日々の暮らしのなかにあるサステナビリティを紹介する特集「サステナブック」。第27回に登場するのは、社会起業家の田口愛さん。現在ガーナでチョコレート工場を経営している田口さんが、同じくアフリカ発のアパレルブランドを紹介。
- 【プロフィール】
- 田口愛さん
- 社会起業家/MAAHA株式会社 代表取締役 チョコレート好きが高じてカカオの産地であるガーナを訪問するも、現地の人がチョコレートを食べたことがない現実に衝撃を受け、ガーナでチョコレート工場を立ち上げる。「境界線を溶かすチョコレート」をコンセプトに、チョコレートブランド「MAAHA CHOCOLATE(マーハチョコレート)」を展開中。
現地の特産品の魅力を伝えるブランド
——今回ご紹介いただくサステナブルな商品についてお聞かせください。
カラフルなアフリカ布を使ったアイテムを展開するRAHA KENYA(ラハケニア)を紹介します。代表の河野理恵さんは、同じ時期にアフリカで起業した仲間で、互いに刺激を受けながら活動してきました。
RAHA KENYAのアイテムはいくつか愛用していますが、特に愛用しているのはスカートです。色鮮やかなデザインのおかげで、着ていると自然と陽気な気分になります。アフリカ布はデザインが豊富で一点ものも多く、好きなアイテムとの出会いはまさに「一期一会」といった感じです。
——RAHA KENYAのどんなところがサステナビリティにつながっているのでしょうか?
RAHA KENYAは、表立ってサステナビリティを掲げているブランドではありません。しかし、ケニアのアパレル産業を守る活動を通じて、結果的にサステナブルな取り組みを行っているブランドだと感じています。
アフリカには支援の一環として多くの古着が送られていますが、その影響で現地のアパレル産業が衰退したり、不要な服が廃棄物になるといった問題が起きています。そんな中、RAHA KENYAはケニアの特産品であるアフリカ布に注目し、アフリカ発のアパレルブランドとしてその魅力を世界に広める活動をしています。
RAHA KENYAのアイテムは裁縫技術や検品作業がしっかりしており、安心して購入できます。こうした品質を維持するために、現地のスタッフへ適正な対価が支払われていることも大きなポイントです。特産品や現地雇用を大切にする姿勢は、私自身がガーナで行うチョコレート事業に通じるものがあり、とても共感しています。
私なりのサステナビリティ
——田口さんはチョコレート好きが高じてカカオの産地であるガーナを訪れたわけですが、当初抱いていたイメージとのギャップなど、ガーナで印象に残っているエピソードはありますか?
「チョコレートが好きでガーナに来た」と言えば、現地の人たちとすぐに仲良くなれると思っていたのですが、実際はそうではありませんでした。カカオ農家さんは、カカオがチョコレートになることは知っていても、チョコレート自体が販売されていない地域もあるので、食べたことがない人もいるんです。それが現地でチョコレート工場を立ち上げるきっかけとなりました。
そして、想像していたよりもガーナの人たちは明るかったですね。アフリカの情報は、貧困問題など大変な部分が強調されがちですが、現地の方々は今あるものに感謝しながら幸せに暮らしています。
現地を訪れるまでは「アフリカ=貧しい」と思っていたのですが、「貧しい」とは金銭的・物質的な側面の一部に過ぎず、精神的な豊かさがあることに気づかされました。カカオ産業のだけでなく、彼らの素敵な部分も伝えていきたいと思っています。
——日頃から取り入れているサステナブルなアクションはありますか?
直接的なアクションとは言えないかもしれませんが、購入する物の背景を調べるようにしています。どのような人が関わり、どの国を経由して私たちの手元に届いているのかを知ることで、より深くその物の価値を感じられるからです。
例えば、カシューナッツは「インド産」と記されていることが多いですが、実際にはガーナで採れたものが加工のために他国を経由している場合があります。このように背景を知ることで、ガーナ現地でできることの可能性についても考えられるようになります。
物の背景に目を向けることで、消費者としての判断材料が増え、身の回りの物をより深く理解するとともに、世界中の人々とのつながりを感じることができます。
——サステナビリティについて、何から始めればよいのかわからないという方にアドバイスはありますか?
こうしたメディアの記事を読むことも、サステナビリティへの第一歩になります。その次のアクションとして、学んだことを周りに伝えてもらえると嬉しいです。エシカルな商品を選ぶことが理想ではありますが、すべてをエシカルなものにするのは現実的には難しいかもしれません。まずは世の中にある課題や問題を知り、仲間を増やすことが大切だと思います。
——今後、私たちはサステナビリティとどのように向き合うべきだと思いますか?
物を購入したり支援したりするだけで終わりではなく、自分が起こしたアクションに対して、その後どうなったのかを見届けることが大切です。そのためには、継続して情報をキャッチすることを心がける必要があります。私も引き続き情報発信に努めていきたいと考えています。
また、目の前に困っている人がいれば、手を差し伸べることも必要ではないでしょうか。一つひとつ目の前のことを大切にすることから、サステナビリティが始まると思います。