世界有数の金融機関のひとつであるBank of America(バンク・オブ・アメリカ)の調査によると、Z世代(2024年時点で18歳〜27歳)の46%は両親や家族からの経済的援助に頼っているという。また、給与の一部を定期的に口座に貯蓄しているのは15%にとどまっている。
国際通貨基金によると、世界のインフレ率は2023年の6.8%から2024年は5.9%、2025年には4.5%へと安定的に鈍化する見込みだというが、異常気象により食料の価格が上昇する食料インフレをはじめ、世界的に物価高騰のニュースが絶えない。
本記事では、バンク・オブ・アメリカの最新調査をもとに、米国の若年層が置かれている苦しい金銭事情を紐解いていく。
高すぎる「家賃」が貯蓄の壁に
バンク・オブ・アメリカが2024年4月〜5月に、米国のZ世代(18〜27歳)1091人に実施した調査によると、52%が「望む生活を送るのに十分な収入がなく、最大の懸念事項は生活費の高さである」と回答したという。これは2022年(50%)、2023年(53%)の回答と、ほぼ同等だった。
生活費のうち、特に住宅にかかる費用が若年層の負担になっている。回答者のうち、4人に1人(28%)は「住宅費や家賃が経済的な成功の最大の障壁である」と回答した。
回答者の半数以上(54%)は自身で住宅費を支払っておらず、住宅費を支払っている46%のうち、64%が「月給の30%以上を住宅費にあてている」という。23%は「月給の51%以上を住宅費にあてている」というから驚きだ。
Bloombergの報道によれば、米国の大都市圏のほとんどで、2019年から2023年まで家賃が賃金を上回るスピードで上昇した。ジローとストリートイージー、米労働統計局(BLS)のデータでは、同期間に全米で家賃が30.4%上昇したのに対し、賃金は20.2%増にとどまった。
特に、フロリダ州やニューヨーク市は賃金の上昇に対して家賃の上昇が著しいという。ジローのレポートによれば、ミレニアル・Z世代の賃貸需要と国内の住宅不足が重なり、家賃の急上昇につながっているようだ。
Z世代の約半数が家族から経済的支援を受けている
こうした困難な状況に対し、Z世代はどう対処しているのか。アンケートでは、半数以上の54%が両親などから経済的支援を受けていると回答した。54%の内訳は、両親や家族から(46%)、政府から(9%)、友人から(3%)だった。学生ではないZ世代に絞っても、37%が経済的支援を受けている。
経済的援助を受けている約3分の1(32%)は、月額1,000ドル(約14万円)を受け取っており、44%は500ドル(約7万円)未満となる。
援助を受けた若年層は、そのお金を「食料品やトイレタリー製品」「家賃や光熱費」「電話費用」「健康保険やその他の支払い」にあてている。
定期的に貯蓄しているのは15%のみ
Z世代の半数近くが経済的援助を受けている状況を踏まえれば当然かもしれないが、回答者の約3分の1(30%)は「貯蓄したいが、それだけの収入がない」と回答している。
大多数(82%)は経済的な目標を持っており、住宅や車の購入、一人暮らし、結婚や子どもを持つなどのライフプランについて、今後5年以内に「予定はないが達成したい」と答えている。
貯蓄の重要性は理解しつつも満足な貯蓄ができているZ世代は少なく、給与の一部を定期的に口座に貯蓄しているのは5人に1人未満(15%)にとどまった。Z世代の半数以上(57%)が、3カ月分の生活費をまかなえるほどの貯蓄を持っていないことも浮き彫りになった。
また、「過去1年間に株式投資をした」と答えたのは15%で、これは2022年からほとんど変わっていない。一方で投資には関心があり、5人に2人(40%)は「今後5年以内に投資を始める予定はないが、そうしたい」と答えた。
多くの若年層は外食やイベントを断念
Z世代は生活費を支払った収入の残りを外食(36%が該当)、ショッピング(30%が該当)、娯楽(24%が該当)などの体験型の支出にあてており、これは他の世代よりも高い割合だという。エネルギーがあり、自由な時間が取りやすいZ世代にとって、友人・恋人との付き合いや趣味の活動は重要度が高いのだろう。
一方で、経済的な課題への対処として、67%がライフスタイルを変化させて節約に努めているという結果も。43%は外食を減らし、27%は友人とのイベントを断念、24%はより手頃な食料品店で買い物をするようになり、21%は予算を決めるようになった。
3分の1以上(38%)は社交的な活動を断念することに抵抗がなく、「参加する余裕がないから」だと周囲に明言しているそうだ。
男女の比較では、男性よりも女性のほうが経済的な障壁が高いことも示されている。例えば、「良い収入を得ていると感じるか」という質問に対し、「はい」と答えた女性は22%で、男性は30%だった。
また、過去1年間で女性の3分の2以上(68%)がライフスタイルの変化や自己変革(外見の変化、経済的優先順位の見直し、キャリア/専攻の変更など)を行ったのに対し、男性は51%だった。イベントへの参加を見送る割合も女性のほうが高かった。
米国で資産管理サービスを提供するSun Group Wealth Partnersの共同創業者・Winnie Sun氏は「毎月の収入のうち、50%を生活必需品に、30%を裁量支出に、20%を貯蓄に回すのが一般的な割合だが、20代なら少なくとも10年間は25%を貯蓄に回すことを勧める」と話している。しかし、現代の米国のZ世代にとってはハードルが高い印象だ。
文:小林香織
編集協力:岡徳之(Livit)