帝国データバンクは、2024年に発生した企業の休廃業・解散動向について調査・分析を実施し、その結果を公表した。
■全国の動向/2024年の休廃業・解散は6万9,019件、前年比1万件の大幅増
2024年に全国で休業・廃業、解散を行った企業(個人事業主を含む)(以下、休廃業)は6万9,019件となった。4年ぶりの増加となった前年に続き、2年連続で増加する結果に。
2024年1月以降、休廃業・解散件数は前年を大幅に上回る水準が続き、年間件数としては前年に比べて9,914件・16.8%の大幅増となったほか、現行基準で集計を開始した2016年以降で最多を更新した。
休廃業した企業の雇用人数(正社員)は少なくとも累計8万7,003人に及び、前年(7万8,053人)から約9千人増加し、2016年以降で最多となった。すべての雇用機会が消失したものではないが、経営者を除く約9万人の従業員が転退職を迫られた計算となる。
消失した売上高の合計は2兆9,493億円に上り、前年(2兆8,424億円)から増加した。
2024年に休廃業となった企業のうち、保有資産の総額が債務を上回る状態で休廃業した件数=「資産超過型」の割合は65.1%を占め、2016年以降で最高に。また、休廃業する直前期の決算で当期純利益が「黒字」だった割合は51.1%となり、集計を開始した2016年以降で過去最低を更新。
この結果、「黒字」かつ「資産超過」状態での休廃業が判明した企業の割合は全体の16.2%を占めた。2024年の休廃業・解散動向は総じて、直近の損益が悪化した企業が多い点が特徴だという。
■休廃業時の平均年齢、過去最高の71.3歳
休廃業・解散時の経営者年齢は、2024年平均で71.3歳となった。4年連続で70歳代となったほか、前年から0.4歳上昇し、調査開始以降で最高齢を更新。最も休廃業が多い年齢も75歳と、過去最高齢だった2022年に並び、廃業を決断する経営者の年齢は上昇傾向がさらに加速した。
年代別では、「70代」が39.5%と最も高いものの、3年ぶりに40%を下回った。一方で、「80代以上」が23.7%と、前年から2ptの大幅アップ。また、「50代」が11.1%、「40代」が4.1%と、それぞれ前年から割合が上昇するなど、現役世代でも市場からの退出を決断した企業が増加。
■全都道府県で「増加」、東京都が唯一1万件台
都道府県別の発生状況では、すべての都道府県で前年から増加。件数ベースで最も多いのは「東京都」の1万5,126件で、全国で唯一1万件を超えた。次いで「神奈川県」が4,416件、「大阪府」が4,400件、「愛知県」が3,886件と続いた。
全国で1,000件を超えた都道府県は合わせて19を数え、前年から5県増加。企業数と比例して休廃業数も大都市圏の発生が目立つ一方で、「宮城県」「栃木県」「岐阜県」など、調査開始以降で初めて1,000件台を記録した県もみられた。最も発生が少なかったのは「佐賀県」で314件という結果に。
前年から最も増加した都道府県は「秋田県」で、前年比58.4%の増加となった。「熊本県」の50.9%増と合わせて、前年比1.5倍を超えたのは2県のみという結果に。そのほか、「鳥取県」が41.8%増、「和歌山県」が38.5%増、「徳島県」が37.7%増など、特に地方部で急増が目立った。
発生率を表す「休廃業・解散率」では、最も高いのが「東京都」の7.71%で、全国で唯一7%を超えた。最も発生率が低いのは「佐賀県」(2.64%)だった。
■奥能登の「休廃業・解散」、2024年は41件、前年比1.4倍の急増
最大震度7を観測した令和6年能登半島地震の発生から1年が経過した。こうしたなか、石川・富山13市町村を含む「能登地方」企業の休廃業・解散件数は、2024年に164件と判明。このうち、珠洲市・輪島市・鳳珠郡を含む「奥能登地方」での同件数は41件にのぼった。
業種別にみると、「建設業」が32件、「サービス業」が19件、「小売業」が13件など、幅広い産業で前年から増加。
また、能登地方における企業倒産は2024年に19件発生し、前年(10件)を大幅に上回った。2023年以前に事業を停止した企業の法的整理も含まれるため、すべてが震災の影響によるものではないが、事業再建のめどが立たず、法的整理の選択を余儀なくされたケースもみられたという。
■「街のバイク屋」の休廃業・解散が急増、前年の1.6倍・65件
業種別では、その他(詳細不明を含む)を除く7業種すべてで前年から増加。最も件数が多い「建設業」は8,182件と、前年から7.3%増加し、2016年以来9年ぶりの高水準に。
前年からの増加率が最も高いのは「サービス業」で7,608件と、8.5%増加しており、件数は現行基準で集計を開始した2016年以降で最多とのことだ。また、「運輸・通信業」は706件、前年比8.3%増と、トラック輸送などを中心に運輸業での増加が目立ったとしている。
年間の休廃業・解散のうち、業種を細かくみると、前年比で最も増加したのはバイクディーラーなど「二輪自動車小売」(41件→65件、前年比58.5%増)だった。
大型量販店やパーツ販売店などの進出に加え、コロナ禍でのバイクブームの一巡、中古市場相場の下落による新車販売台数の低下といった厳しい環境を背景に、街のバイク屋や特約店などで廃業したケースが増加したとみられる。
増加率上位の業種のうち、「舗装工事業」(49件→72件、同46.9%増)では過去5年で最多、老人ホームや通所介護施設運営などの「老人福祉事業」(同183件→254件、38.8%増)は年間で過去最多の件数となった。
一方、前年から最も減少したのは「パチンコホール」(90件→63件、同30.0%減)だった。
2024年の休廃業・解散率をみると、最も高いのが「税理士事務所」で5.61%。前年に続き、従前から税理士の高齢化が課題となっていた中で、競争激化による顧問企業の減少、顧問料の低下など経営環境の悪化、インボイス制度の導入など新たな業務のスタートなども影響したとみられる。
米屋などの「米穀類小売業」は、「社会保険労務士事務所」と並ぶ5.56%となった。いわゆる「街の米屋」を含む米穀類小売では、家庭におけるコメ消費量の減少や代表の高齢化など経営環境の要因に加え、コメ仕入れ価格の高騰なども重なり、店頭価格への価格転嫁が難しかった小規模な米穀店で増加。
街の豆腐店などを中心とした「豆腐・油揚製造業」(5.25%、28件)でも、「特売品」の目玉として小売業者からの値下げ圧力は高く、薄利多売が続いた中で、大豆などの原材料やエネルギーコストの増加分を価格に転嫁しづらい環境を背景に、小規模店を中心に増加した。