中央開発は、地中熱を活用したカーボンニュートラルな取り組みについて発表した。
地中の温度は地下10~15メートル以上の深さになると、年間を通して温度が一定になり、地下水流れが遅い場合、ほぼ年間平均気温から+1℃程度になる。そのため、地中の温度は、暑い夏では涼しく、寒い冬では暖かい。
この温度差を空調などに利用するのが一般の地中熱利用で、さらに冷暖房の排熱を、季節を超えて帯水層に蓄熱し、冷暖房に必要なエネルギーをより減らすエコな取り組みが、帯水層蓄熱事業だという。
■帯水層蓄熱システムについて
帯水層蓄熱システム(以下、ATES)は、地下水を豊富に含んだ帯水層を巨大な蓄熱槽として活用し、夏季の冷房時温排熱を貯蔵し冬季の暖房に活用する技術(冬季の暖房時冷排熱を貯蔵し、夏季の冷房に活用する技術)。
オランダでは、建物空調における熱の再生可能エネルギー技術として主流となっているが、日本では地層が複雑なことや、法規制・ノウハウが少ないなどの問題から、開発や導入が遅れている。
同社は、大阪市や大阪公立大学、森川鑿泉工業所等に協力して、このシステムの開発や普及促進を実施。
また、大林組・三菱重工サーマルシステムズと共同し、愛三工業の安城新工場において、空調延べ床面積約1万平方メートルをまかなう200RT(700kW)のヒートポンプに見合った最大100立方メートル/hの揚水と安定した全量還水を実現する揚水・還水切換型熱源井の設置技術を提供。
■ATESにおける井戸掘削技術の開発
ATESでは、1対の井戸を設置して一方の井戸から汲んだ地下水の熱だけを利用し、もう一方の井戸に100%戻すこと(全量還水)を基本としている。
このため、ATES実装のための井戸掘削では、「リバースサーキュレーション工法」という手法を用いるという。この工法では、帯水層の透水性や井戸の還水性能に悪影響を与えるベントナイトを使用せずに、堀削を実施。
井戸掘削の際には、掘削泥の粘度やpHを管理し、水圧のバランス調整を行い、掘削孔の安定を保つなど、施工時の技量が必要となる技術だとしている。
また、エアリフトにより、そのまま混ざることなく堀屑が上がってくるので、帯水層をはじめとした地層の深さや厚さ、地質の確認が時差なく容易にできるとのことだ。
ATESに用いる井戸は、汲み上げる地下水の水質分析および濁度や排砂量の確認を行い、清澄な状態が得られるまで、十分な時間をかけて洗浄を行うという。
■コンサルティング実績
愛三工業安城新工場(仮称)
愛三工業は、循環性の高い事業活動への転換を積極的に進めており、その一環として新工場の建設を進めているという。新工場の建設にあたり、同社は帯水層蓄熱システムの導入検討と井戸設置業務など、脱炭素化に向けたソリューション提案を実施。
大阪市域における地下水の有効利用検討
大阪市では、地球温暖化対策やヒートアイランド現象の緩和策として、2015年から産学官連携による大容量帯水層蓄熱利用システムの技術開発・実証事業を実証し、普及拡大を目指しているという。
同社は第一回検討会議から携わっており、2016年度うめきた実証事業や、2018年度大阪市域における地盤環境に配慮した地下水の有効利用に関する検討結果など多数のプロジェクトに協力。