循環型社会を形成するためのキーワードである3R(リデュース・リユース・リサイクル)。なかでも、リユースは私たちの日常生活に最も身近で取り組みやすい手段の一つだ。例えば、不要になった衣類や家具をリサイクルショップに持ち込んだり、オンラインで中古品を購入したりする行為は、リユースの一環である。

リユース経済新聞の調査「リユース業界の市場規模推計2023(2022年版)」によると、2022年のリユース市場規模は前年比7.4%増の2.9兆円で、2030年には4兆円規模に拡大することが見込まれている。特にファッション産業では、大量生産・大量消費・大量廃棄による多大な環境負荷が課題とされており、これを抑制するためにもリユース市場の活性化が期待されている。

こうしたなか、リユース事業の実績がある『FUKUCHAN』と連携し、順調に業績を伸ばしているのが、キッズリユース専門の『ふくちゃんリユスタ』である。

今回、AMPでは『ふくちゃんリユスタ』のプロジェクトマネージャーを務める、株式会社REGATEの藤本康暉氏にインタビューを実施。事業立ち上げの背景や、独自の成長戦略、そして、同事業が挑む社会課題の先にある未来像を尋ねた。

経営が難しいとされるキッズリユースに挑戦

——どういった経緯でキッズリユース事業に参入したのでしょうか?

私は以前、『FUKUCHAN』で出張買取のバイヤーとして勤務しており、お客さまからキッズ用品の買い取りについて要望を頂いておりました。しかし、ときに事故につながる可能性のあるキッズ用品(チャイルドシートやベビーカーなど)は、安全性を見極める技術や知識が必要です。そのリスクの大きさからベビー用品の買い取りには力を入れておりませんでしたが、社会的なニーズが強いことを常に感じていました。

そんななか私自身が子どもの教育に関心があったこともあり、この領域で何かできることはないかという思いが強くなりました。入社当初から起業したい想いがあり、社内にはCVC(チャレンジベンチャーコンテスト)制度があったため、企画案を提出したんです。弊社の役員(現社長)が子育て中の女性であったことから、提案したリユース事業とキッズをかけ合わせた事業に共感していただき、スタートさせることになりました。

実際に1号店をオープンするまでは安全に取り扱える洋服やおもちゃなどの最低限店舗が成り立つアイテムを中心に多く取り揃え、徐々にチャイルドシートやベビーカーなどの安全性が求められる製品へと挑戦しました。PDCAを繰り返し、赤字商品を多く出した時期もありましたが、必要な初期投資として検証を重ねてきました。2022年9月に1店舗目をオープンし、現在は4店舗(大阪豊中・東京八王子・名古屋御器所・そよら古川橋駅前)を展開しています。

株式会社REGATE 藤本 康暉氏

——コロナ禍には多くの同業他社が経営難に陥ったと聞いております。キッズリユース事業の難しさはどこにありますか?

キッズリユース商品の選ばれるポイントは、衛生的で清潔感があることです。子どもはおもちゃなどを口に入れてしまうことがあるため、親御さんにとっては衛生面が非常に重要です。コロナ禍においては、この衛生面への不安から直接的な影響を受けたと思います。

また、おもちゃなどのアイテムに関しては、すべてのパーツが揃っていることが重要です。しかし、開業するために多くの商品を揃える必要があるため、パーツが揃っていないものでも買い取りをするのですが、きれいにメンテナンスしてもパーツが欠けている商品は売れません。そのため、私たちは買い取りやメンテナンスには細心の注意を払っています。

こうした厳しい状況でも「こんなお店が欲しかった!」という声を頂くことも多く、社会的に求められているサービスだからこそ簡単に潰すわけにはいきません。しかし、査定の目を養い、PDCAを回せる環境がないと、この分野で成功を収めるのは厳しいと感じています。私たちがこうしてチャレンジを続けられるのは、『FUKUCHAN』のしっかりとした基盤があるからです。特に、法律に関する知識や査定方法については『FUKUCHAN』での経験が大きな力になっています。

——リユース事業特有の消費者動向はありますか?

リユース事業は、季節変動の影響を受けやすい傾向にあります。秋から新年度を迎える春にかけては家庭内で整理整頓が進み、買い取り依頼や購入が増加します。一方で、夏場には一時的に需要が落ち込むことが多いです。

それでも、ピーク時には常に20〜30人のお客さまで賑わっている店舗もあり、全体としての売上は右肩上がりです。1日で50万円以上を売り上げたこともあります。一見すると大きな金額には思えないかもしれませんが、キッズリユース商品は1点あたりの単価が数百円と低価格なものが多いため、こうした結果は大きな成長が見えた瞬間でした。

教育になるイベント開催も。『ふくちゃんリユスタ』が支持される理由

——フリマアプリが台頭するなか、本事業が支持されている理由はどこにあるとお考えですか?

先ほどの話にもありましたように、リユース商品を選ぶうえでは商品の清潔感や状態の良さが重要です。フリマアプリなどで購入する場合、写真だけでは判断しづらい部分ではないでしょうか。例えば、大人が使う抱っこ紐なども、実際に着用してみないと使用感がわかりません。

その点、実店舗では実際に商品を手に取って確かめられるという強みがあります。また、子ども服・ベビー用品・おもちゃ・絵本・マタニティ育児用品など、豊富な品揃えも支持いただいている理由の一つです。

さらに当社では、一般的なリユースショップが5〜10円で買い取りしている商品を、平均して50〜120円で買い取りしている点も支持を得ている大きな要因だと思います。

——店舗づくりにはどのようなこだわりがありますか?

路面店や商業施設の店舗など形態によって設備が異なるのですが、子どもが遊べるキッズスペースは好評を頂いております。お子さま連れで来店されるお客さまの多くが利用している状況です。

オムツ交換台や授乳スペースも設置しており、ベビーカーを押しながらでも安全かつスムーズに店内を移動できるよう、導線には十分な余裕を持たせています。大人だけでなく、子どもも快適に過ごせる店舗作りを目指し、親子でリラックスできる空間を提供することがテーマです。

——子どもたちが売り子となって出店するイベント『こどもフリマフェスタ』を開催しているようですが、開催の目的を教えてください。

第一の目的は、子どもの頃から楽しくリユースに触れる機会を提供することです。自分が使っていた物に値段を付け、それをお客さまが実際に買ってくれる——。これは子どもたちにとって嬉しい成功体験になると思います。

さらに「傷が付いた物が100円で売れたけれど、もっとていねいに扱っていれば500円で売れたかもしれない」というように、子どもたちは物をていねいに扱うことの大切さを学べます。そして、「いらっしゃいませ!」と声がけする接客を通じて、お客さまとコミュニケーションを取る経験も積むことができます。こうした教育的な観点を持ちながら運営してきました。

『こどもフリマフェスタ』は、子どもの成長機会を創出するリユース事業である点を評価いただき、他企業とのコラボレーションなど、様々なつながりが生まれています。

——イベントの開催のほか、認知拡大・ファン獲得のための施策はありますか?

主にインスタグラムの運用を強化しています。具体的には、1アカウントにつきフィードとリールをあわせて週に4~7回程度、ストーリーズは少なくとも1日1回は投稿するようにしています。昨年11月に名古屋御器所店がオープンしたのですが、約半年後にフォロワーが5,000人を超えたあたりから、売り上げが3倍に伸びました。フォロワーやインプレッション増加が集客・売上に比例しているのは肌で感じております。

ストーリーズの投稿については現場で働くパート社員が担当しており、一定のマニュアルを作成したうえで運用していますが、店舗ごとに現場の声を反映させているんです。

例えば、2人乗りのベビーカーを探しているお客さまがいれば、入荷した際にお知らせを投稿するなど、リアルタイムでお客さまのニーズに応える工夫をしています。インスタグラムには、こうした相互コミュニケーションが図れる素晴らしさがあり、お客さまとの距離を縮めるだけでなく、パート社員たちにとってもやりがいを感じられる施策です。

持続可能な社会を目指して、環境保全と子育て支援に注力

——リユース事業は持続可能な社会の形成に寄与するものですが、改めて『ふくちゃんリユスタ』のSDGsへの取り組みについてお聞かせください。

“サーキュラーエコノミー”という言葉がありますが、その最先端を担っているのがリユース分野ではないかと思います。リユースは、今ある物を再度使ってもらうことで大量生産をする必要がなくなり、廃棄物の削減につながるものです。これにより、CO2排出などのエネルギー消費の抑制にも貢献できるため、一番身近にある持続可能なアクションといえるでしょう。

また、買い取りした商品は、植物由来の再生可能な成分で作られた洗剤で洗濯しています。リユースを軸にした事業を展開している私たちだからこそ、こうした小さな取り組みから地球環境にも配慮した運営を意識しなければなりません。

——そのほか、ジェンダー平等の実現と働きがいの観点から、多くのパート社員が子育て中の女性であると伺いました。職場環境にはどのような配慮がなされているのですか?

店舗で働くパート社員には子育て中の方が多く、やむを得ない欠勤や早退が発生することがあります。しかし、当社ではそうした事態を柔軟に受け入れられる職場環境です。例えば、急な欠勤が出た際に代わりのスタッフを探す負担をかけることはなく、あらかじめスタッフを多めに配置し、職場全体でカバーできる体制を整えています。人件費はかさみますが、スタッフ一人ひとりが安心して働ける環境が大切です。

こうした職場環境には、互いの事情を理解し合える風土が大切です。

『ふくちゃんリユスタ』では、月に1度パート社員も含めた全員で食事会を実施しています。お子さんの参加も歓迎しており、子ども同士が遊んだり、スタッフ同士で子どもの面倒を見合ったりと、家族ぐるみの付き合いが自然に生まれています。このように、互いの子どもの顔を知っているからこそ、助け合える環境が築かれました。

そして、キッズリユース事業だからこそ、お客さまのみならず子育て中のスタッフの声が必要です。CVC制度からスタートしている私たちの事業は、常にスタッフの声を取り入れ、新たな挑戦ができる環境でなければなりません。スタッフ一人ひとりの意見や提案が、最終的に事業の“色”になっていくと考えるからです。

——最後に、今後の展望についてお聞かせください。

キッズリユース文化を根付かせるため、今後の出店計画としては、年に2店舗以上を目指しています。リユース事業は採算を合わせるのが難しい事業ですが、このサービスは社会から永続的に求められるものであり、なくしてはなりません。今後は、ビジネスとしてさらに加速させることが最大のミッションです。

そして、社会課題にも全力で取り組んでいきたいと思っています。無駄な消費や廃棄物を減らすことはもちろん、リユース商品は新しい商品に比べて手ごろな価格で提供できるため、結果的に子育て費用の削減にもつながるのではないでしょうか。目指すのは「子育てといえばリユスタだよね!」と、お客さまのファーストチョイスになるサービスになること。将来的には家庭のクローゼットの8割以上がリユース商品で埋まるような社会をつくりたいという大きな夢を持っています。

キッズリユース商品は、家族の思い出が詰まっているもの——。だからこそ、私たちは“想いをつなぐ”を理念に掲げ、大切な価値をつないでまいります。

写真:小笠原 大介