再開発が進む渋谷に新たに誕生した大規模複合施設『Shibuya Sakura Stage』。その一角に、ヤマハのブランド発信拠点『Yamaha Sound Crossing Shibuya』(ヤマハサウンドクロッシング渋谷:以下、YSC渋谷)が2024年11月15日にオープンした。
YSC渋谷では、ヤマハの最新楽器やテクノロジーを紹介するほか、アーティストやクリエイターとの交流や研究開発を行う一般非公開のサテライト施設も併設。渋谷に集う若者を中心に、全国に向けてヤマハの認知拡大とブランド価値の強化を目指す。
ヤマハゆかりの地、渋谷桜丘にオープン
渋谷桜丘は、ヤマハにとってゆかりの深い地である。かつてこの地には、ヤマハが運営するレコーディングスタジオ『渋谷エピキュラス』が存在していた。その後、『ヤマハエレクトーンシティ渋谷』と名称を変え、エレクトロミュージックの聖地として多くの人に親しまれてきた。
しかし、再開発によりその姿を消していたこの聖地が、再び渋谷に帰ってきた。多くアーティストが「渋谷にヤマハが戻ってきた!」と注目しているという。
“Sound Crossing”をコンセプトに3つの柱で展開
オープンしたYSC渋谷は、“Sound Crossing”をコンセプトに、「ブランド発信」「研究開発」「プロダクトマーケティングとアーティストリレーション」の3つの柱で展開している。
オープンに先立ち、マーケティングを担当するヤマハの吉川氏は次のように挨拶した。
「YSC渋谷は、単なる店舗やショールームではありません。偶発的なイノベーションが生まれ、音や音楽を通した新たなつながりを創出するブランド発信拠点です。3階のLAB(ラボ)はブランド体験施設、8階のLOUNGE(ラウンジ)はアーティストリレーションや研究開発を行う場となっています。LAB・LOUNGEの共通コンセプトは“Sound Crossing”。このコンセプトのもと、音楽の新たな価値を生み出していきます」
渋谷の象徴ともいえるスクランブル交差点のように、多様な要素が交わり、新たな音楽の価値が創出することを願い、“Sound Crossing”と名付けられた。以下、3つの柱について詳細を紹介する。
■ブランド発信
吉川氏は、「ヤマハはブランドプロミスとして“Make Waves”を掲げ、お客様の心が震える瞬間に寄り添う想いを込めています。YSC渋谷は、感動を提供する場として、ブランド発信拠点の開発を進めてきました」と語る。
ヤマハはすでにブランド発信拠点として、『ヤマハ銀座店』や、今年6月にオープンした『ヤマハミュージック 横浜みなとみらい』を展開している。銀座店は高い専門性を有し、上質なブランド体験ができる旗艦店として位置付け横浜みなとみらい店は音楽初心者や新規顧客をターゲットにしている。
一方、YSC渋谷では最新技術を搭載した製品や、バンド・ステージパフォーマンス向けの機器、ライブ配信機材などを紹介。アーティストやクリエイターと連携し、トレンドに敏感な若年層を取り込むことを目指している。
■研究開発
ヤマハの研究開発を担当する森氏は、「昨今AI技術が発展するなか、人と技術が融合して楽器や音楽文化をつくり上げる活動を推進したい」と語る。また、「アーティストリレーションを強化し、試作品や新技術を活用することで、競争を活性化していきたいです」と意欲を示した。
ヤマハは、本社がある静岡県浜松市に世界に誇る研究開発拠点を持つほか、横浜みなとみらい店では企業連携や実証実験を行うことを想定。加えて、渋谷では新しい音楽や文化の発信地としての役割が期待されている。
■プロダクトマーケティングとアーティストリレーション
プロダクトマーケティングとアーティストリレーションは、株式会社ヤマハミュージックジャパンが推進。
同社代表取締役社長の松岡氏は次のように語る。
「渋谷の発信力を活用し、若年層を対象に全国へ需要を喚起していきます。具体的には、LABやLOUNGEを活用したアーティストイベントの開催やコンテンツ発信を行う予定です。また、当社製品を使用いただくことで認知度を高め、アーティストからのフィードバックを製品開発に生かしていきます」
施設にはスペシャリストを配置し、アーティストやクリエイターの創造性をサポート。LABのステージやLOUNGEのスタジオから、新たな音楽の可能性を発信する場として機能する。
LABとLOUNGEからなる最新施設
■3階 LAB(ラボ)
LABは、新しい音楽に関心を持つ若者やアマチュアミュージシャンをターゲットに、最新の楽器やテクノロジーを体験できる施設だ。
施設の中心に位置する「エクスペリエンス」エリアでは、最新の楽器や音響機器、配信機材などを展示。また、「ステージ」エリアでは、製品のデモンストレーションやセミナー、ライブ配信などが予定されている。さらに、オリジナルコーヒーやクラフトビールを楽しめる「カフェ」も併設されており、訪れた人々に音楽と共にくつろぎの時間を提供。LABから新しい音楽や文化、ムーブメントが次々と発信されることが期待されている。
■8階 LOUNGE(ラウンジ)※一般非公開
LOUNGEは、レコードや楽器などのヤマハのレガシーが展示される一般非公開のスペースで、訪れるゲストを象徴的な音叉マークが迎える。
この施設は、アーティストやクリエイターとの協働を通じ、新しい音楽や楽器を創造していく研究開発のサテライト施設として活用される。また、IT企業が集まるデジタルイノベーションの地である渋谷の立地を生かし、異業種交流の拠点としても機能する予定だ。
YSC渋谷は、渋谷の再開発におけるビジョンの一つ「エンタテイメントシティSHIBUYA」を盛り上げるコンテンツとして期待されるスポット。長い歴史を有し、伝統と信頼が築いてきたヤマハだが、同施設を通して高い技術力と先進性を訴求していきたいとしている。