2021年に提供を開始したメンバーシップ制セカンドホームサービス「SANU 2nd Home(サヌ セカンドホーム、以下、SANU)」。月額55,000円〜の日本初(SANU調べ)のサブスク別荘から始まったSANUだが、時を経てサービス内容が多様化している。

2023年4月には、法人向け会員制宿泊サービス「SANU 2nd Home for Business(サヌ セカンドホーム フォー ビジネス)」を開始、導入企業は150社以上にのぼる。また、2024年2月には共同オーナーとして別荘を所有できる「SANU 2nd Home Co-Owners」を発表。年間12泊・300万円台から別荘を共同所有できるサービスで、こちらも好調だ。

セカンドホーム市場で存在感を示すSANUが考える「別荘の可能性」とはーー。

サブスクに共同所有、進化する別荘サービス

一昔前は富裕層にしか縁がないと思われていた「別荘」だが、今やその存在が身近に変化してきている。このセカンドホーム市場を牽引する一社がSANUで、サービス提供を開始した当初に各所から注目を集めた。すぐに会員枠が埋まり、その後は1年以上の会員登録待ちが発生、現時点では会員待ちはほぼ解消されているが、会員枠が埋まっている状態が続く。

生活に必要な家電や日用品など一式がそろい、清掃など管理の手間が省けるのもSANUの魅力だ(SANU提供)

現在は個人向けのサブスクのほか、30泊9万円〜の法人向け会員制宿泊サービス「SANU 2nd Home for Business」や年間12泊を30年間利用可能・300万円台から共同所有できる「SANU 2nd Home Co-Owners」も展開する。

Co-Ownersはローン利用が可能となり、初期費用を最小限に抑えて、購入金額全額をローン対象として月々3万円〜の支払いが可能だ。この価格帯ならば、別荘所有が選択肢に入る人がグッと増えそうだ。実際、第一弾として発売した物件(200口)が2.5時間で完売するなどの反響があるという。

オーナーになると自身が所有する物件のみならず、SANU 2nd Homeの全拠点を利用できる(SANU提供)

「Co-Ownersは、国産車の新車を購入するのと同等の価格帯を目指しました。例えば、第一子が生まれて自宅を購入した後、車を購入するかのように『次はセカンドホームが欲しいね』とファミリー層の選択肢になればいいなと」(SANU マーケティング・PR部長 古賀百合絵氏)

ここ数年で、サブスクや共同所有など斬新なビジネスモデルを展開する別荘サービスは増えている。以下にいくつかの事例を紹介したい。

<サブスク別荘>

海のそばの別荘をサブスクで提供する「WITH SEA by UMITO LIFE」(HORIJUKUのプレスリリースより)

WITH SEA by UMITO LIFE

2024年3月リリース。海と共に過ごすための別荘を提供するサブスクリプションサービスで、月額55,000円(休日・休日前の宿泊費と清掃費は別途)となる。2024年8月現在は9つの物件が利用でき、今後も拠点が増える予定。会員登録待ちとなっている様子を見ると、一定の支持を得ているようだ。

OURoom

2022年10月リリース。都心と地方の暮らしをどちらも自由に選択できる暮らしを提案するサブスクリプションサービス。会員費は1,000円で、宿泊するごとに宿泊費と清掃費の支払いが発生する。2024年8月現在は茨城県内の3拠点が稼働中、2024年中に千葉、山梨に複数拠点がオープン予定だという。

<共同所有>

高級物件のシェア購入サービスを提供する「NOT A HOTEL」(NOT A HOTELのプレスリリースより)

NOT A HOTEL

2021年9月リリース、年間10泊分から使いたい分だけ購入が可能なシェア購入サービスを提供。2024年8月現在は6つの物件を販売しており(完売やキャンセル待ちを含む)、どれもラグジュアリーで高価格帯となる。会員権ではなく「所有権」での購入となるため、減価償却、売却、相続が可能になる。オーナーになると全国のNOT A HOTELを相互利用できる。

UMITO

2022年10月リリース、既出のNOT A HOTELと提携して、海のそばにあるラグジュアリーな物件を共同所有できる。NOT A HOTELと類似する仕組みで、年間10泊980万円から保有できる「シェア購入」と1棟を丸ごと購入する「1棟購入」があり、所有権としての購入や相互利用も可能。使用しなかった日はホテルとして貸し出して、収益を回収できる。

サブスクと所有を切り替え、より軽やかな2拠点生活へ

2022年5月時点でのSANUの会員の年齢層(SANU提供)

SANUの会員層は30〜40代が約8割を占めており、子どもを持つ家族や共働きの夫婦での利用が多いという。サブスクによって金額面でハードルが下がったことに加え、清掃など維持の手間が省けることで、これまで別荘の購入を検討していなかった潜在層のニーズを掘り起こすことができたとSANUでは考えている。

さらに、「サブスク」と「所有」の2パターンから選べるようになったことから、ライフスタイルの変化に合わせて利用形態を切り替える会員もいるという。

「例えば、夫婦2人やお子さんが小さいうちはサブスクを使って平日メインで利用、お子さんが小学生以上になったら所有に切り替えて休日メインで利用する、という方は多いですね。サブスクは4連泊までのところ、所有は12連泊まで可能で複数の拠点を同時予約できます。親子3世代でゆっくりと滞在するなど、多様な滞在スタイルがかないます」(古賀氏)

大自然に囲まれたバーベキューや焚き火もSANUの醍醐味のひとつ(SANU提供)

古賀氏自身も出産を期に、サブスクから所有に切り替えたひとり。より柔軟に都市と自然を行き来する暮らしを楽しんでいるそうだ。所有の会員は、30〜40代でバリバリ働きながら子育てをしている家族がほどんどだという。

所有の場合、30年間の利用が可能だが、4年間保有するとSANUの会員が属するセカンダリーマーケットで所有権を販売することも可能になる。

富裕層だけじゃない、多くの人が別荘を持てる時代に

SANUをはじめ、さまざまなセカンドホームサービスが誕生したことで、私たちは「都市」と「地方」の2拠点生活を選択しやすくなった。月額55,000円は誰もが気軽に利用できる価格帯ではないが、「利用を検討したい」「一度使ってみたい」と考える人は多いのではないか。

北軽井沢の拠点では、天気に恵まれれば鮮やかな緑や星空を眺められる(筆者撮影)

SANUの会員の多くは、観光だけでなく地方での“暮らし”も楽しむ人が多いという。朝はいつもより早めに起床して周囲を散歩、丁寧にコーヒーを淹れて朝食を済ませたら、デスクに向かって仕事をする。夕方は少し早めに仕事を切り上げ、地元のスーパーへ。地場の食材を購入して、キッチンやバーベキュー台で調理をする。会話をしながら、あるいは映画を観ながら、ゆったりと食事の時間を過ごす。夜は星空を眺めながら散歩をするのもいいかもしれない。

大自然に癒やされながらのリモートワークもかなう(筆者撮影)

筆者は3度にわたるSANUでの宿泊体験がある。自然のエネルギーに満たされながら、ゆるやかに過ごすSANUでの時間はちょうどいい非日常感で、身体や心が喜んでいるような感覚がある。拠点が変わっても「ただいま」と言いたくなる世界観もSANUならではかもしれない。

SANUの会員は、自然のなかで何もしない時間を大切にしたり、自宅の延長のように一人の時間も家族との時間も楽しんだり、子どもと一緒にアクティビティではしゃいだり、思い思いにセカンドホームライフを満喫しているという。

「セカンドホームでの暮らし」がいよいよ身近になってきている。セカンドホーム市場がここからどう変化していくのか、期待が高まる。

後編では、2024年8月にオープンしたばかりのSANUの新施設「北軽井沢2nd」を訪れ、新たな建築モデル「SANU CABIN MOSS(モス)」に体験宿泊した様子をお伝えしたい。

取材・文:小林香織
編集協力:岡徳之(Livit