新世代のA(Action)面とB面(Business)に密着するインタビュー企画。第6回に登場するのは、中町JPさん。B面では人気YouTubeチャンネル 中町兄妹の兄として、BAR J&Jの共同経営者としてなど活躍の幅を広げる中町JPさんのクリエイターとしての価値観に迫ります。
視聴者の悩みや疑問に寄り添う発信。中町JPのSNS運用戦略
―YouTuberになるまでの簡単な経緯を教えてください。
実は僕、中学生の頃は芸人になりたかったんですよね(笑)。色んな事務所に書類送ったりして。でも相方の事情で続けられなくなって、そこからSNS上で動画などを配信し始めたのは高校生ぐらいからですね。で、大学生の頃にTwitterで繋がった当時のレペゼン地球とかの動画に出るようになって。その頃は少しSNSで知られてるけど収入はない大学生で、大学卒業が近づくにつれて将来どうしようって時に、今の会社の相方が一緒に会社やろうと誘ってくれて。そこからは、広告代理店として会社を経営してたんですけど、妹の綾が少しバズったタイミングで、今なら「中町兄妹」としてYouTube伸びるかもと思って綾にお願いして、YouTuberになれました(笑)。
ー中町JPさんはYouTubeやInstagram、Xなど複数のSNSのアカウントで発信されていますが、運用する上で特に大事にされていることはありますか?
YouTubeを視聴してくれている幅広い世代の人に響くような伝え方をしていて、若い世代の視聴者へは「あの映画おもしろかったよね」というように共感の姿勢を大切にしています。同世代以上の視聴者へは「TikTokでバズっているこれ知ってる?」といった感じでトレンドについて触れ、わかりやすく紹介します。
ー発信する中で、伝えたいメッセージや自分の考えを効果的に伝えられるように意識していることはありますか?
僕たちが運営しているYouTubeは兄妹チャンネルなので、下の世代はもちろんですが、自分達の親くらいの世代の人が我が子を見るような視点で視聴してくださっていることもあるんです。
同世代や親くらいの世代に向けては、トレンドを教えるような伝え方を意識して幅広い層のファンにとって共感や新たな発見があるように心がけています。
ー視聴者やファンとの繋がりを強めていくために大事にしていることを教えてください。
高頻度で視聴者やファンからの質問を募集して、YouTubeチャンネルなどを通してもらった質問に答えるようにしています。ファンの悩みや疑問に寄り添うのは、YouTuberなら結構していることですね。
ー質問を送ってくるのはどういった層の視聴者やファンが多いのでしょうか?
若い視聴者から質問をいただくことが多いです。アクティブユーザーには若い層が多く、質問はしないけれどいつも視聴してくれているのは上の年齢層だと認識しています。
ーZ世代は何を求めて中町兄妹のYouTubeチャンネルを視聴していると思いますか?
何を求めてるんですかね(笑)。僕達はあまり企画もやらず常にフリートークって感じなので、この動画だから見るっていうよりも、僕達の兄妹のたわいもない会話をなんとなくききたいとか、メイクしながら流し見したいとか、すごくカジュアルに視聴者の人の生活に馴染んでくれているのかなと思います。
ー企業がZ世代に向けて広告を打つとなると、インフルエンサーを使ったほうが売れやすいと思いますか?
それはあると思います。しかし、本当にいいものでないとインフルエンサーは紹介したくないと思う側面もありますよね。
親近感を大切に。ほぼNGなしで発信する理由
ーファンや視聴者のエンゲージメントを高めるために行っている具体的な取り組みにはどのようなものがありますか?
YouTubeやInstagramは、視聴者へ積極的にコメントを促すようにしています。エンゲージメントの高さは、クリエイターの影響力に直結するのでかなり意識しています。
ーファンや視聴者から見て、コメントをしやすく親しみやすい存在なのかなと思うのですが、いかがでしょうか?
それはあるかもしれません。少し前のことで考えると、例えば、僕が元AKB48のまゆゆこと渡辺麻友さんの熱狂的なファンだとしたら、まゆゆに気軽にDMなんて送らないじゃないですか。でも、僕のファンの子はDMをたくさん送ってくれるんですよね。それくらい親近感を感じてくれているとポジティブに捉えています。普通にめっちゃ舐めてる感じのアンチのDMもありますが(笑)
ーその親しみやすさを出すために何か意識していることはありますか?
特にないですが、普段からプライベートで起こったことの中から投稿のネタを考えたり、起こったことをそのまま発信したりしているので共感を集めやすいのかなと思います。共感はひとつのキーワードですね。
ーそうなると、どんなことでもYouTubeのネタになり得るということでしょうか?
はい、動画のテーマとしては、飲食から恋バナまでどんなことでも取り扱ってきました。ですが、中町兄妹のYouTubeチャンネルではコラボをしないと決めています。兄妹の空気感を期待してくださるファンや視聴者が多いので、他の人が入ってくると見え方が違ってくるんじゃないかと考えるからです。
兄妹だからこそ、ほぼNGなしでどんなテーマについても話し合えるYouTubeチャンネルになっているのかなと思いますね。
コラボを一緒に盛り上げる。視聴者を巻き込むための秘訣とは
ーコラボレーションしたいブランドや企業はありますか?
SoftBankやauなど、家族をテーマに広告を打っているような企業とコラボしてみたいです。僕たちが兄妹チャンネルを運営しているので親和性が高いと思いますし、家族系のYouTuberはそこまで多くはないからです。家族割や学割などは取り扱ってみたい商材ですね。
ー好きな企業やブランドはありますか?
NIKEが大好きです。靴が好きなので、僕も妹もナイキの靴をたくさん持っています。ミスタードーナツやマクドナルド、スタバはいつもYouTubeで紹介してすごくお世話になっていますし、大好きです。新作が出るたびに動画のネタにできるので助かっています。
ー好きな企業やブランドになる、コラボしてみたいと思う基準は何かありますか?
自分や視聴者にとってどれだけ身近であるかが重要です。例えば、僕が高校生にハイブランドを紹介しても、誰も買えないじゃないですか。スタバの新作は多くの人が興味を持つテーマだと思いますし、リアルなレビューが知りたいと思っているはずです。レビューを見た視聴者やファンが実際に買いに行くことができる値段の高すぎないものであることは大事なポイントです。
ー過去のコラボレーション企画等で特に成功したと感じるプロジェクトはありますか?
スシローとのコラボ、GUとのコラボは盛り上がった記憶があります。スシローのコラボはバトル制で、僕たちのお皿を買ってくれた人が多いと勝利となりスシローのテーマソングが歌えるかもというものでした。キャンペーン期間は毎日多くのDMやメンションがきてファンや視聴者からの大きな反応がありました。
また、GUとのコラボでは、僕たちのポップが全国の店舗に置かれました。その際に、Instagramで「47都道府県からのメンションを待っています」と投稿し、実際にメンションしてくれた投稿のいくつかに対して「ありがとう」と小まめにリアクションをしました。そうすると、全国各地のファンや視聴者がGUで僕たちのポップを見つけるたびにSNSに投稿してくれてキャンペーン期間中はかなり盛り上がりました。これはとくにお願いされたわけではなくて、できるだけ貢献したいという思いから自発的におこなったことでした。
企画の段階から入らせていただければ、自分たちから盛り上げ方を提案したり、盛り上げ方を一緒に考えたりすることもできます。これまでのコラボの経験やYouTube運営の経験から、企業に寄り添って提案できるのは僕たちの強みだと思います。
Q.今後取り組みたいと考えている新しいプロジェクトにはどのようなものがありますか?
何かに特化したチャンネルなど、ニッチなジャンルのチャンネルを運営してみたいという願望があります。YouTuberは、遊びも趣味もすべてひとつのYouTubeチャンネルの中で完結するんですよね。なので、何か趣味を見つけてそれに特化したチャンネル運営にとても興味があります。
5年後も10年後も続けていきたい、等身大のスタイル
―自分自身の成長や革新性を維持するために日常的に行っていることはありますか?
新しいことを始めるというよりはとにかく今のスタイルを続けていくことを意識しています。5年後も10年後もファンがいる状態を保てるように、頑張りすぎずに等身大の姿を届けていきたいです。
僕たちはYouTuberの中で幸福度が最も高いという自負があります。それくらい頑張りすぎずにストレスなくお仕事させてもらっています。
―ご自身で会社も運営しているようですが、どのような企業でしょうか?
株式会社トキメキクリエイトという、クリエイターマネジメントとクライアントのプロモーションを共に進めているIP会社を経営しています。クリエイターと共に新たなコンテンツやビジネスを創りながら、マネジメントにおけるマーケティングの知見をプロモーションに活用していくことで、 Z世代ユーザーの”トキメキ”を最適化し、IPブランド価値の最大化を目指しています。
ー最後に、最近の個人の活動について教えてください。
去年の5月にジュキヤとの共同経営でBAR J&Jの渋谷1号店をオープン、去年の12月には六本木2号店をオープンしました。自分たちの遊び場を日本各地に作っていくような感覚で、今年は札幌にもオープンしましたね。BAR J&Jは、バーに行ったことがない人でも来てもらいやすいバーになっているので、ここからバーの楽しさを知って常連になってくれる人もいます。
また、「J&Jイズニート」というTikTokライブのライバー事務所を立ち上げたたり、「BuzzMade」という編集会社を立ち上げたり、今できる新しい事業を進めています。
兄妹の日常の何気ないテーマもコンテンツに変えて、発信する中町JPさん。着飾らない等身大の発言や姿に、親近感を覚える視聴者も多いだろう。視聴者やファン、企業までも一体となって盛り上げるその発信力の裏側には、人気者になっても変えずに貫く兄妹ならではの空気感と発信スタイルがある。
文:岩井なな
写真:小笠原 大介