目標を失ったことが原因でした。それが分かって以来、大会に出ることをゴールとせず、大会に挑戦し続けることやフィットネスを通じて誰かに勇気や生きがいを与えることを目標にしています。そのためにまた大会に出る、このように目標の先を見据えながら日々取り組んでいます。
ー今後、どのようなことに取り組みたいと考えていますか?
初めての一歩を踏み出しやすい環境を、もっと多くの人に提供していきたいです。その一環として、ボディメイクの大会を倍に増やして、大会の開催地域にジムを設置したいと考えています。初心者が大会に出ることだけでなく、その準備段階から伴走してサポートできる体制を整えたいと思っています。
現在は直営とフランチャイズの4店舗を運営していますが、まずは10店舗に増やし、多くの人に筋トレの素晴らしさを届けたいです。この取り組みを通じて、一歩を踏み出す人や生きがいを見つけられる人を日本中で増やすことを目指しています。
フィットネスを通じて生きがいを見出し、ひたむきに挑戦を続けるなーすけさん。YouTubeでは「楽しいものを見てもらいたい」と、トレーニングに前向きに取り組む様子を発信している。その裏側では、自分自身のミッションを果たすために、視聴者のコメントを一つ一つ見て改善を繰り返したり、ほかの発信者を見て学んだり、会社の事業を作ったりしている。努力を続けるなーすけさんは、ますます自分を磨き、事業を成長させており、まさに「継続した人は強い」を体現しているようだ。
文:安藤 ショウカ
写真:小笠原 大介