IHIは、太陽光発電の余剰直流電力をカーボンフリー蒸気として熱利用するシステム(以下、再エネ熱利用システム)を開発。福島県相馬市の下水処理場で本年4月から実証運転を開始し、安定的な運用が可能であることを実証したと発売した。

太陽光発電は日照条件による発電量の変動により、余剰電力が発生しやすい。この余剰電力を無駄なく利用することが、カーボンニュートラル社会の実現に重要であるという。同社は、低コストで電力を熱に変換する技術(P2H: Power to Heat)を活用し、再エネ熱利用システムを構築。

【再エネ熱利用システムの特徴】

1.低コストでカーボンフリーなエネルギーを生成
太陽光発電による直流電力を蓄熱式ボイラでカーボンフリー蒸気に変換し、蓄熱する。

2.余剰電力も効率的に利用
パワーコンディショナー(※1)の定格を超えた直流電力も無駄にせず、熱エネルギーとして活用する。

【実証運転の概要】

相馬市下水処理場では、年間最大240kWの交流電力を使用している。これに対し、300kWの自家消費型太陽光発電所と200kWのパワーコンディショナーを設置し、最大200kWの交流電力を供給可能としている。加えて、IHI検査計測製の蓄熱式電気ボイラ「蒸気源(※2)」7台を設置し、最大189kWの直流電力を吸収できるシステムとした。

実証運転のシステム構成(協力:相馬市)

実証運転では、発電した電力をすべて有効活用し、安定的な運用を確認。具体的には、6月の電力使用実績は、交流電力で23,160kWh、直流電力で11,860kWh。また、定格200kWを超える最大250kWの電力利用が確認されている。

再エネ熱利用システムの電力利用状況の例(2024/6/29 協力:相馬市)

このような自家消費型太陽光発電設備は、市場の拡大が見込まれており、IHIの再エネ熱利用システムは余剰電力問題の解決と再生可能エネルギー普及に貢献することが期待されている。

同社は、カーボンニュートラル社会の実現に向け、地域密着型の再生可能エネルギー活用を推進し、電気と熱を使用する需要家への貢献を加速させていくとしている。