子どもの成長は目覚ましく、喜ばしい。だが、成長とともに必要になる洋服や制服などが家庭の経済的な負担につながることも珍しくない。実際、日本でも就学や卒業にかかる費用について、制服・体操着代が負担になっていると回答している新入学の小1、中1、高1の保護者は、約8割にのぼる(※1)

それは世界各国でも同様だ。例えば西アフリカに位置する国、トーゴでは世帯の約59%が1日あたり3.65ドル(日本円で約535円)未満で生活しており、女性がほとんどの家事を行っている(※2)。そのため、新しい制服を買う費用がなかったり、家事を手伝う必要があったりすることで、同国で前期中等教育を修了している女の子はわずか39%にとどまっている(※3)。

そんな課題を解決する、子どもの成長に合わせてサイズを変えることができる制服が開発された。一見シンプルでごく普通のワンピースに見えるが、上半身の部分は、腕周りや胸囲、ウエストを絞ったり緩めたりすることで自分にぴったりのサイズに調整できる。また、スカートも背が伸びると丈を長くすることができる。制服は6段階に合わせて調整可能なため、最大3年間は買い替えの必要がない。これにより、制服が買えないからという理由で退学してしまうリスクをなくすことができるのだ。

また、制服を作る際に出る生地の端切れは、繰り返し使用できる布ナプキンの製造に活用されている。生産に関わるごみを減らすだけではなく、生理の貧困が原因で、学校に通えなくなる女の子をなくすための仕組みだ。

この制服や布ナプキンを開発しているのが、当時大学生だったアメリカ人のペイトン・マクグリフ氏によって設立されたStyle Her Empowered(頭文字をとってSHE)と呼ばれる非営利の団体だ。世界中で多くの女の子たちが教育機会を得られず貧困から抜け出せないという課題への解決策を探していた際に、大学で知り合った教授の出身国であるトーゴを訪れたことをきっかけに、SHEのプロジェクトを始めることになったという。

子どもたちだけでなく、制服の作り手である女性たちの生活水準を向上させていることも、SHEの特徴だ。女性たちは制服の縫製職人として雇用されており、トーゴの最低賃金よりも75%以上高い給料を受け取っている。さらに、勤務時間内に授業を受けられる機会があり、子どもを無料で託児施設に預けることができるほか、社会保障制度にも加入できるといった手厚い福利厚生も提供されている。

実際、雇用時には75%の女性たちが教育を受けたことがなかったにもかかわらず、大人向けの教育プログラムを通して基礎的なフランス語を学び、雇用者の識字率は100%になった。また彼女たちの子どもも全員、学校に通うことができているという。

マクグリフ氏はCNNに対して、以下のようにコメントしている。

SHEを立ち上げるときのビジョンは、常に地元主導にすることでした。地元の女性たちは、私よりも、はるかによく課題や解決策を理解しているからです。SHEを始めるきっかけを作ったのは私かもしれません。しかし、私たちのチームがその襷をつないでいく姿を見ていると、この上ない感動を覚えます。

この例のように、地元の人と協力したり、話し合ったりしながら一緒に社会課題に向き合うことで、より本質的な解決策が見つかるかもしれない。

※1 セーブ・ザ・チルドレン「子ども給付金~新入学サポート2022~」
※2 世界銀行 Povert and Inequality Platform 
※3 ユニセフ 世界子供白書2023 

【参照サイト】SHE|Style Her Empowered
【参照サイト】In Togo, these school uniforms are at the center of a movement offering girls and women a chance to build better lives
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(元記事はこちら)IDEAS FOR GOOD:女の子が育つにつれて「成長する」学校制服。アフリカの教育格差の解決へ