着実に発展を続けるサブスクリプションサービス市場
あなたは、どんなサブスクリプションサービスを利用しているだろうか。ストリーミングサービスや定期購読のサービスなど、複数の契約をしている方も多いかもしれない。
日本におけるサブスクリプションサービス市場は、2010年代半ばから急速に成長を遂げ、特にデジタル系サービスを中心に拡大してきた。現在では、Amazonの「定期おトク便」のような定期宅配系を除いても、ファッションや飲食店のサービス(テイクアウト)をはじめ、ライフスタイル、レジャー・エンタメ、情報コンテンツ、教育、メディカル・ヘルスなど、生活全般にわたる幅広いジャンルで展開されている。
さらに、2024年以降は、消費者がサブスクリプションサービスに支払う総額が1兆円規模※になると推定されており、市場の成長は今後も続くと見込まれている。
どこと契約をしているか分からない
コロナ禍の際に利用者が一気に増えたのが、NetflixやDisney+、DAZNといったエンタテインメントやスポーツ系の映像配信サブスクリプションサービスである。月額1,000円前後の料金設定が一般的だが、1日は24時間と限られているため、契約していても利用率は低いことが多い。年間で考えると出費は1万円を超え、複数のサービスを契約していると、実際はかなりの金額になる。
では、これらの映像系配信系サービスをいくつ契約していて、それぞれの更新時期を把握しているだろうか。
残念ながら「しっかり把握している」と言い切れる人は少ないだろう。「契約しているが、ほとんど利用していない。無駄にお金を払っていることは分かっているが、契約内容や更新時期、解約のタイミングも正直よくわからない」という人がほとんどではないだろうか。
世界を席巻するプラットフォームがまもなく利用開始
今回紹介するBango(バンゴ)は、1999年にイギリス・ケンブリッジで創業した企業。Amazon、Google、Microsoftといった世界最大のコンテンツプロバイダーを主要な顧客とし、サブスクリプションサービスを提供する事業者と、それを利用する消費者をつなぐ「スーパー・バンドリング(Super Bundling)」という技術に基づいたプラットフォームを開発・提供している。この技術を通じて、Bangoは世界中で事業を展開している注目のグローバル企業だ。
スーパー・バンドリングとは、サブスクリプション市場の拡大に伴い、多様化するサブスクリプションサービスの発展と利便性向上を支援するサービスである。日本ではまもなく、大手携帯キャリアの顧客サービスの一環として、このプラットフォームの導入・運用がスタートする。
Bangoの共同創業者でチーフ・マーケティングオフィサーのアニル・マルホトラ氏は次のように語る。
「私たちはこのサービスをすでにアメリカやヨーロッパで展開しており、好評いただいております。これから東アジアでの展開も予定しておりますが、コンテンツプロバイダーはもちろん、サブスクリプションサービスを利用している一般消費者の皆さまにとっても大きなメリットがあるサービスです」
Bango東京オフィスの責任者であり、アジア太平洋地域のプレジデントである鈴木敦久氏は、2017年に、Bangoのプラットフォームを利用して、一般消費者がAmazonジャパンでの購入代金を携帯電話料金と合算して支払うことができる決済サービス(DCB=Direct Carrier Billing)の導入を成功させた。
鈴木氏「日本でこれまでスタートできなかったのは、通信事業者との連携に時間がかかったからです。私たちのプラットフォームと事業者の決済サービスをシームレスに繋ぐのは簡単ではありません。詳細はお話できませんが、コンテンツプロバイダーやサブスクリプションを提供する事業者(通信社など)をつなぐ『デジタルベンディングマシン(DVM)技術』は、創業以来積み重ねてきた独自の技術とノウハウから生まれたもの。他社には容易には真似できないものです」
サブスク契約を一覧、一括管理できる新サービス
日本は、世界でもサブスクリプションサービスが非常に普及している市場のひとつである。Bangoのプラットフォームを使った「スーパー・バンドリング」は、一般消費者にとっても、コンテンツプロバイダーやサブスクリプションサービスを提供する事業者にとっても大きなメリットがあると、マルホトラ氏と鈴木氏は語る。
マルホトラ氏「日本、韓国、台湾の5,000人のサブスクリプションサービス加入者を対象に調査したところ、日本の消費者の約4分の1が4つ以上のサブスクリプションサービスを利用していることが分かりました。
また、約40%の方々がバンドルオファーを通じてサービスを利用しており、これは、アメリカでの約20%の加入者がバンドルサービスを利用している割合と比べても高い数字です。しかし、日本の加入者の約52%がサービスの多様さに戸惑い、約31%が料金の支払いや契約更新の管理に苦労しているという結果も出ています。つまり、日本市場はアメリカ市場やヨーロッパ市場以上に、このサービスに対するニーズが高いと確信しています」
同社の独自調査によると、日本の消費者はサブスクリプションサービスに平均で月3,188円、年間で3万8,256円を支出しているという。スーパー・バンドリングが導入されることで、大手携帯キャリアの顧客は、これらの支出を一括で管理し、ムダを減らすことが可能になる。また、映像配信サービスに限らず、ショッピングモールで商品を選ぶように、多彩なサブスクリプションサービスをそのサイトや公式アプリから申し込み、通信事業者の決済サービスを通じてその料金を支払うことができるように。
鈴木氏「一般消費者、つまり通信事業者の顧客にとって最大のメリットは『自分が現在、どんなサブスクリプションサービスを契約しているのか、その契約内容や更新時期はいつなのか』をマイページなどで一覧し、一括管理できる点です。また、サービスからの退会や契約解除も簡単に行えるようになること。さらに海外では、複数のサブスクリプションサービスをまとめて契約することで利用料金の『割引』を受けられることもあります。スーパー・バンドリングの導入によって、こうした割引が日本でも始まる可能性があります」
選べるサービスも一気に充実へ
消費者にとっては、通信事業者のサイトや専用アプリから、これまで知らなかった「自分の趣味趣向にフィットしたニッチなサブスクリプションサービス」に出会うことができるのも大きなメリットとなる。
鈴木氏「サブスクリプションサービスでは今、多彩な利用者のニーズに応えるため、次々とニッチでマニアックなサービスが登場しています。現在、日本の大手携帯キャリアを通じて提供されているサブスクリプションサービスは、まだ数種類に過ぎません。しかし、私たちのスーパー・バンドリングが導入されることで、契約・利用できるサービスが一気に数十から百を超えることになるでしょう。そして、ベンディングマシーンで缶入り飲料を購入するように、さまざまなサブスクリプションサービスを簡単に契約し、利用できるようになります。この選択肢の拡大・充実は、消費者にとって大きなメリットになるはずです」
また、コンテンツプロバイダーやサブスクリプションサービスを提供する事業者にとっても、スーパー・バンドリングの導入は非常に大きなメリットをもたらす。潜在顧客への迅速なアクセスが可能になり、通信事業者を通じて直接的なマーケティングも行える。さらに、魅力的な複数のサービスをまとめて契約することで、利用料金を割引きする「まとめて割引」などのインセンティブを提供すれば、顧客を囲い込むこともできる。
このスーパー・バンドリングは、通信事業者だけでなく、福利厚生サービスを企業に提供する事業者などにも導入例がある。しかし、大手携帯キャリアに導入されることで、多くの消費者が、より手軽に多様なサブスクリプションサービスを利用できるようになるだろう。これは消費者にとっても事業者にとっても喜ばしいことである。
間もなく予定されている大手携帯キャリアからのサービス開始アナウンスに、今後ますます注目が集まるだろう。
※参考:株式会社矢野経済研究所「2023年は前年比5.2%増の約9,430億円見込~国内消費者向け(BtoC)サブスクリプションサービス7市場の市場規模~」