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AI動画生成の最前線を走るRunwayが、最新モデル「Gen-3 Alpha Turbo」を正式にリリースし、業界に衝撃を与えている。このモデルは、前バージョンと比較して7倍の速度向上と、半分のコスト削減を実現しており、動画制作のあり方を大きく変える可能性がある。
Gen-3 Alpha Turboの最大の特徴は、その圧倒的な生成速度だ。Runwayの共同創業者兼CEOであるクリストバル・バレンズエラ氏は、「文章を入力するよりも動画を生成する方が速くなった」と述べており、ほぼリアルタイムでの動画制作が可能になったことを示唆している。
革新的と評価されている「Gen-3 Alpha Turbo」の特徴を詳しく探ってみたい。
「Gen-3 Alpha Turbo」登場、AI動画生成の新時代へ
テクノロジーの進化により急速に発展しているAI動画生成。手軽に使用できるツールも登場し、ユーザーはシンプルなプロンプトや操作でプロ品質の映像を自動生成することが可能となり、映像制作の効率を大幅に向上させている。
なかでもAI動画生成ツールの最新、最速、高品質として注目されている「Gen-3 Alpha Turbo」を、最近リリースしたRunway AIは、本社をニューヨークに置いており、2018年にチリ人のクリストバル・バレンズエラ氏、アレハンドロ・マタマラ氏、ギリシャ人のアナスタシス・ゲルマニディスが共同設立した企業だ。
2023年にはGoogleなどから1億4,100万ドルを調達し、成長を続けている同社のツールは、iOSアプリもリリースされ、映画制作、ポストプロダクション、広告、編集、視覚効果などの専門家から、一般消費者にまで、幅広く利用されている。
前モデルと比較し、圧倒的なパフォーマンス向上
Runwayの前モデルである「Gen-3 Alpha」は、テキストプロンプト、あるいは画像プロンプトで、最長10秒間の動画を生成する能力を持つが、「Gen-3 Alpha Turbo」は、それと比較して速度が格段に上がっていることが特徴だ。
新モデルでは、7倍の速度向上を実現しており、生成に要する時間は前モデルの数分に対し、約数十秒まで、短縮されている。
また、使いやすさも向上しており、プロンプトを通じて、カメラショット(「ワイドショット」「クローズアップ」など)や、被写体の動きを細かく指示できるため、より高度でクリエイティブな映像が簡単に作成できるようになっている。
ただし、Runwayは、Turboモデルのビデオは基本的に標準のGen-3 Alphaと同等の品質であると主張しているものの、Turboなしのモデルのほうが、ビデオ全体の画像品質が高いとの報道も見られる。
ほぼリアルタイムでのAI動画生成が可能に
「Gen-3 Alpha Turbo」はターボという名を持つことからも想像できるように、動画生成の速さに強みがある。
RunwayAIの共同創業者クリストバル・バレンズエラ氏は、新モデルについて「文章入力よりも早く動画生成ができる」と述べたが、その言葉通り、「Turbo」は、AIビデオ生成モデルのタイムラグ問題が軽減され、特に迅速な動画の処理が求められる業界で、より効率的なワークフローが実現できる。
リーズナブルな価格設定で個人クリエイターでも利用しやすい
この新モデルは、速度の大幅な向上に加えて、コストが大幅に抑えられたことも注目を集めている。
1秒の動画生成に5クレジット(1クレジットあたり0.01ドル)という低価格が提供されており、コスト面でも競争力が強化されているといえる。
また、Runway Gen-3は、サブスクリプションプランを無料お試しプランのベーシックからビジネスユース向けのエンタープライズまで5種類提供しているが、この新モデルは全サブスクリプションプラン(ベーシックを含む)で利用可能だ。
これにより、予算に制約がある個人や小規模ビジネスでも、質の高いビデオ生成が実現可能であり、幅広いユーザーが手軽にアクセスできるコストパフォーマンスの良さがさらに強調されている。
トレーニングデータの倫理問題と知的財産権に課題
操作性の良さやコストパフォーマンスの良さ、動画の質に定評のあるRunwayの生成AIだが、一方で、AIモデルのトレーニングデータに関する倫理的問題も浮上している。
アメリカのテック系ニュースサイト「404 Media」は、自社で入手した社内スプレッドシートに基づいて、Runwayが人気YouTubeクリエイターの動画数千本、さらには海賊版映画を収集し、著作権で保護されたYouTubeのコンテンツを無断で使用したと非難した。
AIのトレーニングに著作権で保護された素材を使用することが、著作権侵害にあたるという主張を法的にどのように考えるかという点については、未だ論争が続いており、マイクロソフト社やOpenAIも、ノンフィクション作家やメディアから訴訟を起こされている。
OpenAIも参戦、盛り上がる動画生成AI
AI動画生成の分野で、現在最も注目されているのはOpenAIとそのSoraモデルだが、それ以外にもStability AI、Pika、Luma Labs のDream Machineなど、AI動画マーケットで競い合っている企業は数多く存在する。TikTokの親会社であるバイトダンスもJimeng というAI動画サービスを発表したが、今のところは公開は中国国内に限定されている。
Dream Machineは、よくRunwayのモデルと比較される人気の動画生成AIだが、Dream Machineの方がシンプルでより初心者にも扱いやすいという評価をされることが多い。Runwayは、編集機能が充実しており、自由度が高い反面、チュートリアルなどで使用に慣れる必要があるようだ。
次々と魅力的なモデルが発表されるAI動画サービスだが、ほとんどのモデルは短編コンテンツの作成に優れているものの、長い作品の制作をすることは難しく、今後さらなる進化が待ち望まれる。
文:大津陽子
編集:岡徳之(Livit)